■400頭の羊を殺した伝説の野犬 ~ エンナーデイルのガートドッグ
300人を喰い殺したといわれる伝説の人喰いナイルワニ、ギュスターヴ。
この殺害した人数はかなり過大評価 (誇張) された数と考えられていますが、それでも長期にわたって人々を恐れさせた実在するクロコダイルです。
日本でも、北海道標茶町 (しべちゃちょう) で4年にわたり家畜を襲ったヒグマ、「OSO18(おそじゅうはち)」も記憶に新しいところです。
OSO18が初めて被害が確認されたのが2019年7月16日、以降、神出鬼没に現れてはウシを襲い、2023年7月30日にハンターにより射殺されるまで66頭のウシを襲い、うち32頭を殺害しました。
さて、今回紹介するのは「エンナーデイルのガート・ドッグ (Girt Dog of Ennerdale)」
ギュスターヴのように人を襲うことはありませんでしたが300~400頭のヒツジたちを殺した伝説の野犬です。
ガート・ドッグが現れたのは19世紀のイングランド北部カンバーランド (Cumberland)。
初めてその存在が確認された1810年5月10日といわれています。
出没するのはほぼ夜間であることからその姿をはっきりと確認することは難しく、目撃証言によるガート・ドッグの特徴も統一性がなくバラバラでした。
「ガート・ドッグ (Girt Dog)」という名前からも分かる通り「犬」であることは認識されていたようですが、とにかく大きくトラのような縞模様を持つ、といったものやライオンに似ているといったようにイギリスには存在しない大型ネコ科動物の特徴を持つと考えられていました。
現在でいう、イギリスの代表的なUMA、ABCことエイリアン・ビッグ・キャット (Alien Big Cat) の犬バージョン、エイリアン・ビッグ・ドッグ (ABD) といった存在だったのでしょう。
19世紀初頭の古い記録ということもあり、誇張された可能性は否定できませんが、一晩で複数頭 (最大8頭とも) を襲っていたことは確かでこの野犬が食事以上に殺戮を楽しんでいたのは疑いようもありません。
目撃証言の中には獲物を完全に仕留めずに生きたまま貪り食っていた、頸動脈から直接血を吸っていたというような信じ難いものも含まれます。
ガート・ドッグを射殺するため有志たちが集まり最大200人による捜索隊が組まれるもこの犬は逃げおおせ、狩猟犬すら臭いを嗅ぎつけると逃げ出すといった噂まで流れ始めます。
もはや「パラノーマル (超自然的)」な存在に近付いていたようです。
しかしそれは人々が思うような決して霊的な存在ではなく完全に実在していました、というのも1810年9月12日、ジョン・スティール (John Steel) という名のハンターによりついに射殺されたからです。
それ以降、ヒツジが襲われることがパッタリと止んだことからも、それがガート・ドッグだったに違いありません。
体重は112ポンド (約51キログラム)、かなり大きいことは確かですがパラノーマルな噂が立つほどの大型犬ではありませんでした。
ガート・ドッグはむしろその殺戮を楽しむかのような気性に問題があったのでしょう。
(最期のタスマニアタイガー、ベンジャミン)
その後ガート・ドッグは剥製にされケズィックのハットン博物館に19世紀末まで展示されていましたがそれ以降は倉庫にしまわれ、1950年代に再発見された時には保存状態の悪さから廃棄されてしまいました。
剥製にされたにもかかわらずそのまま廃棄、写真すら残っておらず、その正体はただの「気性の粗い雑種犬」に過ぎなかったとの説が有力ですが実物がない以上、確かなことは不明です。
そのため初期の目撃情報に縞模様があったという証言から、オーストラリアから連れてこられサーカス団に帯同していたタスマニアタイガーことフクロオオカミ (Thylacinus cynocephalus) が脱走したもの、という説もそれなりに説得力があります。
但しフクロオオカミは平均体重が55ポンド (約25キロ) 程度、大型で66ポンド (約50キロ) ぐらいしかなく、ガート・ドッグの正体がフクロオオカミだったとしたら飛び抜けて大きな個体だったことになります。
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