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2024年7月29日月曜日

著名な鳥類学者が目撃した幻の猛禽 ~ ワシントン・イーグル


■著名な鳥類学者が目撃した幻の猛禽 ~ ワシントン・イーグル

リョコウバトの記事で軽く触れたことのある画家にして鳥類学者、博物学者のジョン・ジェームズ・オーデュボン (John James Audubon)。

野鳥が好きだったことが影響しているのか自然を愛し、フロンティアスピリットなる言葉で自分ら移民たちがアメリカの大自然を破壊し、先住民族を虐げることに憂いを感じていた稀有な人物です。

さて、1826年に発表された彼の最も有名な著書「アメリカの鳥類 (The Birds of America)」で紹介される435羽の一羽にワシントン・イーグル (Falco washingtonii) なる鷲が登場します。

(オーデュボンの描いたワシントン・イーグルの挿絵)
(image credit by Wikicommons / Public Domain)

オーデュボン氏は五大湖周辺で4度この鷲を目撃したといい、体長4フィート7インチ (約1.4メートル)、翼開長10フィート2インチ (約3.1メートル) と本には記されており、北米で知られているいかなる鷲よりも大きかったといいます。

しかし学名まで記載しているものの、この鷲はオーデュボン氏以外、現在まで誰の目にも触れたことがなく現在は無効とされている幻の鳥です。

属名「Falco」はハヤブサ属、種小名の「washingtonii」はアメリカ初代大統領、ジョージ・ワシントン (George Washington) への献名です。

その理由をオーデュボン氏はこう述べています。

「この鳥の名に、祖国の救世主であり永遠に愛されるであろう高貴な人物の名を冠することが許されると信じております。

なぜなら、新しい世界はわたしに誕生と自由をもたらし、この独立を保証した偉大な人物はいつもわたしの心に寄り添っているからです。

この鷲のように彼は勇敢で、敵軍にとっては恐怖の的であり続けました。

彼の名声はアメリカの隅々までいきわたりました、それは羽を持つ種族の中で最も強者で威風堂々としたこの鷲の飛翔そのものです。

アメリカという国がワシントン大統領を誇りに思う理由があるのであれば、同様にこの偉大な鷲を誇りに思う理由があるでしょう」

鷲の説明というよりワシントン大統領への賛辞が止まりません。

オーデュボン氏はその画家としての才能も鳥類学者としての実力も高く評価されている人物ですが、このワシントン・イーグルに関してだけはあまり評判がよくありません。

発売当初は広く信じられていたものの、その後全く目撃情報がないからで、既知の鳥、ハクトウワシ (Haliaeetus leucocephalus) の幼鳥を誤認したか、本を売るために捏造して紛れ込ませたんじゃないか説もあります。

しかし、あまりに希少な種のため現在まで目撃がないだけ、もしくは当時 (19世紀初頭) すでに絶滅寸前にあり、現在では絶滅してしまった幻の鷲という説もあります。








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