昆虫界随一のクモ狩りの名手、ベッコウバチ。
ベッコウバチ界最大にして世界最大のハチ、オオベッコウバチにいたっては世界最大のタランチュラ、ゴライアス・バードイーター (ルブロンオオツチグモ) に圧勝するほどクモ狩りに長けています。
どのベッコウバチも狩ったクモは子供のエサにするためで、成虫自体は花の蜜などをエサとしクモを食べることはありません。
ベッコウバチは地中に子供のための巣を作り、そこに狩ったクモを引きずり込んで卵を産み付けます。
母親は巣穴から出ると穴をふさぎ密閉し、卵から孵った幼虫は安全な地中で母親が用意してくれたクモを食べて大きくなります。
そんなベッコウバチの仲間に、クモに加えアリも狩るボーン・ハウス・ワスプ (bone-house wasp, "Deuteragenia ossarium") がいます。
このハチの子供もクモを食べますが、アリは子供も幼虫も食べません。
しかもボーン・ハウス・ワスプはアリの中でも咬む・刺す等、強力な武器を備えた特に獰猛な種 (その中でも Pachycondyla astuta が多い) を好んで狩るといいます。
食べもしない獰猛なアリを命がけで狩るのはなぜでしょう?
ボーン・ハウス・ワスプの地中の巣を見てみると、複数の小部屋があります。
パーティションで区切られた各部屋には1匹のクモと1匹の幼虫がセットで入っており、地中に一番近い小部屋だけクモも幼虫も入っていません。
(一番左側の小部屋のみアリの死骸、他はボーン・ハウス・ワスプのサナギ)
(image credit by PHYS.ORG)
その代わり、その小部屋にはアリの死骸がぎゅうぎゅう詰めに入っており、まるでアリの墓場です。
実はこれ、死んだアリを幼虫たちの門番として雇っているのです。
しかし死んだアリが門番になるのか?
それがなるのです。
昆虫界最強のバーバリアンであるアリを入り口近くに配置することにより、ボーン・ハウス・ワスプの子供たちを狙う捕食者が格段に少なくなることが分かっています。
アリの臭いがボーン・ハウス・ワスプの臭い消しとしてカムフラージュ効果があるうえ、獰猛なアリが潜んでいると勘違いさせて天敵を近づけさせないダブル効果のようです。
アリに擬態する等、アリの嫌われっぷりを利用する生物は沢山いますが、ボーン・ハウス・ワスプの殺したアリを門番にするという発想もなかなかです。
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