■男子は死産か生まれて速攻死亡、それでも滅びない ~ アダクチリディウム
本日は久しぶりにUMAではなく寄生生物シリーズ。
アダクチリディウム (Adactylidium) というダニの仲間で、1属4種知られています。
多くのダニは寄生生活を送るのでそれ自体それほど珍しくありませんし、また今回話題にするアダクチリディウムのライフサイクルは他の寄生虫等に見られる宿主 (寄生される側の生物) に対するマインドコントロールをするわけでもなく、至ってふつうの寄生生活です。
ですが、その生態自体が驚くほど奇妙です。
それではアダクチリディウムの生涯を簡単に見ていきましょう。
アダクチリディウムは主に中東に生息するダニでの仲間で、メスはアザミウマという体長1ミリにも満たない小さな昆虫の卵のひとつにに寄生し、その卵を食べて育ちます。
オスは一切寄生生活を送りません、寄生生活をするのはメスだけです。
オスはどうやって暮らしているかというと寄生生活を送るも何もオスは居ないので寄生する以前のの問題です。
オスがいない?
それは魚類に多く見られる性転換等によりオスが居なくなってしまうという意味ではありません。
アダクチリディウムにもオスとメスの雌雄が存在し生まれながらにオスとメスという別個の性別を持って生まれ、そしてその持って生まれた性を生涯全うします。
つまりオスとして生まれたものはオスとして死に、メスとして生まれたものはメスとして死ぬということです。
そんなに珍しいことではありませんよね、むしろ大多数の生物はこのようなライフサイクルを営みます。
なぜオスが居なくなってしまうのかというととても単純で、アダクチリディウムのオスは死んだ状態で生まれる (死産) か、もしくは生きた状態で生まれても食事することもなければメスと交尾することもなく生まれてすぐに (数時間程度で) 死亡するからです。
こう聞けばアダクチリディウムは単為生殖 (交尾なしでメスが単独で子供を産むこと) する生物と思うでしょう
仮にそうだとすればオスは不要ですが、メスのアダクチリディウムは子供を1度に5~8匹産む中に必ずオスが一匹だけ混じっています。
まあ便宜上「産む」と書きましたが、後述するようにこれは一般的に思い浮かべる「出産」とはかけ離れたものですが。
さて、この生まれても繁殖に全く意味をなさないオスを一匹だけ紛れ込ませる芸当は一体何なのでしょう?
どうせ役に立たないながら、そのエネルギーを生まれてくるメスに分配する方が自然界で有利に働くに違いありません。
しかし「彼」はただの役立たずではなかったのです。
アダクチリディウムの子は母親の子宮内で孵化し、その中で母親の体を内側から食べながら育ちます。
そしてオスは母親の子宮内で一緒に生まれた姉妹全員と交尾し、妊娠させていたのです。
これにてこのオスの役目は終了、そのまま子宮内で死ぬもよし、姉妹たちと一緒に母親の体を貪り外界に出てきて死ぬもよし。
そう、かれらは母親の出産によりこの世界に出てくるのではなく母親を内部から食べつくし体を突き破って出てくるのです。
そしてメスのアダクチリディウムたちは生まれながらに妊娠しているという不思議な生物なのです。
母親は子供たちに貪り喰われもちろん死にますが娘たちは悲観に暮れる暇はありません、寿命僅か数日のアダクチリディウムのメスたちは我先に寄生先のアザミウマの卵を探します。
といっても効率がいいことこの上ありません、交尾相手を探すステージをカットし、寄生する卵だけを見つければいいからです。
無事にアザミウマの卵を見つけたメスはその卵に寄生すると、次世代へとつなぐ子供たちを胎内で育みます。
そう、あと数日後には自分が食べられることを知りながら。
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姉妹と交尾してると遺伝子情報がおかしくならないのかな?
返信削除なんかセツナイ話ですね(泣)
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