■オスとエサの区別がつきません ~ タランチュラコモリグモ
日本でもすっかり有名になった外来種、セアカゴケグモ。
セアカゴケグモの「ゴケ」とは現在では差別用語 (不適切用語)になっている「後家」さんのこと、つまり「旦那さんに先立たれてしまった女性」のことです。
セアカゴケグモという和名は英名のレッドバック・ウィドウ・スパイダー (Redback widow spider) を直訳したもので、英名も全く同じ意味 (「背中の赤い旦那さんに先立たれてしまったクモ」) です。
この名は、交尾後にオスグモを食べてしまい旦那さんがいなくなってしまうことに由来します。
旦那さんがいなくなる理由が「先立たれる」といった受動的なものではなく「先立だせる」という能動的、自分のせいです。
さて今回の主役タランチュラコモリグモ (Lycosa tarantula)、こちらも旦那さんが片っ端からいなくなってしまうクモです。
タランチュラコモリグモはイタリアに生息するクモで、その名の通り子供たちが巣立つまで子守をするコモリグモの仲間ですが、名前に反してタランチュラ (オオツチグモ) の仲間ではありません。
タランチュラコモリグモもメスがオスを食べてしまいます。
交尾後にオスを食べる行為は、用済みになったオスがメスの栄養となり次世代に自らの遺伝子を残せる確立が高めるため、食べられたオスにとってもあながち無念な最期とはいえません。
しかしタランチュラコモリグモは交尾前にオスを食べるという画期的な方法を取ります。
タランチュラコモリグモのメスには「獰猛なメス」と「それほど獰猛でないメス」に分けることが出来るといいます。
獰猛なメスは食欲旺盛で成長も早くそれに伴い性成熟するのも「獰猛でないメス」に比べて早いといいます。
さてこの2種類のメスに飼育下でオスをプレゼントした場合どうなるか?
「獰猛でないメス」は選り好みし、自分のタイプであれば交尾し、そうでなければ交尾せずに捕食してしまったといいます。
いっぽう「獰猛なメス」は100%交尾せずにオスを食べてしまいました。
それでは「獰猛なメス」は子孫を残せないのか?というと、そうではありません。
前述したとおり、「獰猛なメス」は「獰猛でないメス」よりも性成熟するのが早いため、「獰猛でないメス」が性成熟するまではライバルも少ない状態です。
その状態ではオスの数も豊富であり、交尾にやってきたオスを片っ端からエサとして捕食しても平気です。
しかし「獰猛でないメス」たちも性成熟し始めライバルが増えてくると、ちゃんと好みのタイプを選別して交尾をします。
つまり確信犯で食べていたわけなんです。
(参照サイト)
National Geographic
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