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2024年5月10日金曜日

1931年、人と会話するマングース ~ ジェフ / ゲフ (ダルビー・スプーク)


■1931年、人気を博した喋るマングース ~ ジェフ/ゲフ(ダルビー・スプーク)

グレートブリテン島とアイルランド島の間に浮かぶ小さな島、マン島。

1930年代、この島を騒がせた奇妙な事件がありました。

農家を営むアーヴィング家に、一匹のマングースが現れたのです。

もちろん、それはただのマングースではありません。

そのマングースは、人間の言葉を話したのです。

― ジェフとの遭遇 ―


それは1931年9月のことでした。

13歳の長女ヴォーレイ・アーヴィング(Voirrey Irving)さんが自宅で、自らをジェフ / ゲフ(Gef)と名乗るネズミほどの大きさのマングースに遭遇したのです。

毛並みは黄色味を帯び、尾はフサフサ。

そして手は、人間のそれのようだったといいます。

ジェフは自身を、
「1852年6月7日、インドのニューデリーで生まれた、とてつもなく賢い地縛霊」
と名乗りました。

さらに、自分は「マングースの姿をしたゴースト」であるとも語ったのです。

当初は不慣れだった英語も、次第に流暢になっていきました。

自ら「とてつもなく賢い」と豪語するだけのことはあったのでしょう。

アーヴィング家がダルビー村(Dalby)近郊に住んでいたことから、ジェフは「ダルビー・スプーク(Dalby Spook)」とも呼ばれるようになります。

「ダルビー村の幽霊」という意味です。

― 家族と暮らす怪異 ―


ジェフは特にヴォーレイさんを気に入っていたようですが、やがて父ジム、母マーガレットとも会話を交わすようになります。

但し、母親にはあまり懐かなかったといいます。

夫妻によれば、ジェフは単なる怪異ではなく、家族を助ける存在でもありました。

森へ行ってウサギを捕まえてきたり、野良犬が近づけば家族へ知らせたり。

ストーブの火を消し忘れて寝てしまえば代わりに火を消し、朝寝坊をすれば起こしてくれることもあったといいます。

さらに、家屋へ侵入したネズミを追い払うこともあったそうです。

一方でジェフは大の甘党でもありました。

天井から吊るした皿にチョコレートやビスケット、バナナなどを置いておくと、家族のいない間に食べてしまうと語られています。

― 英国中へ広がった噂 ―


ジェフの噂は瞬く間にマン島中へ広がり、地元新聞でも取り上げられるほどの騒ぎとなりました。

しかし、取材に訪れた記者ラドクリフ氏の前に、ジェフが姿を現すことはありませんでした。

彼が確認できたのは、家のどこかから聞こえる声だけだったのです。

ラドクリフ記者は、決定的な証拠こそないものの、ヴォーレイさんによる腹話術に過ぎないと断定し、ジェフの存在を一笑に付しました。

これに激怒した父ジム氏は、著名な心霊研究家ハリー・プライスへ手紙を送り、ぜひ調査してほしいと依頼します。

この一件によって、ジェフの噂はイギリス本土へまで飛び火することになりました。

多忙だったプライス氏は、当初は助手を派遣したものの、後に本人も現地を訪れます。

さらにBBCのリチャード・ランバート氏をはじめ、多くのジャーナリストや研究家がアーヴィング家を訪問しました。

しかし、結局のところ、誰一人としてジェフの姿を明確に確認することはできませんでした。

良くても「声を聞いた」という程度だったのです。

中には「姿を見た」と証言する者もいましたが、確たる物的証拠は最後まで得られませんでした。

― 描かれたジェフ、そして本人の不満 ―

(ジョージ・スコット氏の描いたジェフ)
(image credit: Wikicommons/Public Domain)

事件の調査に乗り出したハリー・プライスは、正体不明のジェフを視覚的に記録しようと試みます。

そこで白羽の矢が立ったのが、アーティストのジョージ・スコット(George Scott)氏でした。

1936年、スコット氏はプライスからの依頼を受け、アーヴィング一家の目撃証言を元にジェフの姿を描き起こしました。

出来上がったのは、黄色味を帯びた体に黒い斑点があり、顔の横から長い髭が伸び、そして何よりリスのような巨大でフサフサの尾を持つ、奇妙な小動物のイラストでした。

このスケッチは、プライスとランバートによる共著『カシェンズ・ギャップの怪(The Haunting of Cashen's Gap)』に掲載され、正体不明だった「喋るマングース」に初めて具体的なイメージを与えることになります。

しかし、このイラストに対して、誰よりも手厳しい批評を投げつけた者がいました。他ならぬ、ジェフ本人です。

アーヴィング家の人々がスコット氏の描いたスケッチをジェフに見せたところ、彼は不機嫌そうにこう吐き捨てたといいます。

「あれは俺じゃない! 似ても似つかない、まるでラマじゃないか!」

自らを「とてつもなく賢い地縛霊」と自負するジェフにとって、その姿がマングースというよりはアルパカやラマのように描かれたことが、よほど自尊心を傷つけたのでしょう。

このエピソードは、ジェフが単なる「目撃される対象」ではなく、人間のように虚栄心やこだわりを持った「意思ある同居人」として振る舞っていたことを示す、非常にユニークな一幕として語り継がれています。

― 喋るマングースの正体 ―


合理的に考えれば、マングースが人語を話すという話は極めて受け入れ難いものです。

しかもジェフは、肝心な場面では決して姿を現しませんでした。

そのため世間からは、アーヴィング家ぐるみの作り話ではないかという批判も強まっていきます。

特にヴォーレイさんによる腹話術説は根強く、現在でも最も有力な説明とされています。

一方で、実際に家の中から奇妙な声を聞いたと証言する人々も存在し、この事件は単純な悪戯として片付けられない不気味さを残しました。

― 消えたジェフ ―


その後、父ジム氏は亡くなり、1945年に母子は家を売却。

さらに1970年には家屋そのものが取り壊され、ジェフの痕跡を示すものはほぼ失われてしまいました。

晩年のヴォーレイさんはインタビューで、ジェフについて何度も質問を受けています。

しかし彼女は最後まで、
「ジェフは実在した。腹話術ではない」
という主張を変えることはありませんでした。

そして2005年、ヴォーレイさんは死去。

喋るマングース、ジェフの真相を知る人物は、ついにこの世からいなくなったのです。

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2 件のコメント:

  1. 今の時代なら音声解析で腹話術か分かりそうですね
    それにしても地縛霊のわりに親切だなぁ

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  2. クダギツネみたいなかんじか?マングースってブリテンでは当時は珍しくもなかったんかなあ。何でマングース…

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