■史上最大の大蛇 ~ ティタノボア・ケレジョネンシス
「測定が可能であったなら、水上に出ている部分だけで45フィート (約13.7メートル)、水面に隠れている部分で17フィート (約5.2メートル)、トータルで62フィート (約19メートル) はあったと思います」
イギリスの地質学者にして考古学者、軍人であり探検家、多くの肩書を持つパーシー・ハリソン・フォーセット (Percy Harrison Fawcett) 氏が1906年に地図作成の命を受け南米に派遣された際に目撃した巨大アナコンダの描写です。
フォーセット氏の目撃情報は学者たちの間で嘲笑の的となりました、あまりに大きすぎたからです。
オオアナコンダ (Eunectes murinus) は南米アマゾン川流域に生息する、言わずとしれた現世最重量のヘビです。
単純に長さだけであれば東南アジア・南アジアに広く生息するアミメニシキヘビ (Python reticulatus) が世界最長といわれいますが、オオアナコンダのほうがボリューミーなのでこちらを最大としておきます。
オオアナコンダは東コロンビアの石油地質学者が遭遇した37.3フィート (約11.36メートル) が「公式」最大記録とされていますが、それを証明する標本は存在しません。
他にも7~10メートルの「公式」と銘打った最大記録なるものが存在しますが、実際にはどれひとつとして客観的にその記録を証明できるものが存在しないといいます。
証拠として「蛇の皮」が存在するものもありますが、蛇の皮は伸びてしまうため確たる証拠とはなりにくにとのこと。
7メートルぐらいが最大値として無難な線ではないかといわれています。
冒頭のフォーセット氏の目撃情報はさすがに大きすぎるような気がしますが、意図的に誇張したわけではなく実際よりかなり大きく「感じてしまった」だけかもしれません。
突然の巨大生物との遭遇、相手はどうぞ観察してくださいとジッとしているわけではありません、襲われるかもしれないという恐怖やとんでもない生物を見てしまったという興奮、フォーセット氏でなくとも冷静に観察できる人は少ないでしょう。
面白い実験があります。
アメリカの動物学者アルフェウス・ハイアット・ヴェリル (Alpheus Hyatt Verrill) 博士が行ったものです。
岩の上に乗りとぐろを巻いた大きなアナコンダ、少し離れた距離から観察し、このアナコンダの全長を推測してもらうという単純なものです。
選ばれたのは野生動物にも見慣れている探検家メンバーたち。
実際は19.4フィート (5.9メートル) だったのですが、かれらの推測した値は20~60フィート (6.1~18.3メートル) とほぼ正解を含みますが最小値から最大値まで3倍の開きがあり、これだけ広範囲で指定してきたらそりゃ当たりますって。
まあそれだけ難しいということです。
(ティタノボアの実寸骨格模型)
さていつもどおり前置きが長くなりました。
今後どうなるかは分かりませんが、地球が誕生してから現在に至るまで、少なくとも知られているすべてのヘビの中でもっとも巨大に成長したのはティタノボア・ケレジョネンシス (Titanoboa cerrejonensis) です。
属名のティタノボアは「巨大なボア」、種小名のケレジョネンシスは発掘されたセレホン層 (Cerrejón) に由来し、ティタノボア・ケレジョネンシスという学名は「セレホンの巨大なボア」を意味します。
ティタノボアは南米コロンビアに暁新世の6000~5000万年前に生息していたまさに大蛇で、その体長は12~13メートル (一説には15メートル)、体重1135キロと推測されています。
復元されたティタノボアの模型を見れば分かりますが、10メートル超のヘビというものが想像を遥かに超えたいかに非日常的な大きさであるかが分かります。
フォーセット氏のいう62フィート (約19メートル) のアナコンダというのはこれよりも大きいということであり、やはりちょっと無理があるのでは?と思います。
仮にティタノボアが絶滅せず南米に生息しており人々が遭遇した場合、多くの人はおそらく20メートル、下手すると30メートルあったと証言するのではないでしょうか。
(体長14.6メートルで復元したもの)
(参照サイト)
The Great Web of Percy Harrison Fawcett
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他に大型のではGigantophis garstiniで10.7m、Liasis dubudingalaで10m、Palaeophisは種によって9m(ウミヘビ)、情報不足ですがChubutophis grandisもかなり巨大だったようです。
返信削除ティタノボアは旧サイトで書いたのでギガントフィスにしようかなと思ったんですが、やっぱナンバー1のティタノボアにしました。
返信削除ギガントフィスはたぶんそのうち書くと思います。