■城下で財宝を守る巨大昆虫 ~ ムスカ・マセッダ
ムスカ・マセッダ (ムスカ・マチェッダ, Musca Macedda)。
イタリア、サルデーニャ島に伝わる昆虫のUMAで、昆虫離れした巨大な体躯を誇ります。
その姿は「牛の頭ほどもある蠅」と形容されます。
ロッツォラーイ (Lotzorai) の伝説によれば、ナバラ城の地下にはいつもふたつの宝箱 (樽とも) が安置されています。
ひとつの宝箱には信じられないほどの金銀財宝が入っており、誰でも容易に開けられます。
しかしもうひとつの宝箱にはムスカ・マセッダが入っています。
1/2の確率で一生遊んで暮らせる財宝が手に入るにも関わらず、その宝箱を開けようとするものは現れませんでした。
というのもムスカ・マセッダが入っている宝箱を開ければそのものは瞬く間にムスカ・マセッダに刺され殺されます。
しかもそれだけでは済みません、ムスカ・マセッダは城の地下を抜け出すとその国の人々を皆殺しにし、隣接する7ヵ国の住民もすべて殺されるという言い伝えがあります。
それ故、悪人たりともその1/2の賭けには挑戦したものはいないといいます。
これだけを聞くと完全なお伽噺にすぎませんね。
少し話が逸れますが、人間にとって危険な生物というと、映画やマスコミのセンセーショナルな報道の影響もあってクマとかサメとかが日本では上位に来るんじゃないでしょうか。
そのためクマやサメを撲滅すべきだ!な~んて過激な思想に走る人もいるぐらいです。
まあ確かに山で巨大なヒグマに出くわしたり、泳いでいてホホジロザメ (ホオジロザメ) に遭遇しようものならほぼ人生終了、怖い存在であることは確かです。
これらの生物で亡くなる方も毎年おられますし軽視してよいというわけではありませんが、人間を殺傷する生物としてクマやサメがランキング上位にくることは決してありません。
クマがエサを求めて人里に降りて着たり、サメが海水浴場に現れたりとかすることはありますが、彼らの生息域にわざわざ足を踏み入れて被害を被るケースが少なくないからです。
クマやサメを必要以上に恐れるのは衛生的に優れた日本をはじめとする先進国ならではの感覚です。
アフリカではライオンよりカバが人を殺すんだよなぁ、とか思う人もいますが、実際のランキングはそんな生易しいものではありません。
本当に怖いのはそういった動物の生息域に足を踏み入れなくても人を襲う生物です。
人間を殺す生物ランキング1位は、ランキング2位以下のすべて足した総数でも全くかなわないマラリア (マラリア原虫) を媒介するハマダラカ (ハマダラカ属:Anopheles) で調査機関によってその犠牲者の数はバラバラですが最低でも年間60~70万人、最大で100~200万人と推測されています。
マラリアによる犠牲者はあまりに数が多すぎて正確な数が把握できないほどなのです。
戦争や殺人大好きな人間が年間40~45万人と第2位ですがそれを凌ぐほどなのです。
人間を除いた殺人ランキング第2位の動物は毒ヘビで10万人、マラリアがいかにぶっちぎっているか分かるでしょう。
3位以下はぐっと数が減りはイヌの2.5~3.5万人です。
ペットのピットブル (アメリカン・ピット・ブル・テリア) 等が飼い主やその家族を殺める痛ましい事故が時折ニュースになりますが、そういった直接的な攻撃で亡くなる人はごくごくわずかです。
イヌが第3位にランキングされているのは狂犬病ウイルスを媒介するからで、咬まれた後に発症した場合、死亡率はほぼほぼ100%、発症して助かった人は2~3人いますが、歴史上何千万にと亡くなってわずか数人の生還率、死は免れません。
4位以降は調査機関によりばらけますが眠り病 (アフリカ睡眠病) を引き起こすトリパノソーマを媒介するツェツェバエ (Glossinidae) の1万人、様々な住血吸虫の宿主である淡水生カタツムリの1~2万人、シャーガス病を引き起こすトリパノソーマを媒介する肉食性のカメムシの仲間サシガメ (サシガメ科:Reduviidae) の1~1.2万人、といったところです。
(サシガメの一種、(Acanthaspis sp.))
(image credit by Wikicommons)
ちなみにサシガメは英語圏ではアサシンバグ (Assassin bug)、つまり「暗殺者の虫」と呼ばれますが、これは鋭く尖った口針で獲物を何度も刺すさまがまるで暗殺者を彷彿させることに由来します。
サシガメはすべてが人間に危険なわけではなくほんの一部の種で、日本に生息するサシガメも刺されるとアホみたいに痛いですが、寄生虫については大丈夫なはずです (たぶん)。
で、話を戻しましょう、日本で一般的に怖いと恐れられるサメやクマは10位以下のランク外です。
ヘビの直接的な毒の注入を除けば、他は寄生虫やウイルスの媒介によるもので、そのほとんどは昆虫や寄生虫のような小さな動物によるものです。
さてなんでこんな話をするかというとムスカ・マセッダはこういった寄生虫やウイルスの媒介により命を落としていることが分からなかった時代、うすうす感づいていたハマダラカやもしかするとツェツェバエといった昆虫と病原体を具象化したものではないかといわれているからです。
伝説によればシチリア島にあるモンレアーレ城にはかつて人々から忌み嫌われた強欲な貴族が棲んでおり、人々からの復讐を恐れ滅多に外に出ることはなく、外出するにしても城の地下から延びる地下道を使いました。
彼は馬に跨り地下道を進みましたがその馬には蹄鉄を前後逆向きに打ち、遺した足跡すら混乱を招くようの徹底ぶりでした。
その城主は人々から奪った宝物を城の地下に隠し、用心のためムスカ・マセッダの入った宝箱もその中に紛れ込ませたといいます。
そして、その地下道も、そして宝物も現在でも遺っているといわれています。
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ムスカは箱に入ってる間は絶食してるのかな?
返信削除一度箱から出ると自分から戻るのかな?
そこら辺はちょっとファンタジー的に赦してあげてください
返信削除蚊や蝿が病気を媒介して…というのはよく聞いていましたがカタツムリやカメ?は意外でした
返信削除あ、サシガメって肉食性の「刺すカメムシ」の仲間です。分かりにくいですね、加筆しておきますね。
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