■1931年、人気を博した喋るマングース ~ ジェフ (ダルビー・スプーク)
グレートブリテン島とアイルランド島の間に浮かぶ小さな島、マン島。
1930年代のこと、このマン島を賑わせた小さな事件がありました。
マン島で農家を営むアーヴィング家に一匹のマングースが現れたのです。
もちろんそれはただのマングースではありません、そのマングースは人間の言葉を話したのです。
それは1931年9月のことでした、13歳の長女ヴォーレイ・アーヴィング (Voirrey Irving) さんが自宅で、自らをジェフ (Gef) と名乗るネズミほどの大きさのマングースに遭遇したのです。
毛並みは黄色味を帯び、尾がフサフサで、そして手は人間のそれのようでした。
ジェフは自身を「1852年6月7日インドのニューデリーで生まれ、とてつもなく賢い地縛霊で、マングースの姿をしたゴースト」と自己紹介しました。
初めは不慣れな英語も次第に問題なく操れるようになりました、さすが自分で「とてつもなく賢い」というだけのことはあります。
アーヴィング家がダルビー村 (Dalby) の近郊であったことからジェフはダルビー・スプーク (Dalby Spook) とも呼ばれます。
「ダルビー村の霊」といった意味です。
ジェフは娘のヴォーレイさんが一番のお気に入りでしたが、次第に父親のジム、母親のマーガレットとも会話をするようになります。
但し、母親にはあまり懐かなかったといいます。
夫妻は「ジェフは家計を助けるために森へ行ってウサギを捕まえてきたり、また番犬のような存在であり、野良犬がうろつけば家族に知らせ、ストーブを消し忘れて寝てしまえば代わりに火を消し、朝寝坊すれば起こしてくれ、ネズミが家屋に入れば追い出してくれる」と近隣の人々に話しました。
そしてジェフは大の甘党で天井から吊るした更にチョコやビスケット、バナナを置いておくと家族がいない間に食べてしまうといいました。
ジェフの噂は瞬く間にマン島に知れ渡ると、地元の新聞でも取り上げられるほどになります。
しかしジェフは取材に来た記者ラドクリフ氏の前に姿を現すことはなく、彼が得たものはジェフの話す声だけでした。
ラドクリフ記者は証拠はないもののヴォーレイさんが腹話術をしているに過ぎないと断定しジェフの存在を一笑に付しました。
父親のジム氏はこれに腹を立てイギリスの霊能力者ハリー・プライス氏に、ジェフの調査に是非自宅に訪れて欲しいと手紙を送ったことでジェフの噂はイギリスにも飛び火することになります。
多忙を極めたプライス氏は当初助手を送り込みましたが後に、ブライス氏本人が、続いてBBCのリチャード・ランバート氏と、その後多くのジャーナリストたちがアーヴィング家を訪れることになります。
しかし、ジェフは姿を現すことはなく良くてもジェフの声を聴くことしかできませんでした。
中には姿を見たと証言するジャーナリストもいましたが確たる物的証拠を得ることはできませんでした。
合理的に考えてマングースが人間の言葉を話すということはやはり受け入れがたく、そもそもジェフが姿を決して現さないことにアーヴィング家の家族ぐるみのでっち上げだと多くの非難を浴びることにもなりました。
その後父親のジム氏は亡くなり1945年、母子は家を売り払い、1970年に家屋が取り壊されたことによってジェフの痕跡を残すものはすべてなくなってしまいました。
ヴォーレイさんは晩年インタビューでジェフについて聴かれると、ジェフは実際に存在し決して自分の腹話術ではないと主張を変えることはありませんでした。
2005年、彼女は亡くなり、ジェフの謎は永遠に説かれることはなくなりました。
(関連記事)
今の時代なら音声解析で腹話術か分かりそうですね
返信削除それにしても地縛霊のわりに親切だなぁ
クダギツネみたいなかんじか?マングースってブリテンでは当時は珍しくもなかったんかなあ。何でマングース…
返信削除