(original image credit by Sean Linehan)
■ポーランド王に謁見したといわれる謎の司教魚 ~ ビショップ・フィッシュ
主に16世紀のヨーロッパでのみ目撃された謎の生物、ビショップ・フィッシュ (Bishop fish)。
16世紀動物学の草分け的存在、スイスの博物学者コンラート・ゲスナー (Conrad Gesner) の著書「動物誌 (Historia animalium)」(全4巻) の4巻に登場したことで後世までその名を残します。
「ビショップ・フィッシュ」
直訳すれば「司教 (司祭) の魚」
シー・ビショップ (Sea bishop) やシー・モンク (Sea Monk) と呼ばれる場合もあります。(意味はどれもほぼ同じ)
言葉の響きから受けるイメージとは異なり、決して魚類的でもなければ人魚や半魚人的でもありません。
少なくともビショップ・フィッシュは人間に恐怖を与える存在ではありません。
その姿は、司教と魚のハイブリッドというよりは「魚の着ぐるみを身につけた人間」と言ったほうがしっくりきます。
しかし彼らが人間の言葉を話した記録は残っておらず、あくまで「司教の姿をした動物」と考えるのが一般的です。
幾度か人類の前に姿を現したビショップ・フィッシュですが、人間に捕らえられた記録も残っています。
人々はビショップ・フィッシュを決して魚 (や怪物) のようには扱わず、人間、それも崇高な司教として丁重に扱いました。
1531年に捕らえられたビショップ・フィッシュは当時のポーランド王、おそらくはジグムント1世 (Zygmunt I Stary) のことでしょう、に謁見したといわれています。
また、当時のカトリック教徒の司教たちの元へと運ばれると、言葉を発せぬ (もしくは理解できない) ビショップ・フィッシュは司教たちに向かって身振り手振りで釈放を懇願したといい、司教たちはその願いを聞き入れ海へ解放したといいます。
ビショップ・フィッシュはそのお礼に司教たちに向かって手で十字を切ると海の中へ消えていきました。
ここまで読んだ感想は?
おそらくはその内容はまるでおとぎ話であり、現実感が伴わないと思ったことでしょう。
しかしゲスナーの描いたビショップ・フィッシュの挿絵をよくよく見てみると、当時の人々が見慣れぬ魚を「司教の魚」として認識してしまった可能性を見いだせるかもしれません。
尖った頭部、そして足に向かって幅広のマント、鱗に覆われた体表。
シルエットだけを見ればエイ、人間ほどもあることから大型のエイ (マンタの幼体含む) の仲間、もしくはカスザメ、頭部の形状から大型のイカ (ダイオウイカ、ダイオウホウズキイカ、ニュウドウイカ) 等がその正体として候補に挙げられています。
(カスザメ)
その中で特にカスザメがもっとも有力と言われていますが、あくまで既知動物の中で「有力」というだけであって実際のところは分かりません。
そうそう、ビショップ・フィッシュは個性豊かな生物でもあるんです。
上記のように自らの解放を求めたものもいれば、1531年、ドイツ沖で捕獲されたビショップ・フィッシュのようにとてもとてもプライドの高い個体も存在しました。
自身を捕らえた人間たちを下等な生物と見下したのでしょうか、そんな愚かな人間たちから差し出された食事を拒み続けて3日間、ついには力尽き、絶命したと記録が語っています。
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿