■はるか昔に絶滅したウミサソリ遭遇事件 ~ スペックス (スぺクス)
今回はスペックス (Specs)。
スペックスとは1950年代に目撃されたという、ウミサソリに似た甲殻類系UMAにつけられたニックネームです。
それではこの「ウミサソリ遭遇事件」を見ていきましょう。
1959年3月11日、アメリカ、フロリダ州のマイアミビーチを船底がガラス製で海の底が見える大型ボート、コムレイド II (Comrade II) が観光客を乗せて出港しました。
(ガラス底のコムレイドII)
(image credit:)
ビーチから約2マイル (3.2キロメートル) の地点に差し掛かったころ、ベテランダイバーのボブ・ウォール (Bob Wall) 氏は海へと飛び込み、船の下を泳ぎながら観光客相手に海洋生物やサンゴ礁のガイドを始めました。
ウォール氏は水深35フィート (約10メートル) ぐらいを泳いでいましたが、海底洞窟があったため、その中を覗き込んでみると思いもかけないものが潜んでいたのです。
それは見たこともないほどの巨大な甲殻類でした。
円筒形の体は5.5フィート (約165センチ)、毛むくじゃらの脚は8本あり、尖った頭部には短い触角が生えていました。
奇妙なのはその目で、頭部から伸びた柄の先端に直径2インチ (約5センチメートル) もある大きな目玉が付いていました。
その怪物じみた甲殻類はウォール氏を見て逃げるどころか近寄ってきたため、慌ててウォール氏は水上へと逃げ帰りました。
ウォール氏はこの生物について、足は8本あるものの、もちろんタコではなく、甲殻類に似ているがカニでもイセエビでもないと証言しました。
ウォール氏はその生物がなんであるかの言及を避けた感じです。
本当になんであるか分からなかったのかもしれません。
で、冒頭の方で「ウミサソリ遭遇事件」と書きましたが、どこから「ウミサソリ」の話が出てきたかというと、この謎の生物の遭遇事件を、アメリカの未確認動物学者、故マーク・ホール氏がその生物はウミサソリではないのかと語ったことに端を発します。
(ミクソプテルス・キアレリ / Mixopterus kiaeri)
(image credit: Wikicommons)
ウミサソリは恐竜が現れる前に絶滅しており、存在するにはかなり敷居の高い生物です。
代表的なウミサソリのユーリプテルス (Eurypterus) は全体的なシルエットがサソリ風であり、海棲のサソリを連想させることからこの名を持ちます。
ユーリプテルスは最大種で50センチほどですが、ウミサソリの最大クラスともなると2メートルを優に超す種もわんさかおり、イェーケロプテルス (Jaekelopterus rhenaniae) は8.5フィート (約2.6メートル) にもなりました。
というわけで、大きさ的には余裕でウミサソリなら何ら問題ありませんが、ウォール氏はその謎の生物の体を「円筒形」と表現しています。
ウミサソリの体は上下に極端に扁平しており、それこそ現生のサソリのような感じであり、というか現生のサソリ以上にぺったんこなので「円筒形」という表現からかなり遠いです。
また、柄の先に目玉があったとウォール氏は語っており、残念ながら柄の長さがどれぐらいなのかは分かりませんが、ウミサソリは柄の先に目がある種は少なくとも現時点では発見されておらずここら辺もマイナスポイントです。
そういうわけで大きさ以外、あまりシルエットは似ているとはいえず、ウミサソリ説はちょっと厳しいかもしれません。
まぁまだ発見されていないウミサソリの種も存在するでしょうし、仮に細々と生き残っていたとしたらずいぶんと姿も変わっている可能性もありますから完全否定はしないでおきましょう。
で、一番あり得そうなのはやはりエビです。
円筒形の体にとんがりヘッドはエビの特徴です。
で、イセエビなんかは目も飛び出しており、こちらもエビが有利。
問題は大きさのみです、、、が、この大きさが曲者ですね。
ロブスター (オマール海老) のような大きなハサミをもっていたともウォール氏は証言しておらず、単に体だけで165センチあったようです。
日本人的にはオマール海老のように、ロブスターといえば相対的に体に対し巨大なハサミを持つイメージですが、イセエビの仲間 (Panulirus) もロブスター (厳密にはスパイニー・ロブスター) と呼ばれます。
まぁ「体のでっかいエビ = ロブスター」ですね。
このスペックス目撃地点にもアメリカイセエビ (Panulirus argus) が棲息しており、候補になるかと思いきや、前述の通り、ウォール氏は「イセエビではなかった」とはっきり証言しています。
まぁモンスター級に大き過ぎてアメリカイセエビに見えなかった、というのは考えられるかもしれませんね。
いわゆるロブスター、オマール海老の仲間も棲息していますが、ハサミの言及がなかったのでこちらも脱落ですかね。
ちなみに今まで発見されたロブスター (オマール海老) で最も大きかったもので尾から離さ実の先端までで106センチメートルです。
(ミナミゾウリエビ / Parribacus antarcticus)
(image credit: Wikicommons)
まぁもうこうなるとお手上げで候補はいませんが、カニにもイセエビにも見えなかったということなので、苦し紛れのウチワエビはいかがでしょう?
この地域にもウチワエビを含むセミエビの仲間 (Scyllaridae) は棲息しており、頭部は尖がっていませんが、アメリカイセエビには全く似ていませんし、足も短いし特徴的にはさっぱりですが、未知のウチワエビの巨大種であれば訳の分からない生物として認識される「かも」しれません。
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