■超巨大ハサミムシ ~ セントヘレナオオハサミムシ■
失脚したナポレオン・ボナパルトの流刑地として有名なセントヘレナ島。
この島には多くの固有の動植物が生息していることでも有名です。
わずか120平方キロメートルの面積ながら、この島固有の動植物はなんと400種類。
その中から今回は幻の巨大ハサミムシ、セントヘレナオオハサミムシ (Labidura herculeana) を取り上げたいと思います。
「失われた動物たち」(WWF Japan監修) ではヘルクレーアオオハサミムシとなっており、どちらが標準和名かわかりませんので、より知名度のあるセントヘレナオオハサミムシでこの記事は統一します。
(セントヘレナオオハサミムシの貴重な標本)
(image credit by Roger S. Key/Wikimedia)
さてセントヘレナオオハサミムシとはどんな昆虫だったのでしょう?
日本で目にするハサミムシは通常1~2センチ、大きい種でも3センチ程度ですが、セントヘレナオオハサミムシは84ミリもありました。
ハサミムシのトレードマークはなんといっても尾部にある「ハサミ」です。
セントヘレナオオハサミムシはこのハサミの大きさだけ2.4センチ、通常のハサミムシの全長ほどもありました。
普段の生活ではあまり目にすることのないハサミムシですが、ちょっと湿った場所にある大きめの石をひっくり返したりすれば、ハサミムシたちの右往左往する姿を見ることができます。
セントヘレナオオハサミムシはその程度の労力では到底遭遇することはできません。
ひとつは、おそらくもともと生息数が少ないことが理由です。
そしてもうひとつ、このハサミムシの習性です。
夜行性で昼間は深く土中に潜り込んでおり、雨の降った後ぐらいしか地上に出てこないため滅多なことで人目に触れることはありません。
じゃあどれぐらいのレア度なのか。
レア? スーパーレア? ハイパーレア? ウルトラレア? レジェンドレア?
セントヘレナオオハサミムシが発見されたのは18世紀も終わりに近づいた1798年、デンマークの昆虫学者ヨハン・クリスチャン・ファブリシウス (Johan Christian Fabricius) によってです。
そしてその次に人類の前にこの巨大ハサミムシが現れたのは1967年、なんと約170年後です。
約170年の間隔を開けて2匹しか捕獲されていないのです。
そして1967年を境にまたもセントヘレナオオハサミムシは人類から姿をくらまします。
しびれを切らした人類は、170年も待たされまいと、およそ20年後の1988年、ロンドン動物園がセントヘレナオオハサミムシ捕獲プロジェクトである、プロジェクト・ヘルクレス (Project Hercules) を立ち上げます。
しかし残念ながら思ったような成果をあげることはできませんでした。
つまりなにも見つけられなかったのです。
1995年にはなんとか死骸を発見することができたものの、その死骸は死んで久しいものであり、事実上、最後の発見である1967年頃に絶滅したものと結論付けられました。
絶滅した原因は人間がセントヘレナ島に持ち込んでしまったネズミを始めとする外来種の影響と考えられています。
しかし、、、
絶滅と結論づけるには、人類はあまりにせっかち過ぎる?
確かに。
現在2020年、最後の目撃から「わずか」53年しか経っていません
170年周期 (厳密には169年) で人類の前に現れるセントヘレナオオハサミムシです、次に人類の前に現れるのは2136年。
生存を信じるなら気長に待つしかなさそうです。
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