■クワガタ級の大顎を持つ巨大ミツバチ ~ ウォレス・ジャイアント・ビー (Wallace's giant bee)
最近、アメリカではオオスズメバチ (Vespa mandarinia) が外来種として定着し始めたと恐怖を持って伝えられています。
「オオスズメバチは日本で毎年平均して50人もの死者を出す恐ろしいハチで、、、」
、、、そんな死んでないって。
とはいえ、現在でも毎年20人前後の死者を出すハチの刺傷事故。
この死者数にはオオスズメバチだけではなく、キイロスズメバチ (ケブカスズメバチ Vespa simillima) やミツバチ、アシナガバチによる刺傷事故が含まれており純粋なオオスズメバチによる死者数ではありません。
こういった報道は外来種が未知の生物でよく分かっていないというのと、メディアがセンセーショナルな報道を好むことに起因するのでしょう。
日本でもヒアリ (Solenopsis invicta) やセアカゴケグモ (Latrodectus hasseltii) が外来種として確認され始めた当初、刺されたら終わりぐらいの極端な報道も見受けられましたが、これと同じですね。
(通常のミツバチとの比較)
(image credit by New York Times)
さて今回は世界最大のミツバチ、ウォレス・ジャイアント・ビー (Megachile pluto)。
和名は分かりません、ウォレスオオミツバチとかになるんですかね。
インドネシアの北モルッカ諸島のバカン島 (Bacan)、ハルマヘラ島 (Halmahera)、ティドレ島 (Tidore) の3つの島でのみ生息が確認されている「超」がつく希少種。
1981年を最後に野生下でまったく目撃されないことから絶滅したものと思われていましたが、2018年にバカン島で37年ぶりに発見されました。
ミツバチ最大で体長は38ミリ、胸部・腹部も大きくボリュームがあり、羽を広げた大きさは63.5ミリとミツバチとしてはモンスターサイズです。(セイヨウミツバチは12ミリ程度)
(オストメスの比較)
顕著な性的二形でメスのみが巨大化し、オスは半分程度の23ミリにしか成長しません。
またオスのクワガタの大顎を彷彿させる巨大な顎を有しますが、これもメスのみです。
ところで絶滅していなかったのになぜこれほど大きなハチが37年もの間、人目に触れなかったのか?
もちろん限定された島に生息し、もともと数も多くないというのはあるでしょう、しかし最大の原因はこのハチが樹上性のシロアリ (Microcerotermes amboinensis) の塚内部にのみ巣を作ることにあります。
このシロアリとはおそらく共生関係にあると考えられており、シロアリの塚内の一角に自身の巣を作ります。
この巣作りの際に使うのが植物性の樹脂。
ウォレス・ジャイアント・ビーはこの巣作りのためフタバガキ科の植物 (Anisoptera thurifera) から分泌される樹脂をかき集めますが、樹脂をこそげ落とすにはかなりの労力が必要です。
そこで役立つのがクワガタのような大顎と馬力を出すための巨体というわけです。
科学者が血眼になってやっとこ見つけたウォレス・ジャイアント・ビーですが、実は科学者よりも一足早く一般人がこのハチは捕獲しeBayに出品、9100ドル (約98万円) の値がついたという過去があります。
(参照サイト)
The New York Times
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