日本でもすっかり有名になった外来種、セアカゴケグモ。
セアカゴケグモの「ゴケ」とは現在では差別用語 (不適切用語)になっている「後家」さんのこと、つまり「旦那さんに先立たれてしまった女性」のことです。
セアカゴケグモという和名は英名のレッドバック・ウィドウ・スパイダー (Redback widow spider) を直訳したもので、英名も全く同じ意味 (「背中の赤い旦那さんに先立たれてしまったクモ」) です。
この名は、交尾後にオスグモを食べてしまい旦那さんがいなくなってしまうことに由来します。
旦那さんがいなくなる理由が「先立たれる」といった受動的なものではなく「先立だせる」という能動的、自分のせいです。
さて今回の主役はイタリア南部のターラント (Taranto) やプーリア (Apulia) に棲息するタランチュラコモリグモ (Lycosa tarantula)、名前に反しタランチュラ (オオツチグモ科, Theraphosidae) の仲間ではありません。。
これは過去にタランチュラの仲間に分類されていたことがその理由で、英語圏では現在タランチュラ・ウルフ・スパイダー (tarantula wolf spider) とも呼ばれます。
和名からくる心地よい「子守り」という単語は母性本能が強く天敵から子供たちを守る強き良き母のイメージが伝わってきます。
実際、子供たちが巣立つまで子守りをするコモリグモ科 (Lycosidae) のクモです。
しかし、まあ話の流れからもわかる通り、こちらも旦那さんが次々と謎の失踪を遂げてしまうクモの仲間です。
実際のところ謎の失踪でもなんでもなくメスがオスを食べてしまうだけではありますが。
実際のところ謎の失踪でもなんでもなくメスがオスを食べてしまうだけではありますが。
メスが交尾後にオスを食べる行為は、用済みになったオスをメスの体に栄養素として取り入れ次世代に自らの遺伝子を残せる確立が高めるため、食べられたオスにとってもあながち無念な最期とはいえません。
しかしです、タランチュラコモリグモは「交尾前にオスを食べる」という画期的な方法を編み出しました。
タランチュラコモリグモのメスには「獰猛なメス」と「それほど獰猛でないメス」に分けることが出来るといいます、先天的な遺伝子の違いでしょうか。
「獰猛なメス」は「獰猛でないメス」より食欲旺盛で成長が、当然、性成熟に要する期間も短くなります。
さてこの2種類のメスに飼育下でオスをプレゼントした場合どうなるか?
「獰猛でないメス」は選り好みし、自分のタイプであれば交尾し、そうでなければ交尾せずに捕食してしまったといいます。
いっぽう「獰猛なメス」は100%交尾せずにオスを食べてしまいました。
それでは「獰猛なメス」は子孫を残せないのか?というと、そうではありません。
前述したとおり、「獰猛なメス」は「獰猛でないメス」よりも性成熟するのが早いため、「獰猛でないメス」が性成熟するまではライバルが少ない状態です。
その状態ではオスの数も豊富であり、交尾にやってきたオスを片っ端からエサとして捕食しても平気です。
しかし「獰猛でないメス」たちも性成熟し始めライバルが増えてくると、ちゃんと好みのタイプを選別して交尾をします。(※結局こっちも食べるんだけど)
つまりライバルのメスの数が少なく、逆にオスはまだまだたくさんいるから食べても平気、と確信犯で食べていたわけなんです。
(参照サイト)
National Geographic
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