1本の街路灯を取り囲むように多くの人々が1点を見上げています。
その先にはあなたの友人が塔に固く抱きつきじっとしています。
友人はこんな人騒がせなことをするような人物でないことをあなたは知っています。
それなのになぜ?
休日のランチを済ませ、道を歩いていると突然友人は無言になり街路灯に登り始めたのです。
心配そうに見上げる群衆の先にいる友人。
すると、さっきまで微動だにしなかった友人が突然痙攣を起こし始めました。
落下するのでは、、、群集からは悲鳴が上がります。
すると思いもよらぬことが起こり始めました
痙攣を起こしていた友人の体が突然ぶよぶよと変形し始めたかと思うと、どろどろになって爆発してしまったのです。
多くの人々の頭上に友人の体が雨のように降り注ぎました。
友人の壮絶な死を目にして数週間後、いまだ立ち直ることが出来ないあなたですが、友人の死んだ街路灯に花を手向けに行きました。
友人の掴まっていた街路灯の先を見つめるあなた。
その刹那、からだに電流が走りました。
どうしてもその街路灯を登りたいという衝動を抑えられないのです。
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(image by AAAS)
数多くのゾンビ映画が制作されていますが、ゾンビ化する要因は基本的に「ゾンビウイルス」です。
昆虫や動物のゾンビ化 (体ののっとり) をいくつか取り上げていますが、そのほとんどは寄生虫によるものです。
今回のゾンビ化はそういった寄生虫ではなく、ウイルスによるもの、すなわち実在する「ゾンビウイルス」といえます。
ウイルスの名前はバキュロウイルス (Baculovirus) です。
もちろん冒頭のお話はフィクションですが、これと近い状態のことをバキュロウイルスはやってのけます。
バキュロウイルスのターゲットはイモムシです。
イモムシは感染してしばらくの間は見た目も行動も、非感染のイモムシたちと差異はありません。
ウイルスの目的はイモムシの殺害ではなく子孫の繁栄ですから、突然殺したりはしないのです。
見た目は変わりありませんが、実は感染したイモムシは脱皮しません。
つまり成虫になることのないイモムシは常に食べ続けることになります。
これはウイルスの増殖の時間稼ぎになることでしょう。
そして時が来るとバキュロウイルスはついにイモムシに手をかけます。
イモムシをより高いところへと導くのです。
これはウイルスが「光に向かって」進むように仕向けていることから来ているそうです。
バキュロウイルスに操られたイモムシは死に適した場所に連れてこられると、もはや食事を取ることもなく、そのままじっとしています。
まるで蛹化 (ようか) 前のようにじっと動きを止めているイモムシですが、決してサナギになることはありません。
前述の通り、バキュロウイルスに感染したイモムシは脱皮できないからです。
やがてイモムシに死が訪れます、するとそれからわずか数時間後、イモムシの体は内部からどろどろに溶け始めます。
どろどろに溶けた「ゾンビウイルス入りの体」はイモムシの食べる葉の上に、無造作にどんどん落ちていきます。
なるべく広範囲にウイルスをばら撒きたいがために、バキュロウイルスは高所へ誘導したのです。
イモムシがそのウイルスのついた葉を食べれば、かれらも同じ運命を辿ります。
また、感染したイモムシが鳥に食べられてしまった場合でも、遠方に運ばれた上、バキュロウイルス入りの糞をするため、これもまたウイルスの拡散を期待できます。
バキュロウイルスは無脊椎動物にしか感染しないことが分かっており、人間には害はありません。
が、もしウイルスが変異し、脊椎動物、そして人間をも操れるようになったら?冒頭のようなことが起こるかもしれません。
(参照サイト)
AAAS
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