■グリッチ・イン・ザ・マトリックスとは?
グリッチ・イン・ザ・マトリックス (Glitch in the Matrix)。
グリッチ・イン・ザ・マトリックスに関連するネタはたびたび取り上げていますが、あまり詳しく説明していなかったのでほんの少しだけ掘り下げてみましょう。
これは映画マトリックス (1999年) に由来する言葉です。
マトリックスの世界観同様「我々は本当はコンピュータの中 (つまり仮想上) の住人 (キャラクター) にすぎないのではないか?」という、いわゆる「シミュレーション仮説 (Simulation hypothesis)」に基づいたセオリーです。
「シミュレーション仮説」を唱える代表的な人物にスウェーデン人哲学者ニック・ボストロム (Nick Bostrom) 氏がいます。
ボストロム氏は現代の著名な哲学者であり、オクスフォード大学の現役教授であることから、この「シミュレーション仮説」が良くも悪くも世界的に大きく注目されることになります。
とはいってもシミュレーション仮説自体はボストロム氏が考え出したまったく新しい思想ではなく、紀元前のプラトンが唱えたイデア論 (「洞窟の比喩」が分かり易い) から既にそのアイデアは存在します。
17世紀、ルネ・デカルトの「方法的懐疑」「実体二元論」を経て、1980年代のヒラリー・パトナムの提唱した思考実験「水槽の脳」はほぼ「シミュレーション仮説」と同等の意味を持ちます。
しかしボストロム氏は歴代の哲学者の提唱する懐疑主義的な思考実験にとどまらず、シミュレーションは現実的に可能であり、実際に我々が住んでいるこの世界 (宇宙) はシミュレーションの可能性がある、なんならそう考えた方が合理的である (可能性が高い) とまで主張しています。(※この可能性については20%、50%、99%等、大きなバラツキがあります)
思考実験から飛び出し理論物理学へと歩みを進めた「シミュレーション仮説」ですが、実際のところ、この説を (公に) 支持する物理学者はほとんどいません。
数少ない支持者であったアメリカの天体物理学者ニール・ドグラース・タイソン (Neil deGrasse Tyson) 氏も後年考えが変わり現在では不支持側に回っています。
ドイツの理論物理学者ザビーネ・ホッセンフェルダー (Sabine Hossenfelder) 博士はシミュレーション仮説に特に辛辣で、この説を提唱・賛同する哲学者は物理学の知識に乏しいインテリぶったナルシストたちであり、この理論は疑似科学であり単なる宗教に過ぎない、いや宗教にすら値しないただの「言葉」だ、と痛烈に非難しています。
(※サビーネさんの反論に興味のある方は彼女のブログをどうぞ)
個人的な見解ですが「公 (おおやけ)」には支持していないだけで物理学者の中にもシミュレーション仮説の「隠れファン」は割と多いのではないかと思っています、だって面白いですからね。
(シミュレーターは我々の世界をスクリーン越しに覗いている?)
とはいえ、そもそもこの「シミュレーション仮説」は、現時点でそれが真であることも偽であることも証明する方法が存在しません (思いついていません)。
さて、そういった難しい話はおいといて、このシミュレーション仮説の一部ともいえるのがグリッチ・イン・ザ・マトリックスです。
単純な例を挙げてみましょう。
例えば我々がゲームをしていて、ゲーム内のキャラクターを両側が壁で囲まれた一本道をまっすぐ歩かせていたとします。
壁が障壁となり左右へ逸れることはできませんが、プログラミングのミス、つまりバグで実は壁の一部に通り抜けられる箇所があり、そこから全く異なる場所へ飛んで行ってしまう、つまりテレポート (またはワープ) できてしまうことがあったりします。
プレイヤーである我々はそのことについてバグを発見したといい「裏技」を見つけたと自慢したりする程度です。
が、もし、このゲーム内のキャラクターに自我、意思があったとしたら?
通り抜けることが出来ないはずの壁を通り抜けたことに驚愕することでしょう。
グリッチ・イン・ザ・マトリックスとはまさに地球上の我々が上に挙げたゲームの主人公のような存在に過ぎないのではないか?という理論です。
我々はゲーム内のキャラクターと違い意志を持ちます。
上記の例のように、地球上の物理法則を逸脱した場面に直面した場合、我々はゲームのキャラクターと異なり意思を持つためその事実に驚きます。
そしてその現象の説明がつかない以上、これはもしかして自分たちが現実と思って住んでいる世界、というかこの宇宙が、実はなにものか (シミュレーター) によって作られた仮想世界なのかもしれません。
と、これがグリッチ・イン・ザ・マトリックスの主な考え方です。
「グリッチ・イン・ザ・マトリックス」という言葉自体は新しいですが、この現象自体はオカルト系・都市伝説系の話で昔から存在したもので、既視感 (デジャヴ) や予知夢、心霊現象、シンクロニシティ (共時性) なんかもグリッチ・イン・ザ・マトリックスの一部を構成する要素です。
ま、日本ではどこまで受け入れられるかは分かりませんが、日本とは比べ物にならないほど陰謀論が大好きなアメリカではとても人気のあるオカルト系ジャンルです。
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