■鹿の角をもつウサギ ~ ジャッカロープ
北米の民間伝承系UMAの総称、フィアサム・クリッター (Fearsome Critters) の中でももっとも有名なもののひとつ、ジャッカロープ (Jackalope) です。
UMAでありながら写真はおろか、剥製までも存在する珍しい存在です。
ジャッカロープという名は、アンテロープ (Antelope) のような角を持つジャックウサギ (Jackrabbit) に由来します。
ジャックウサギは北米を中心にカナダやメキシコにも生息する大型の野ウサギの仲間の総称で、その中にはアンテロープ・ジャックウサギ (Antelope jackrabbit / Lepus alleni) という名の、ジャッカロープの名前の由来となったアンテロープを冠したものも存在します。
ちなみにアンテロープ・ジャックウサギは、ジャックウサギ最大にして北米最大のウサギで、その成体は4キロ以上に達します。
ジャックラビットの仲間はその体に対し、相対的に耳がとても長いのが特徴です。
ロバ (オスのロバ) のことをジャッカス (Jackass) といいますが、ジャックウサギの「ジャック」は「ロバの耳をもつウサギ」から来ているといいます。
つまり「ジャッカロープ」という名前の、すべての由来をまとめると「鹿のような角を生やしたロバの耳を持つウサギ」となります。
分かりにくいですが、ジャックウサギ自体は正真正銘の実在する野生動物です。
そんな言い方をするとジャッカロープは実在しないのね?となりますが、まあ、そこはなんというか、、、アレです。(笑)
(ジャッカロープの剝製)
(image credit by Wikicommons)
さて、ジャッカロープを見ていきましょう。
ジャッカロープは一般的にアメリカ、ワイオミング州、コンバース郡ダグラスのUMAとして知られています。
人間の声を模倣したり、その母乳は媚薬として効果あるといわれたり、UMAらしいエピソードもたくさんあります。
一般的に知られるジャッカロープの2本の角は「ジャッカロープ」の名前の由来ともなった「アンテロープ (レイヨウ)」のイメージに反し、枝分かれしたプロングホーン (Antilocapra americana) と似た角を持ちます。
前述の通り、ジャックウサギは大きな耳を持つウサギですが、角はそんな大きなジャックウサギの耳よりもはるかに大きなものです。
ちなみに、ジャッカロープと同じく角を持つ謎のウサギ、アルミラージ (Al-Mi'raj) と似ていますが、アルミラージはユニコーンのように額からまっすぐに伸びた1本の角をもつという点で異なります。
話を戻しましょう、でもジャッカロープって写真や、それどころか存在を証明する物的証拠である剥製も存在するのでしょう?という人もいると思います。
確かに。
ジャッカロープの剥製はいくつも存在しますが、もともとは1930年代、狩猟家であり剥製師であるへリック兄弟によるイタズラから始まったと考えられています。
彼らはこの手法により、何体ものジャッカロープを「生産」し、地元のホテル等のお土産物として「出荷」していました。
ジャッカロープの「都」がワイオミング州ということを考えると、生息域の広くワイオミング州にも生息するオグロジャックウサギ (Lepus californicus) が当時剥製に使用されたそのジャッカロープの「正体」のひとつとえいます。
しかし実際のところ、ワタオウサギ (cottontail rabbit) が剥製に使われていたのも判明しており、角の持ち主も様々。
なにせ北米のUMAですがイギリスでもジャッカロープは「生産」されていたともいいます。
このように名前とは裏腹にウサギの種類も角の種類もジャックウサギでもなければアンテロープでもなく、よくよくみるととても「個体差の激しいUMA」なのです。
とはいえ、群れを成して生息しているところを目撃した等、目撃情報もあるのまた真実。
これについては以前「ジャッカロープが発見された」とニュースにもなった、ウサギ乳頭腫ウイルスに侵された個体の頭部にできる腫瘍が、角のように見えたことが原因ではないか、ともいわれています。
但し、このウイルスに侵されたウサギは確かに角状の突起物のようなものが顔から生えていますが、見ていて痛々しく伝えられるジャッカロープの優雅さはありません。
やはりその目撃情報は謎のままです。
ひとつだけはっきりいえるのは、このジャッカロープ伝説により災難を被ったのはウサギたちということです。
なにせ、ジャッカロープの剥製は数十万体も制作されたといわれているのですから。
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