ノースカロライナ州の超名門、デューク大学で行われた擬似テレパシー実験 (2013年) は、「テレパシー」という言葉の響きに懐疑的な人たちにも興味を抱かせる実験でした。
実験の主任は脳科学者ミゲル・ニコレリス (Miguel Nicolelis) 教授。
まずはテレパシー実験の前に、喉の渇いたラットに簡単な学習をさせることからはじまります。
ラットのいる小部屋には左右2つのレバーがあり、そのレバーの上にはLEDライトが設置されています。
LEDライトは左右いずれか一方のみ点灯し、点灯しているほうのレバーを押すと「当たり」となりご褒美 (水) が貰えます。
つまりご褒美を貰うにはLEDライトが点灯しているほうを押す必要があり、「LEDの点灯」と「ご褒美」を関連付けて考える必要があります。
この学習を終えてはじめてテレパシー実験に移ることができます。
ニコレリス教授の実験はこうです。
アメリカ、ノースカロライナ州のダラム (Durham) とブラジルのナタル (Natal) の2箇所に上記のご褒美システムを備えた小部屋を設置しそれぞれにラットをいれます。
この2点間の距離は数千キロも離れており、もちろん相手の姿を見ることもできなければ声を聞くことも出来ません。
しかし、このラットたちにはインプラント手術が施されており、脳波の送受信が出来る状態にあります。
といっても一方通行で、ブラジルにいるラットがエンコーダー (以下「送信ラット」と呼びます)、北米にいるラットがデコーダー (以下、「受信ラット」と呼びます) 専門となります。
送信ラットの入っている小部屋のLEDは点灯しますが、受信ラットの入っている小部屋のLEDは点灯しません。
送信ラットは学習回数とともに正答率を上げていくことが期待できますが、受信ラットはLEDのヒントがないため当たる確率はまったくの運、当たりを押す確率は50%前後しか期待できません。
しかし上記のように2匹の脳は接続されており、送信ラットの脳波を受信ラットは瞬時に受け取ることが出来ます。
一方通行の電話のような感じですが、無言電話で相手に意志を伝える「以心伝心」といった感じでしょうか、この状態で受信ラットが送信ラットの「意思」を感じ取れればいわゆる「テレパシー」に近い能力を持っていることになります。
送信ラットは常にヒント (LEDライトの点灯) が貰えるので、LEDにのみ注意を払っていればOK、受信ラットことなど気遣う理由はありません。
そこでご褒美のもらえる条件のルール変更です、送信ラットと受信ラット両方が「当たり」のレバーを押したときに限り「本当の当たり」とし、ご褒美がもらえるようにしたのです。
状況を整理しましょう。
送信ラット (ブラジル) はLEDライトのヒントが貰え、一方、受信ラット (北米) はLEDライトのヒントがありません。
送信ラットは学習により正答率を高めていくことが可能ですが、受信ラットはヒントがないので「当たり」を押す確率は全くの運、50%です。
両者が当たりを押して初めてご褒美が貰えるシステムになったため、ご褒美の貰える確率を上げるには、受信ラットが送信ラットの「脳波をキャッチ」し「理解する」必要があります。
レバーは左右についていますが、送信ラットと受信ラットの当たりは常にシンクロ、つまり送信ラットの部屋のLEDライトの右側が点灯していたら、受信ラットのほうも右側が当たりということです。
万一「テレパシー」に似た能力 (ケーブルであれ何であれ物理的に接続されているので厳密には「テレパシー」ではありませんが) で脳波を送信したり受信したりする能力が備わっているとすればご褒美が貰える確率を上げることができるはずです。
脳波の送受信が不可能な場合、送信ラットが訓練の結果、仮に100%当たりのレバーを押せるようになったとしても、受信ラット側は50%の確率でしか当たりレバーを押せないため、ふたりがご褒美にありつける確率は回数をこなせば50%前後に収束するはずです。
そして実験の結果、その能力 (脳波の送受信) は実際に存在する可能が示唆されました。
正解を知る手掛かりのない受信ラット、ただの運任せでは正答率50%前後、しかしこの共同作業による実験をしてみたところ正答率は60%~72%と飛躍的上がっていったからです。
つまり送信ラットがたとえば「右が当たり!」と思った脳波が瞬時に受信ラットに届き、行動決定させている (つまり理解している) 可能性があります。
ラットにその感覚を説明してもらうことは出来ませんが、受信ラットが脳波を受け取ったときの感覚は一種の「閃 (ひらめ) き」に似たものだったかもしれません。
上記で述べたとおり、物理的に接続されている以上、厳密にはテレパシーではありませんが、数千キロも離れた位置関係にいても2匹のラットが脳波の送受信だけで意思を共有できる可能性が示された実験といえます。
(参照サイト)
New Scientist
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