2022年6月26日日曜日

ゴビ砂漠に生息する、電撃ワーム ~ モンゴリアン・デス・ワーム


■モンゴリアン・デス・ワーム

復帰したので、スタンダードなUMAも紹介していきましょう。

今回はモンゴリアン・デス・ワーム (Mongolian Death Worm)。

「モンゴリアン」とその名が示す通り、モンゴルのゴビ砂漠に生息すると信じられているUMA (未確認動物) で、直訳すると「モンゴルの死をもたらすイモムシ」みたいな意味です。

モンゴル語ではオルゴイ・コルコイ (olgoi-khorkhoi) と呼ばれますが、これは英語で「ガット・ワーム (Gut Worm)」「ラージ・インテスティン・ワーム (Large Intestine Worm)」と訳され、ぞれぞれ「腸のようなイモムシ」「大腸のようなイモムシ」を意味します。

いずれにしても、まあ「腸」のようにモコモコした形状の生物ということでしょう。

「デス・ワーム (死をもたらすイモムシ)」という物騒な名前も、ワームに触れただけで死ぬ、咬まれたら死ぬ、電撃で殺される、等々、人間をも殺す伝説に由来します。

体長は2~4フィート (約60~120センチ) とバカでかい目撃情報が常套化しているUMAとしてはとっても控えめな大きさ、大きさ的には実在していてもおかしくありません。

といいたいところですが、これがなかなか困難なのです。

モンゴリアン・デス・ワームは伝えられたところではどうやら「ワームのような生物」というより「ワーム」、つまり昆虫の幼虫だったり、ミミズだったり無脊椎動物と信じられているからです。

巨大ミミズのギネス保持者、ミクロカエトゥス・ラピ (Microchaetus rappi) は6.7メートルという大記録を持っていますが、如何せん細い。

ギネス保持者はミミズとしては超極太の直径2センチを誇りましたが、伝えられるモンゴリアン・デス・ワームはもっと寸胴で、人間の腕ほどの太さもあり、まさに「巨大なイモムシ」然としています。

巨大ミミズに確かに道端で出会ったらギョッとするでしょうが怖くはありません。

そもそもミミズが砂漠に生息するのは厳しいでしょう。

さて、モンゴリアン・デス・ワームをもう少し詳しく見てきましょう。

この生物が有名になったのは1922年、アメリカ人探検家ロイ・チャップマン・アンドリュース (Roy Chapman Andrews) 氏が彼の著書「恐竜探検記 (On the Trail of Ancient Man)」で紹介したことにはじまります。

彼はその10年後「中央アジアの新たな征服 (The New Conquest of Central Asia)」で再びモンゴリアン・デス・ワームを取り上げました。

彼の本によれば「モンゴリアン・デス・ワームの生息するのはもっとも荒涼としたゴビ砂漠の西方で、砂に身を潜めていることからめったに目にすることはできない生物」であるといいます。

骨であったり皮であったりといった物的証拠は一切なく、頼れるのはこの生物を目撃したモンゴル人たちの証言のみです。

前述のように、この生物はお世辞にも人間に対しフレンドリーな存在ではありません。

人間にとっても致死性の猛毒を有しており、この生物を触れただけでもその毒で死ぬばかりか、猛毒を噴射したり、あるいはデンキウナギさながらの電撃による攻撃が可能であるため離れていても (デス・ワームから数メートル内は攻撃範囲とも) 危険な存在であるといいます。

著名なイギリス人未確認動物学者、カールー・シューカー (Karl Shuker) 氏が集めた情報によれば、モンゴリアン・デス・ワームの姿は「どす黒い血液で満たされた牛の腸」のような姿をしていると自身の著書、"The Beasts That Hide From Man" で語っています。

また、シューカー氏によれば、この生物は、一見しただけでは頭部に目も鼻孔も口も確認できない上、尾がちょん切られたように短いことから、頭部と尾部の区別もつかないといいます。

前進する方法も奇妙で、転がったり体を左右によじったりしながら進むといわれ、それを「前進する」という表現が的確かどうかも怪しいほどで、おそらく地上での動きはかなり制限されており、このことからも地中の生物と考えて問題なさそうです。

さて、こんな生物が存在するでしょうか?

ワームのような無脊椎動物で人間を襲うほど巨大な陸生生物は夢はありますがあまり現実的ではありません。

無難に未知の脊椎動物、その中でも陸生で細長い生物の多い爬虫類がやはり候補としてはうってつけでしょう。

さすがに空気中を稲妻さながらの電気ショック攻撃は厳しそうですが、毒を飛ばすというの攻撃・防御は既知の動物でも知られていることであり、特にアフリカに生息するドクハキコブラ (リンカルス, Hemachatus haemachatus) はそれを代表する生物です。

体長は1メートル前後、毒性はそこまで強くはありませんが、咬んでよし、離れている敵には毒を飛ばしてよし、体型、体長、習性等、モンゴリアン・デス・ワームとの共通点も多い生物です。

未発見のドクハキコブラがモンゴリアン・デス・ワームの正体であったとしても理にかなっているといえます。

但し、自然の動物を見慣れているモンゴルの住人たちがヘビをワームと混同するか?というとそこはやや疑問の余地はあります。

そんな中、ヘビとしてはその候補としてマダラスナボア (Eryx miliaris) が挙げられています。

(マダラスナボア image credit by Public Domain)

中央アジア・南アジアを中心とした砂漠地帯にも生息し、首のくびれがあまり目立たないことから、頭部と胴体の境目が不明瞭、かつ目もあまり目立たないため、通常のヘビと比較するとよりワームに見えるかもしれません。

メスで4フィート (約120センチメートル)、オスは約その半分の2フィート強、ワーム状の体型、そして体長はモンゴリアン・デス・ワームの正体候補としてうってつけです。

但し、無毒であり、人間を襲うこともありません。

ドクハキコブラの特性を兼ね備えたマダラスナボアのようなヘビがゴビ砂漠に生息しているなら、それはきっとモンゴリアン・デス・ワームの正体でしょう。

それからもうひとつ、巨大ワーム系生物の誤認といえばこれ!といえるミミズトカゲの仲間も候補に入れておきましょう。

(大きさも姿もミミズそのもの、ミミズトカゲの一種)
(image credit by Wikicommons/Kerstin Engelking)

ミミズトカゲ類は手足や目までも退化してしまって、とても小柄なものが多く本物のミミズにしか見えないものも多いトカゲの仲間です。

とはいえれっきとした脊椎動物であり、最大種であるシロハラミミズトカゲ (Amphisbaena alba) は80センチにもなり、先に挙げたマダラスナボアとは比べ物にならないほど「ワーム」そのものです。

(シロハラミミズトカゲ)
(image credit by Wikicommons/Public Domain)

まったくの無毒ですが、シロハラミミズトカゲのような巨大ミミズトカゲの未知種がゴビ砂漠に生息していたら?

あまりに奇妙な生物ですから伝えられるモンゴリアン・デス・ワームのような伝説が出来上がっても不思議ではないでしょう。

(参照サイト)

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1 件のコメント:

  1. 雨期に出現するってところミミズっぽいですね。個人的にはフルグライトや神秘的な蛇のイメージの複合かなと思ってます。

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