(アラバール)
■アラブに潜む空飛ぶ蛇 ~ アラバール
アラビア海に面した地域に生息するといわれている空飛ぶヘビ、アラバール (Arabhar)。
アラバールとは「アラブのヘビ」を意味するため、インド・パキスタンを除くアラビア海に面したアラブ諸国に生息するUMAと考えていいでしょう。
世界に目を向ければ空飛ぶヘビは意外と目撃が多く、シー・サーペント (Sea serpent) ならぬスカイ・サーペント (Sky serpent) と呼ばれます。
スカイ・サーペントはあくまで空を飛ぶヘビのような姿をした生物 (UMA) の総称でありこれといって決まった姿をしていません。
ヘビの姿そのものであったり、翼を持っていたり、その翼も大きかったり小さかったり、コウモリのような翼であったり、スカイフィッシュのようなヒレ状であったりと、その姿も千差万別です。
アラバールはその中で最も空を飛ぶのに苦労しそうな「翼なし」タイプ、つまりヘビそのものの姿をしたスカイ・サーペントです。
そんなん無理だろ、確かに。
ですが翼なしで空を飛ぶ蛇は実在します。
UMAでもなんでもなく普通のヘビです。
東南アジアからインド・スリランカ等の南アジアにかけて生息するトビヘビ (Chrysopelea) の仲間です。
(パラダイストビヘビのグライディング・シーン)
(image credit by Discovery UK/YouTube)
現在まで5種知られており、一番小柄なベニトビヘビ (Chrysopelea pelias) で60センチ、一番大柄なゴールデントビヘビ (Chrysopelea ornata) で130センチと概ね小柄なヘビです。
毒蛇ですが毒性は非常に弱く、獲物となる小柄なトカゲやコウモリ等を倒す程度の威力しかないため、基本的に人間には無害と考えられています。
さてトビヘビの飛翔能力ですが、フライング・スネークと呼ばれるものの実際「飛翔 (フライング)」はできません。
つまり地上から空へ舞い上がことは出来ないという意味です。
彼らのフライングとは高い木から他の木や地上へ向かって「滑空 (グライディング)」するという意味で、そのためグライディング・スネークとも呼ばれます。
こちらのほうが正しい表現ですがグライディングしている姿はまさに空を飛んでいるように見えるのでフライング・スネークという呼び方でなんら問題はないでしょう。
あんな空気抵抗もほとんどなさげな棒状の体で高いところから飛び降りようものなら、何も出来ないまま地上に体を打ちつけられてしまいそうです。
実際、そこらへんのヘビであれば投身自殺に近いでしょう。
しかしトビヘビたちはそうはなりません。
高い木から体を空中に投げ出すと、まるで空を泳いでいるかのようになだらかに滑空します。
滑空できる秘密は肋骨にあります。
飛んでるときも肉眼では余り変わりなく見えますが、実は空中に身を投げだした瞬間に色々やっています。
まず外見こそそこら辺のヘビと変わりありませんが、実は滑空時、腹部の面積は通常時の2倍に広がっています。
これはトビヘビたちの肋骨が脊椎に固定されていないことによってなせる技で、肋骨を左右に広げ上下に扁平に、つまり薄っぺらになるのです。
この空気抵抗をもっとも稼げる体制を維持しなければなりません。
横にでもなろうものなら薄っぺらになっているだけに余計空気抵抗がなく地上に向けて真っ逆さまです。
そこで空中ではS字を保ったまま蛇行運動を続け、また尾を上下に激しく振ってひっくり返ったりしないようバランスを取ります。
これにより地面と限りなく体を平行に保ち続けることが可能となり、もっとも飛距離を出した個体は地面との傾斜角がわずか13度しかありませんでした。
また着地場所も自由に、とまでは行きませんが、飛び出した進行方向から最大90度の範囲で方向転換も可能であり、グライディング中、方向もそれなりにコントロールしていることが分かります。
飛距離はヘビの大きさ (長さ) にのみ関係し、同じ条件下であれば小さいほど飛距離が出るといいます。
(パラダイストビヘビの通常時)
(image credit by Rushen/Wikimedia)
ベニトビヘビやパラダイストビヘビ (Chrysopelea paradisi) は最大100メートル滑空したのが確認されています。
さてUMAのアラバールに話を戻しましょう。
この話を聞けばアラバールの正体はトビヘビに違いない、そう思ってしまいますが、残念ながらアラブ諸国にトビヘビは生息していません。
インド南部・スリランカがトビヘビ生息地の最西です。
アラバールの本当に確かな目撃があるとすれば未確認の、つまり6種類目のトビヘビかもしれません。
(参照サイト)
National Geographic
(関連記事)
トビヘビ懐かしいですねー!
返信削除昔の爬虫類図鑑には『変わり種』として、必ずトビトカゲと一緒のページにいた記憶が。
挿絵だと誇張されてたのか、かなり平べったくなってましたけど。