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2020年1月22日水曜日

人間を殺すためだけに生まれてきたクモ ~ シドニージョウゴグモ


■人間を殺すためだけに地球に送り込まれたクモ ~ シドニージョウゴグモ

オーストラリアでは最近、雨天後に暑い日が続いたことにより致死性のジョウゴグモにとって理想的なコンディションとなったことで大量発生し問題になっているといいます。

今回はジョウゴグモの中からシドニージョウゴグモ (Atrax robustus) を取り上げたいと思います。

ジョウゴグモは漏斗 (じょうご) 状の巣を作ることからこの名で呼ばれます。

和名の通りシドニーを中心に生息し、英名のシドニー・ファンネル・ウェブ・スパイダー (Sydney funnel-web spider 「シドニーの漏斗状の巣を作るクモ」) は和名と全く同じ意味です。

ちなみに、オーストラリア原産のジョウゴグモ科 (Atracidae) のクモはオーストラリアン・ファンネル・ウェブ・スパイダーと総称され、シドニージョウゴグモはそのうちのひとつです。

ジョウゴグモ科のうちアトラクス属 (Atrax)、ハドロニュケ属 (Hadronyche) は毒性が強く、ジョウゴグモ科 (Atracidae 「アトラキデ」) に属すクモであることからかれらの毒はアトラトキシン (atracotoxins) と総称されます。

シドニージョウゴグモの毒は神経毒のデルタ・アトラトキシン (Delta atracotoxin) でロブストキシン (robustoxin) とも呼ばれます。

このシドニージョウゴグモは世界最強毒グモのひとつに数えられ、嘘か真か咬まれて10分で死に至ったケースもあるとか。

大きいもので体長5センチ程度ですが足が太くそして長く、見た目には非常にボリュームのあるクモです。

メスのほうが大きくなりますが、毒性はオスのほうが遥かに強く、その毒性はメスの6倍ともいわれています。

ただしオスであっても若年個体は毒が弱く危険な存在ではありません。

シドニージョウゴグモによる死亡事故と確実に分かっているものは14件報告されており、そのうち咬んだ個体が分かっているものはすべてオスだといいます。

このように人類とってシドニージョウゴグモは超絶危険な存在ですが、なんとこの毒 (デルタ・アトラトキシン)、霊長類以外にほとんど効果がありません。

霊長類以外で効果があるのはせいぜいモルモットとラットぐらいで、他の哺乳類、たとえばネコやウサギにもほぼ効果がないことが分かっています。

それどころかかれらの主要な獲物である昆虫・カエル・トカゲ等にすらまったく効かず、まるで人間に狙いを定めて誕生したかのような毒グモです。

ところでシドニージョウゴグモは別段人間に対し攻撃的な性質ではないのですが、水にひきつけられる性質があり、郊外にあるプール等によく落ちることが知られています。

やっかいなのは水中に落ちても数時間から長くて24時間死なないため、それゆえプール遊びの子供たちが咬まれるケースがとりわけ多いといわれています。

さてそんな危険なクモですが、血清が開発されてからというもの犠牲者は激減し、特に1982年以降、死者は出ていないといいます。

とはいえ、強烈な神経毒を持ち合わせていることには変わりはなく、刺されたときはかなりの痛みを伴い、死なないまでも特に子供は重症化することもあり、決して油断の出来るクモでないことを肝に銘じておきましょう。

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