今回はアイルランドのUMA、ドアーチュ (Dobhar-chú)。
ドアーチュはアイルランド語で単に「カワウソ」を意味する単語ですが、UMAとしてのドアーチュはただのカワウソではありません。
ドアーチュの姿は諸説ありますが、基本的には巨大なカワウソ、もしくは巨大なカワウソと犬のハイブリッド的な姿をしているといわれ、体長は7~15フィート (約2.1~3.5メートル)、真っ白な毛で全身が覆われており背中に黒い十字模様があるともいわれています。
上記のような容姿から、英語ではキング・オッター (King otter 「カワウソの王」) やウォーター・ドッグ (Water dog 「水犬」) と呼ばれます。
非常に獰猛であるといわれており人間、そして犬に対しては特に攻撃的で、集団で襲ってくるといいます。
こんな話があります。
アイルランド北西部のグレネード湖 (Glenade Lough) のすぐ近くにグレース・マクグロイリン (Grace McGloighlin) という女性が夫テレンス (Terence) とふたりで暮らしていました。
ある日のこと、グレースはいつものように洗濯をしにひとりで湖へと出かけていきました。
平和な日常。
ところがその日は違いました、家にいたテレンスの耳にグレースの悲鳴が飛び込んできたのです。
ただ事ではないと短剣を持って家を飛び出し馬に乗って湖へと急ぎました。
しかし時既に遅し。
そこには血まみれになり変わり果てたグレースがあったのです。
そして彼女のすぐそばには巨大なカワウソ、ドアーチュの姿が。
テレンスはドアーチュに飛びかかると持ってきた短剣を突き刺して殺しましたが、今度は別のドアーチュが湖から飛び出しテレンスに突進してきます。
不意を突かれ恐怖に陥ったテレンスは馬に飛び乗ると、ドアーチュの追跡から逃れるべく何マイルも走りました。
しかしドアーチュはどこまでもどこまでも執拗に追ってきます。
そんな終わりのない逃亡劇もついに終わりの時を迎えます。
テレンスの行く手を砦が塞いでいたのです。
万事休す。
ドアーチュがテレンスに追いつくのも時間の問題です。
しかしそこはカシェルガーラン (Cashelgarron) の賢者にして鍛冶屋の男の鍛冶場だったのです。
男はテレンスに駆け寄るとドアーチュを倒すべく剣を手渡し仕留める方法を伝授します。
テレンスは男の言葉に従いドアーチュを倒すことに成功しました。
、、、と、最後は完全におとぎ話ですがグレースのお墓はコンウォールの墓地に実在します。
1722年9月22日にドバーチュによって殺されたといわれているグレース・マクグロイリンですがその名はグレース・コノリー (Grace Connolly) もしくはグラーニア・コノリー (Gráinne Connolly) と諸説あります。
さてドアーチュとは一体なんなのか?
アイルランドに生息するカワウソは絶滅した (と考えられている) ニホンカワウソ (Lutra nippon) とほぼ同じユーラシアカワウソ (Lutra lutra) で体長は大きくても70センチ程度、尾を含めてやっとこ1メートルに届くといったところで、体重も12キロ程度しかありません。
ドアーチュの体長を2メートル前後を最低ラインとすれば明らかに物足りません。
しかし現世最大のカワウソ、南米に生息するオオカワウソ (Pteronura brasiliensis) であれば体長は1.4~1.7メートル、体重30キロオーバーと桁違いに大きくドアーチュの正体としてもまあ悪くはありません。
(オオカワウソ)
しかも社会性を営み、集団で獲物を狩るという習性もドアーチュを彷彿とさせます。
大きさ的にはちょっと不満ですが、未発見のオオカワウソの亜種がアイルランドに実は生息している (いた)、という可能性は「UMAとしては」という注釈付きであればそれほど突飛ではありません。
さらにこの種のアルビノであればまさにドアーチュということになります。
これほど巨大な哺乳類が今の今まで発見されていなかったというのであれば大ジュースになること必至ですが、UMAファンとしては今ひとつ心がときめかないかもしれません。
そう、UMAファンは化け物じみたものを見たいのです。
そういうわけでUMAファンの心をときめかせるには絶滅種の力を借りるしかありません。
候補は320~340万年前のエチオピアに生息していた巨大カワウソ、エンヒドリオドン・ディキケ (Enhydriodon dikikae) です。
頭骨や上腕部等、部分的にしか骨が発見されていないことから研究者により推定値にも幅がありますが、最大で体長は7フィート (2.1メートル) 超え、非常にガッシリとした体躯から200キロ以上にも成長したのではないかといわれています。
もはや完全にクマサイズのカワウソです。
半水生と考えられていますが、陸生と考える研究者もいます。
南米のオオカワウソは体重30~40キロ程度でもかなり怖い存在ですから、エンヒドリオドンが現代に蘇れば生身の人間では太刀打ちできず殺られるのみです。
まさにドアーチュ。
ドアーチュの正体がエンヒドリオドン (の子孫) であればみなさんUMAファンも満足いただけることでしょう。
(参照サイト)
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