2005年、南アフリカ共和国で痛ましい事件がありました。
ある男が2歳の幼児を殺害した罪で逮捕されたのです。
しかもその理由というのがこの幼児は邪悪なインプンドゥルであったからというのです。
このインプンドゥル (Impundulu) とはいったい?
インプンドゥルとは南アフリカ共和国のズールー族 (Zulu) やコサ族 (Xhosa) に伝わる鳥の姿をしたUMAです。
英語ではライトニング・バード (Lightning bird) と呼ばれますが、これはインプンドゥルを英語に訳したものでありどちらも同じ意味です。
名前の通り、稲光 (ライトニング) とともに現れる鳥と信じられており、人間や動物の血を好む邪悪な吸血鳥として知られています。
人ほどもある大きな鳥で羽毛は白黒のモノトーン、一説には羽毛に覆われていないクチバシや尾、足は燃えるような赤色をしているといわれています。
落雷後の地中に空いた穴にはインプンドゥルの卵があるといわれています。
実は前述の部族たちにある実在する鳥がインプンドゥルの正体と信じられています。
その鳥がなにか分かりますか?
前述の通りライトニング・バードを日本語に直訳すると「稲妻の鳥」であり羽毛の色も白や黒と聞けば、そう、大きさはともかく、ライチョウ (雷鳥) のことでは?そう思う人も多いに違いありません。
しかし残念ながら南アフリカにライチョウは生息していません。
それではインプンドゥルと信じられている鳥とはいったいどのような鳥なのか?
(シュモクドリ)
(image credit by Bernard DUPONT/Wikimedia)
ライチョウの代わりにインプンドゥルと信じられているのはシュモクドリ (Scopus umbretta) です。
英名のハマーコップ (Hamerkop) はアフリカーンス語でハンマーヘッド (Hammer head) を意味します。
シュモクドリはアフリカ中部以南、アラビア半島西部に生息する鳥で、シュモク (ハンマー) のようなシルエットの頭部がその名の由来です。
伝説の魔鳥、インプンドゥルはいわば吸血鳥です。
シュモクドリの前に吸血鳥について少しだけ書きましょう。
吸血する鳥といえばやはりハシボソガラパゴスフィンチ (Geospiza septentrionalis) の亜種、通称ヴァンパイア・フィンチ (Geospiza difficilis) が有名です。
(ヴァンパイア・フィンチ)
(image credit by Joseph C Boone)
ガラパゴス諸島のダーウィン島とウォルフ島にのみ生息する雀サイズの小鳥で血液を主食とする唯一の鳥として知られています。
そしてもうひとつ、インプンドゥル伝説のある南アフリカ共和国にも主食とはしませんが血液を吸うことで知られるアカハシウシツツキ (Buphagus erythrorhynchus) が生息しています。
アカハシウシツツキは30センチほどの鳥で、南アフリカに生息、赤いクチバシをしており吸血もするという、まさにインプンドゥルを思わせる鳥です。
いっぽうシュモクドリの主食は魚類や両生類がメインで吸血は行いません。
しかしアカハシウシツツキを差し置いて、インプンドゥルの正体はシュモクドリと信じられています。
その理由はわかりませんが、アカハシウシツツキは魔鳥としてはあまりに小柄過ぎるからかもしれません。
それに対しシュモクドリは足から頭の先まで60センチほどとそれなりに大きく、人間をあまり恐れない威風堂々とした鳥として知られており、もしかするとそういった大胆な習性、そして特異なシルエットが魔鳥としての地位を築いたのかもしれません。
ところで冒頭に書いた南アフリカでの事件、幼児を鳥 (インプンドゥル) と混同するとはどういうこと?と疑問に思った人もいるかも知れません。
これはインプンドゥルには吸血したい生物の姿に変身できる能力があると信じられており、例えば人間をターゲットとする場合、若く魅力的な男性の姿に変身し女性を誘惑して血を吸うといわれていることが理由です。
この男は幼児をインプンドゥルの化身と考えたわけです。
(参照サイト)
the illustrationist
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