UMA (未確認生物) のジャンルに「テレポート・アニマル (Teleport animals)」というものがあります。
テレポート・アニマルとは「その動物自体は既知生物」であるものの本来生息していない (はずの) 地域で目撃される生物の総称で、つまり、「どこか他の地域からテレポートでもしてきたような生物」を指す和製英語です。
英語圏では日本でいうテレポート・アニマルのことを「ファントム〇〇」とか「ゴースト〇〇」呼びます。
「ファントム・カンガルー」や「ファントム・カモノハシ」なんかが有名かな。
んで、分かり易く極端な例と挙げると、例えばパンダ。
パンダ (Ailuropoda melanoleuca) は野生としては中国にしか生息していませんが、もし日本のどっかの山奥で目撃されたとしたら、パンダ自体は既知の動物ですが日本に生息するはずもなく、また完全に頭数管理されているため動物園から脱走したとは考えられません。
そういうわけで日本の野生下でもしパンダが目撃されたとしたら、それはUMA用語でテレポート・アニマルと呼ばれるわけです。
有名かどうかはわかりませんが、日本のテレポート・アニマルとしては「和歌山のライオン」や「真山のカンガルー」なんかがその典型的なものといえるでしょう。
和歌山のライオンは今から50年以上前の1971年の話で、和歌山県和歌山市で警官がメスライオンに酷似した生物を目撃した事件です。
ライオン自体は既知の動物ですが日本に生息していません、というわけでテレポート・アニマルとなるわけです。
「和歌山のライオン」について詳しくはまたの機会にしましょう。
さて、今回の話題は「ブンゴニア・ベア (Bungonia Bear)」です。
日本では聞きなれない単語、ブンゴニア (Bungonia) とはオーストラリアのニューサウスウェールズ州にある人口500人にも満たない小さな町の名前で、先住民族であるアボリジニの言葉で「砂の小川 (sandy creek)」を意味します。
つまり「ブンゴニア・ベア」とは「ブンゴニアのクマ (熊)」の意味です。
(フレーザー島のディンゴ)
(original image credit by Wikicommons)
もともとオーストラリアはコウモリ (オオコウモリ) を除けば哺乳類のそのほとんどは有袋類、古くは数千年前に人間が持ち込んだ野犬、ディンゴ (Canis lupus dingo) がいるものの、ネズミやウサギ、ラクダ等の外来哺乳類が爆発的に増えたのヨーロッパの移民たちが持ち込んだものではわりと最近の話です。
というわけで本題。
ブンゴニア、というよりオーストラリア大陸にクマは生息していません。
つまりブンゴニア・ベアは、それが本当にクマであるとしたらテレポート・アニマルとなるわけです。
今でも多くの自然がそのまま残されているというブンゴニア、その小さな町は険しい峡谷に挟まれているといいます。
しかも今から半世紀ほど前のブンゴニアであればさらに自然豊かだったことでしょう。
1964年8月、そのブンゴニアでこの辺では見慣れない奇妙な生物が目撃されました。
開発が行き届いた地域ではないため未発見の動物が目撃されてもそれほど驚くことではありません。
しかしそれが「クマ」に似ているとしたら?
1960年代といえばヨーロッパからの移民たちがタスマニア島に残っていた食物連鎖の頂点に君臨するタスマニア・タイガー (Thylacinus cynocephalus) すら害獣として狩りつくし、我が物顔で意気揚々としていた時代です。
そんな時代にタスマニア・タイガーよりも大きな哺乳類、しかもクマを目撃?
目撃したのはブンゴニアに住む地元のハンター、ピーター・ホワイト (Peter White) 氏。
しかもホワイト氏の目撃が単なる勘違いでないことを証明するかのように、その後続々とブンゴニア・ベアの目撃者が現れ、わずかな住民しかいないブンゴニアでホワイト氏を含め合計10人の人々がこの「クマ」を目撃することになり、当時の紙面を賑わせました。
(巨大ウォンバットこと復元されたディプロトドン)
体長は3メートル超、体重約3トン、巨大なウォンバット (Vombatus ursinus) と形容されるその姿はシルエット的にはまさに「クマ」といえます。
ブンゴニア・ベアもディプロトドン生存説に結び付けてこのお話は締めましょう、、、
ところが、そこで話は終わりません。
まるでブンゴニア・ベアの目撃に呼応するかのように、この地に住む農夫リース・テイラー (Reece Taylor) 氏は所有する20頭の子羊、そして3頭の羊を立て続けに失ったのです。
犯人は謎のクマ、ブンゴニア・ベアでは?
そう思う間もなく、なんとテイラー氏はその「犯人」を射殺することに成功したのです。
それはブンゴニア・ベアが初めて目撃されてから2ヶ月経った1964年10月のことでした。
それ以来、ブンゴニア・ベアの目撃も所有する家畜を失うこともなくなったことから、射殺された「それ」こそが犯人であったことは疑いようもありません。
リース氏によれば、射殺された「それ」はディンゴとジャーマンシェパードの交配種を思わせる、まるでクマのような生物だったといいます。
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