スタウロライト (Staurolite) という石があります。
日本語で十字石 (じゅうじせき) と呼ばれ、名前の通り十字を形成した双晶 (複数の結晶が交差しているもの) です。
(スタウロライト/十字石)
自然が作り上げた「十字架」であり、そのことからパワーストーンとしてスーパーナチュラルな力を秘めている信じられています。
こういった背景からスタウロライトの形成は多くの民間伝承に彩られ、その中でも「涙」に関するものが目を引きます。
ある特定の人々の流した涙が地面に触れた時、スタウロライトは形成されたのだと。
スタウロライトの別称「フェアリー・クロス (「妖精の十字架」fairy cross)」は、キリストの死を深く悲しむ妖精たちの流した涙が地面に触れ (キリストが磔にされた十字架を模した形に) 結晶化し形成されたことに由来します。
もうひとつアメリカの先住民族チェロキー族 (Cherokee) のものです。
1830年代、チェロキー族含む五部族は金鉱目当てにかれらの居住地に乗り込んできた白人たちに追われ、多くの死者を出した「涙の道 (Trail of Tears)」と呼ばれる強制退去をさせられました。
居住地を去らねばならぬ悲しみ、彼らにしてみれば国を捨てるのに等しいことです。
この時流したチェロキー族の涙がスタウロライトになったのだという言い伝えです。
さて今回の話はムーン・アイド (Moon-eyed people) 族の話です。
ムーン・アイドとはチェロキー族が「涙の道」で居住地を追われ一部はアパラチアに移住しましたが、その移住先に住んでいた伝説の先住民族のことです。
この部族の「ムーン・アイ (ド)」という名は「月の眼 (をした、を持った)」の意味ですが、これは彼らが太陽光ではあまり目が効かず月の光で行動したことに由来します。
つまりは夜行性の人種ということになります。
「月の光でのみ目が効く」以外はそれほどパラノーマルな能力を持ち合わせているわけでもなく、そこまで突飛な存在ではありませんが、とはいいつつも基本はチェロキー族の民間伝承です。
(この城壁跡はムーン・アイド族による遺跡?)
ムーン・アイドを実在する (した) 部族と考える人々の中にはジョージア州にあるフォート・マウンテン州立公園 (Fort Mountain State Park) に遺る城壁跡をムーン・アイドの遺跡と主張する人もいます。
ムーン・アイドはひげを生やした背の低い部族で、陽の光を避けた夜行性のためでしょう、透き通るほどの真っ白な肌をしているといいます。
彼らは昼の間、日光を避けるため洞窟であったり、地中に穴を掘ってそこに身を隠しでいました。
しかしムーン・アイドは夜間でも行動制限される日がありました。
月の満ち欠けは約30日 (29.5日) 周期で、その周期の間、日々月の見え方 (満ち欠け) は変わります。
そしてその特定の満ち欠けの日にもムーン・アイドは夜間であるにも関わらず目が効かないという特徴があります。
それを知ったチェロキー族はその日を狙ってムーン・アイドたちを襲い、かれらをアパラチアから追い出したといわれています。
ムーン・アイドたちはチェロキー族に絶滅させられたとも、または一部は逃げおおせ今でもどこかの洞窟や地中で暮らしているともいわれています。
ところでムーン・アイドのもっともらしい肌の色についてですが、実はチェロキー族の伝説には出てこない特徴であるといい、ある無名の作家が恣意的に付け足した特徴だという説もあります。
というのも白人たちに追われた先住民族たちは「被害者」ですが、これだと白人たちにとってばつが悪い。
しかし逃げた先で白い肌の部族、つまりムーン・アイドを「古代の白人」と位置付けることにより、チェロキー族たちのことを白人を殺した「加害者」とすり替えることができるからでしょう。
ムーン・アイド族が実在したとして、そしてその正体が例え古代の白人であったとしてもチェロキー族が被害者であることに変わりはないのですけどね。
そうそう、この肌の色の問題も関係あるのかどうか定かではありませんが、十字石、スタウロライトはチェロキー族の涙ではなく、チェロキー族に居住地を奪われたムーン・アイドの流した涙が結晶化したものとの説もあるのですよ。
移民たちはチェロキー族からすべてを奪おうとしているの?
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