今回は空飛ぶカエルの話、とはいっても実在する水かきの被膜を使って滑空できるトビガエル (flying frog) たちではなくUMAのほうです。
トビガエルについてはまたの機会に。
(マラバルトビガエル (Rhacophorus malabaricus))
ウェールズの神話に登場するサムヒギン・ア・ドゥル (Llamhigyn Y Dwr)。
サムヒギン・ア・ドゥルという呼び名はウェールズ語ですが、英語ではウォーター・リーパー (Water leaper) と呼ばれます。
サムヒギン・ア・ドゥルは湖に生息する生物で、翼を使って水を跳び (leap) 越えることができるためこの名で呼ばれます。
サムヒギン・ア・ドゥルは簡単に言えば「翼を持つカエル」で翼の形状はコウモリのそれに似ています。
翼を持つ代わりに四肢はなく細長い尾の先端には毒針を有します。
体長は子犬から人間ほどと諸説ありますが、通常のカエルより遥かに大きいことは確かです。
肉食性で主に魚を食べるといいますが、大型のものとなると水際に近寄ったヒツジや牧羊犬、果ては人間まで襲って食べると言われています。
神話・民間伝承の生物のためその特性は「なんでもあり」ですが、この生物の姿に似た生物は実在します。
有翼のUMA、特にコウモリのような翼を持ったもの正体は大抵がオオコウモリと考えられます。
しかしサムヒギン・ア・ドゥルにおいてはそうではなく、その候補としてバットマン・スティングレイ (Batman stingray) を挙げたいと思います。
バットマン・スティングレイはエイの突然変異体であり特定の種を指すものではありません。
(バットマン・スティングレイ)
以前にもエル・スエロの記事でちょっと触れましたが、通常左右の胸ビレが繋がってウチワのようなシルエットの淡水エイですが、突然変異体は体 (頭部・胴部) と胸ビレの間に切れ目が入ることで、胸ビレがコウモリの翼のようなシルエットとなります。
バットマン・スティングレイと呼ばれるのも納得でしょう。
日本では単純にバットマンと呼ばれることが多いようです。(「スティングレイ」はアカエイ科の総称です)
また吻部 (ふんぶ) の欠落により頭部が丸みを帯びるため、頭部のみを見ると通常の硬骨魚類 (例えばハゼ目) や両生類のような印象を受けます。
その個性的なルックスはマニア間で人気が高く非常に高額で取引されています。
ただしバットマン・スティングレイは野生下ではほとんど見られないといいます。
これは吻部の欠落や胸ビレの切れ目により正常個体と比べ採餌において著しく不利と考えられており、野生下ではなかなか大きくなるまで成長できないからです。
ちなみに海外ではバットマンではなくバタフライ (Butterfly「蝶」) と呼ばれる場合もありますが、ツバクロエイの仲間 (Gymnura) はバタフライ・レイ (Butterfly ray) と呼ばれ紛らわしいのでバットマンと呼んだほうがいいでしょう。
(トゲナシツバクロエイ)
サムヒギン・ア・ドゥルに話を戻しましょう。
サムヒギン・ア・ドゥルのもうひとつの特徴、尾の先端の毒針も、もちろんバットマン・スティングレイもエイですから尾部 (先端ではない) に毒針を持ちます。
左右に分かれたコウモリの翼のようなヒレ、カエル (両生類) を思わせる頭部、尾部の毒針、まさにバットマン・スティングレイはサムヒギン・ア・ドゥルの姿そのものです。
イギリス原産の淡水エイはいませんが、バットマン個体は海生のものでも見られるため、もしかするとそういった個体からヒントを得てサムヒギン・ア・ドゥルは誕生した可能性もありえます。
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