2020年3月12日木曜日

1880年にただの一度だけ捕獲された謎の魚 ~ キャプテン・ハンナズ・フィッシュ

(ハンナ氏のスケッチ)(original image credit by Hakai magazine)

■1880年にただの一度だけ捕獲された謎の魚 ~ キャプテン・ハンナズ・フィッシュ

1880年、アメリカ、メイン州のニューハーバー沖でただの一度だけ捕獲された謎の魚がいます、捕獲したS.W.ハンナ (S. W. Hanna) 船長にちなみキャプテン・ハンナズ・フィッシュ (Captain Hanna's fish, 「ハンナ船長の魚」の意) と呼ばれます。

ハンナズ・フィッシュはハンナ氏の漁網に意図せずかかっていたもので、既に網の中で息絶えていました。

おそらく商品価値のないものと判断したためでしょう、ハンナ氏はそのまま海へ投棄してしまいました。

しかし投棄する前に、ハンナ氏はこの謎の魚を10~15分程度観察したといいます。

のちにハンナ氏はこの魚を「シーサーペント (巨大海蛇)」と呼ぶほどなので当初から鮮烈な印象を受けていたことは確かでしょう。

体長は25フィート (7.6メートル)、頭部は左右に扁平しており小さな口の中には鋭く小さな歯が並びます。

エラのやや後ろに胸ビレ、同じぐらいの位置に大きめの背ビレがありますが、体の後部にもウナギのような背ビレ・尾ビレ・臀ビレが連なったようなヒレを持ちます。

奇妙なのはエラの部分で、サメのようにスリット状の鰓孔 (えらあな) が縦に並びます。

体色は背中側が黒灰色で腹側は白っぽい灰色だったといいます。

19世紀末の科学者たちはこの謎の魚にたいへん興味を持ち、幾度とハンナ氏と接触し詳細を尋ねており、その際、記憶をたどり上記のスケッチも描いています。

しかし、現物はなく、またスケッチも現物を見て描いたものではありません、結局当時はは「未知の魚」以上の判断はできませんでした。

しかし、当時と比べれば比較にならないほど海洋生物も分かってきた現在ならどうでしょう?

(かつてリュウグウノツカイはシーサーペントの正体のひとつでした)

細長く、しかも7.6メートルという巨体、このような体型で5メートルを超えるような魚といえば、そうリュウグウノツカイ (Regalecus glesne) しかいません。

そのため、ハンナズ・フィッシュの正体はリュウグウノツカイであったのだろう、と半ば結論付けられています。

7.6メートルという長大なシルエット、頭部の形状などは確かにリュウグウノツカイを彷彿とさせます。

しかし、リュウグウノツカイに歯はありません、またスケッチと異なり背ビレは頭部から尾の先端まで続きます。

そもそもリュウグウノツカイの体色を間違って記憶するものだろうか?という疑問がわきます。

ハンナ氏の証言は黒灰色。

一方、リュウグウノツカイといえばクリムゾンレッドの各種ヒレが、金属光沢美しいシルバーボディによく映えます、こんな印象的な配色を「黒灰色」と誤って記憶しているとは正直考えづらいところです。

そしてとどめがスリット状に並ぶ鰓孔。

これはサメの仲間に見られる顕著な外見的特徴です。

これは硬骨魚類ではなく、サメではないでしょうか?


肌はサメのそれのようだったという証言もあり、このことからニュー・ハーバー・サーペント・シャーク (New Harbor serpent shark) と呼ばれることもあります

ハンナ氏が鰓孔部分をあやふやな記憶で適当に描いてこうなってしまったのであればどうしようもありませんが、投棄前に観察した確かな記憶を頼りに描いたとすればこの魚はサメである可能性が非常に高いといえます。

(ラブカ)

ちなみにフランスの動物学者にして未確認動物学者としても著名なベルナール・ユーベルマン (Bernard Heuvelmans) はハンナズ・フィッシュの正体をずばり生きている化石ラブカ (Chlamydoselachus anguineus)、つまり深海性のサメと推測しました。

ラブカに背ビレはありませんし口も体に比して決して小さくはありませんが、鋭く尖った小さな歯を無数に持ち、ヒレの形状、体色もハンナ氏の証言およびスケッチに (リュウグウノツカイと比較すればまだ) 近いものとなっています。

ただし、いかんせんラブカにしては7.6メートルという体長はあまりに大きすぎます。

ラブカの体長はせいぜい2メートル。

そうなると正体はやはり未発見の長大なサメ、もしくは、、、

白亜紀後期に生息したといわれる絶滅巨大ラブカ、クラミドセラクス・ゴリアス (ゴリアテ) (Chlamydoselachus goliath)!

一説には6メートル以上あったといわれる長大な巨大ザメではありますが、、、さて?

(参照サイト)
Hakai magazine

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6 件のコメント:

  1. サイズ、体色、頭が扁平とくると大アナゴを想像するなあ。鰓も見ようによっては絵みたいに見えないかな?背鰭ないけど。

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  2. サーペント系なのでウナギ類はすべて候補ですよね、ただ大きさがとんでもないですからね。

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  3. クラミドセラクス種の6m説の根拠は古世界の住人の人がツイートしていたものですね。
    日本で現生種の5倍の大きさの歯を持つ浅海性の種が発見されたようです。
    といってもgoliath種も歯の高さ2cm以上あったので相当大型だったでしょう。

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  4. コメントありがとうございます。
    川崎さんのツイッターでも6メートル説が載ってるんですか?海外で一番大きく推測しているサイズを採用したのでちょっとデカすぎるかなと思ってたのですが、川崎も言っているなら安心ですね。

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  5. https://twitter.com/satoshikawasaki/status/919466502692024320
    一応これですね
    ラブカは2m近くになるので下手したらもっと大きくなる可能性も・・・

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  6. ありがとうございます。
    あ、本当ですね。現世ラブカの5倍という言い回しが元ネタなんですね。

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