■ハイブリッド・レイク・モンスター ~ アヴァンク (アファンク)
ウェールズに伝わる怪生物アヴァンク (アーヴァンク, アファンク, Afanc / アザンク, アダンク, Addanc)。
レイク・モンスターでビーバーやカモノハシ、ワニ、ドラゴン、もしくはそれらのハイブリッド的姿をしているといわれますが、ウェールズ語でアヴァンクがビーバーを指す単語であることから、元来はビーバーに似ているものだったのでしょう。
アヴァンクにはたくさんの逸話があり、古いものは15世紀にまで遡ります。
いずれの逸話もアヴァンクは非常に凶暴で人間にとって敵対的な存在です。
しかし乙女だけには違うようです。
アヴァンクは人間の乙女を好み、乙女を前にするととても従順になるといわれています。
こんな話があります。
ある日のこと、アヴァンクは美しい乙女の膝の上で、彼女が歌う子守唄に聞き惚れすっかり安心し迂闊にも眠ってしまいました。
彼女はアヴァンクに魔法をかけるつもりでしたが、村人たちは物陰から出てくると、眠っているアヴァンクを鎖で縛りあげてしまいました。
目覚めたアヴァンクは自由を奪われていることに気付き、乙女の裏切りに激怒します。
鎖で縛られたままでもアヴァンクは激しく抵抗し、大暴れすると縛っていた鎖で娘は打ち付けられ命を落とします。
しかし別れを惜しむかのようになおも娘の膝にいたアヴァンクでしたが、村人たちはアヴァンクをクゥム・ファノン湖 (Lake Cwm Ffynnon) まで引きずっていき、そこでアヴァンクを殺しました。
と、この話はクゥム・ファノン湖ですが、他の湖にはまた他のアヴァンクの話があり、それぞれ異なったストーリーであるためアヴァンクはたくさんいることになってしまいます。
といってもそれは不思議なことではありません、アヴァンクはウェールズのすべての湖に棲んでいたともいわれているからです。
さてさて、そもそもウェールズにビーバーはいるのか?という素朴な疑問があるかと思いますが、グレート・ブリテン島には16~17世紀ごろまでヨーロッパビーバー (Castor fiber) が確かに棲息していました。
前述した通り、アヴァンクの伝説はそれより前の15世紀ごろからありますので、実在したビーバーが基になっていてもおかしくはありません。
しかし、ビーバーといえばせっせとダムづくりに勤しむイメージで、とてもじゃありませんがアヴァンクのような凶暴な怪物然としたイメージはありません。
が、実は大変縄張り意識が強く縄張り内に侵入した場合、自分たちより体の大きい人間に対しても容赦しません。
ものの数分で倒す強力な歯を有しているため襲われると大変危険で、特に狂犬病ウイルスに感染している場合はより攻撃的でその傷が小さくても致命傷となりえます。
記録に残るものでは2013年というつい最近にもベラルーシの男性がビーバーに咬まれ失血死しており、負傷事故であれば枚挙に暇がないほどです。
アヴァンクが創造されたころはイギリスにまだビーバーがたくさん棲息しており、現在よりもビーバーと接する機会も多かったはずです。
おそらくは、実際にビーバーに襲われ命が落とした人もいるでしょう。
ですからやはりアヴァンクの元になったのは絶滅前のビーバーに違いありません。
より大きな個体で凶暴なビーバーがアヴァンクの伝説を創造させたかもしれません。
滅んでしまったビーバーですがその後どうなったのか?というと、最近になってまだ数は少ないものの移入したヨーロッパビーバーの定着が確認されています。
そういうわけで今後、UMAとしてのビーバー、アヴァンクの目撃は復活するかもしれません。
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乙女に従順って何処ぞのユニコーンみたいな生き物ですね
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