■ミイラ作成の芸術家~ 寄生バチミイラ・ワスプ (シャキーラ・ワスプ)
最近は新種の生物の学名 (種小名) にファンのアーティスト名を献名するすることも少なくないですが、今回紹介する寄生バチはコロンビアのポップシンガー、シャキーラ (Shakira) の名が献名されたことで注目を浴びました。
アレイオデス科の新種のハチの学名はアレイオデス・シャキラエ (Aleiodes shakirae)、種小名にシャキーラの名があります。
といってもこの時南米エクアドル北部で発見された新種のハチは一挙24種、シャキーラ以外も、ジミー・ファロン (Jimmy Fallon)、エレン・デジェネレス (Ellen DeGeneres)、ジョン・スチュワート (Jon Stewart)、スティーブン・コルベア (Stephen Colbert) 等々が同様に献名されています。
そのほとんどが大物コメディアンですが、アレイオデス科のハチはすべて寄生バチであり、宿主 (寄生される側) となるイモムシはクスリとも笑えないでしょう。
さて、アレイオデス科の特徴は宿主をミイラ化させることで「ミイラを作る蜂 (Mummy-making wasps)」とか「ミイラ蜂 (Mummy wasps)」とも呼ばれます。
それではその生活史を見ていきましょう。
このハチの生活史スタートはメスが特定のイモムシに卵を産み付けるところから始まります。
このスタート寄生バチの王道ですよね。
イモムシの体内でアレイオデスの卵は孵化すると、体内からイモムシの体を食べ進めます。
生かさず殺さずが寄生虫の常套ですが、アレイオデスの幼虫の食べる速度はイモムシの成長速度を上回るほど旺盛なようです。
というのも、アレイオデスの幼虫たちが蛹化する前にイモムシは体内を食べられ過ぎで絶命してしまうからです。
蛹化するギリギリか成虫になるころまで生かしておいて宿主の体を隠れ蓑とするのが信条のはずの寄生虫にとってあるまじき行為です。
ところがこれでいいのです。
イモムシが死んでもさらに食べ続けるイモムシたち、体液一滴残さず行儀よく貪り食うと当然ながらイモムシは干からびてしまいます。
死んでしまっているので新たな水分の摂取はありませんし、体内からは骨の髄までしゃぶられた結果、イモムシは強制的にミイラになる他ありません。
やがてイモムシは完全に干からび硬直し特徴的な体を折ったような形で固まります。
オブジェの完成です。
アレイオデスの幼虫はこのミイラ化しオブジェと化したイモムシの体内で蛹化し、やがて成虫となって飛び立ちます。
このイモムシをミイラ化させるのは、イモムシを捕食している生物に食料としての魅力を失わせ、イモムシが生きているときと比較し狙われる可能性が低くなる、という可能性も考えられます。
なにせ寄生虫は他人の体を乗っ取り気楽な寄生生活を享受できるものの、その宿主が捕食される等で死んでしまった場合、運命を共にする宿命を背負わされていますからね。
ま、アレイオデスのミイラ化の理由は研究が進んでいないので憶測でしかありませんが。
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