タスマニアタイガー (Thylacinus cynocephalus) ことフクロオオカミ、英語圏ではサイラシン (Thylacine) もしくはタスマニアン・タイガー (Tasmanian tiger) と呼ばれることが多いですが、稀にタスマニアン・ウルフ (Tasmanian wolf) と呼ばれる場合もあります。
タイガー (トラ) でもなければオオカミでもく、カンガルー等と同じ有袋類です。
言わずと知れた絶滅動物ですが、UMAとしても頻繁に登場します。
ご存じの通り、UMAとは「未確認動物 (Cryptids)」を意味する和製英語で、たいていは怪物めいた奇妙な動物が多いですが、広義には「絶滅してしまい存在しないはずの生物」も含まれます。
はるか昔に絶滅したはずの恐竜や同時代を生きた海生爬虫類や翼竜、そういった生物が目撃された場合、かれらもまたUMAと呼ばれるのが分かりやすい例といえるでしょう。
要するには、現時点で存在していることが証明できない生物はすべてUMAと呼んで差し支えありません。
そういった絶滅動物の中でも特に目撃情報の多いUMAがタスマニアタイガーです。
ヨーロッパからの移民たちに徹底的に目の敵にされ絶滅に追い込まれた動物であり、絶滅して日の浅い (1936年に絶滅) こともあるのでしょう、いまだに生存しているのではないかという期待のせいでしょうか、目撃は未だに絶えることはありません。
(この大口もタスマニアタイガーの特徴です)
今回は、そんなタスマニアタイガーを復活させようというプロジェクトの話です。
絶滅動物の復活プロジェクトはジュラシックパーク等の影響もあるのか、なかなか人気のあるジャンルで、マンモス復活プロジェクトなんて90年代だからあったような気がします。
以前からタスマニアタイガーの復活プロジェクトはありましたが、いつのまにか頓挫するといった具合で、やはり資金的にも、技術的にもかなりハードルの高いものなのでしょう。
今回、オーストラリアのメルボルン大学が北米のバイオテクノロジー企業、コロッサル社 (Colossal) とタッグを組み、500万ドルの資金を得てタスマニアタイガーの復活に挑むことが発表されました。
このプロジェクトには、姿こそまるでネズミそのものの、タスマニアタイガーと同じ有袋類で近似のDNAをもつというオブトスミントプシス (Sminthopsis crassicaudata) から幹細胞を採取し、可能な限りタスマニアタイガーのそれに近い遺伝子編集をすることを目指すというものです。
(タスマニアタイガーと同じ有袋類、オブトスミントプシス)
(image credit by Wikicommons)
成功した暁には、人造タスマニアタイガーを保護区で管理し、いずれは自然に返す (放つといったほうが正しいですね) ことを目標としているといいます。
人類がタスマニア島に足を踏み入れるまで、タスマニアタイガーは食物連鎖の頂点に君臨した生物であり、人造タスマニアタイガーを野に放つことにより、従来の自然バランスを取り戻すのに一役買うであろう、プロジェクトはそのためのものだといいます。
しかし、タスマニアタイガーが絶滅して80年以上の月日が経った現在のタスマニアでは、タスマニアタイガー無くして野生のバランスがとれているといえます。
そのバランスを人造タスマニアタイガーの導入で再度壊してしまいかねないのでは?という懸念もあります。
500万ドルという資金は、円安の現在で6億円を超す、それなりの大きな額ではありますが、こういったプロフェッショナルな多くの人材を必要とし、十年、二十年と長期にわたるプロジェクトにおいてははした金でしかなく、さらなる継続的で巨額のバックアップ資金が必要です。
今回のプロジェクトリーダーであるメルボルン大学のアンドリュー・パスク (Andrew Pask) 教授は向こう10年以内にタスマニアタイガーは復活すると述べています。
ちなみに、コロッサル社のCEO、ベン・ラム (Ben Lamm) 氏に至ってはマンモスの復活も6年以内に達成すると宣言しています (した)。
2021年あたりに宣言したので、あとマンモスが復活するまでの猶予は5年を切っています。大丈夫なのでしょうか。(笑)
さて、話を戻しましょう。
とても夢のある話ですが、パスク氏、ラム氏、共にかれらの発言の信憑性にはかなりの数の疑問符が並びます。
ある程度限られた期間内に達成する見込みのないプロジェクトに、資金提供する人や企業は少ないだけに、「達成は資金だけの問題」と吹聴しているのでは?と疑ってしまいます。(笑)
日進月歩の遺伝学といえど、現時点の遺伝学の力で絶滅した生物を10年以内に「生き返らせる」と確約に近い宣言は、申し訳ないですが現実的とは思えません。
前述したように「タスマニアタイガーの復活は従来の自然を取り戻すため」という大義名分も大衆を味方につけ資金を集めのためではないか?、と穿った見方をしてしまいます。
オーストラリア国民にとってタスマニアタイガーの復活は、自分たちの先祖が虐殺し絶滅に追いやったことに対する、せめてもの免罪符としての役割があるのかもしれません。
いずれにしても、今回のプロジェクトの発表は、パスク氏・ラム氏の目論見は大当たり、全世界の注目を集めることに成功しており、継続的な追加支援も期待できそうです。
但し、このプロジェクトに対し反対意見が多いのもまた事実です。
そもそも完璧なタスマニアタイガーのゲノム配列の解析は現時点ではほぼ不可能であるため、いくらオブトスミントプシスを参考に編集したところで、タスマニアタイガーとオブトスミントプシスのハイブリッド化は避けられないとの懸念があります。
つまりはタスマニアタイガー風ではあるものの、訳の分からない生物が生まれてきてしまう可能性が高いということです。
仮に今回のプロジェクトが成功し、「タスマニアタイガーもどき」が誕生した時、その「タスマニアタイガーもどき」の生物を野に放っても平気なのか?という新たな心配も生まれます。
また、かつて食物連鎖の頂点に君臨したタスマニアタイガーを復活させることにより本来の自然を取り戻す、そんな悠長なことに莫大な資金を投じるのであれば、現在絶滅に瀕している生物たち (の保護) に使うべきなのではないか、という至極もっともな意見もあります。
では復活したタスマニアタイガーを見たくないのか?という質問をされたとしたら、、、
これだけ否定的なことを書いておきながらも、それが例え遺伝子操作の賜物であれ、タスマニアタイガーもどきであれ、生きたタスマニアタイガーをこの目で一目見てみたい、という欲望が掻き立てられるのもまた事実であることを白状しておきましょう。
(参照体と)
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