今回は翼猫トーマスのお話です。
翼猫 (Winged cat) 自体まだ未紹介なので軽く触れますね。
「翼猫 (つばさねこ)」はその名の通り背中に翼を持った猫のことで、他のUMAのように不気味さは皆無、ティジー・ウィジーに並ぶもっともかわいらしいUMAのひとつといえます。
翼猫は通常のUMAのように目撃されるだけではなく実際に捕獲されているものも存在します。
(これはトーマスではありません)
捕まったいる時点でもはやUMA (未確認生物) とはいえないのでは?と思うかもしれませんが、この「翼猫」という呼び方は総称であり、実は複数のタイプが存在します。
大きく分けて「飛べるタイプ」と「飛べないタイプ」
捕獲されているのはすべて「飛べないタイプ」の翼猫です。
今回紹介するのは飛べないタイプの翼猫トーマス (Thomas the winged cat) のお話です。
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1959年5月、アメリカ、ウェスト・バージニア州にある人口1000人にも満たない小さな小さな町、パインズヴィル (Pinesville) の森の中でとても不思議な猫が少年によって捕獲されました。
少年の名はダグラス・シェルトン (Douglas Shelton)、15歳です。
ダグラス少年がライフルを持って森を散策していたときのことです、野犬が樹上に向かって吠えるのを目にします。
視線を移すとそこにはなにかがいました。
少年は獲物とみるや樹上の生物にライフルを向けましたが、ただの猫だと気付きライフルをおろしました。
これはトーマスはもちろん、ダグラス少年、いやシェルトン家にとって、とても懸命な判断でした。
トーマスは自身の命が助かっただけではなく、巨万の富、というには大袈裟かもしれませんが、こんな片田舎では簡単に稼げないほどの大金がシェルトン家に舞い込んでくることになるからです。
ちなみにダグラス少年がつけた「トーマス」という男性名とは裏腹に女の子であることがのちに判明します。
信じられないことにトーマスの背中には羽ばたく (動かす) ことのできる1対の翼が生えていました。
トーマスは白っぽい淡色のペルシャ猫で体長は30インチ (約75センチ) とやや大柄、翼はそれぞれ9インチ (約23センチ) あったので翼開長は50センチといったところです。
体長から考えて4~5キロといったところでしょうか。
このぐらいの体重のある鳥といえばイヌワシやオオワシといった猛禽類をはじめかなり大柄に限られます。
これだけの体重で空を舞うには翼開長は最低でも2メートル以上は必要でしょう、とうていトーマスの翼程度では大空を舞うことは叶いません。
実際トーマスは空を飛ぶことはできませんでした。
人口数百人のパインズヴィルでは瞬く間にトーマスの噂が広まり、シェルトン家は見物料を取ってトーマスを見せました。
人々は見物料に文句を言うどころか、その噂はパインズヴィルから隣町へそしてさらに遠方へと広まり、ついにはテレビに出演するまでになりました。
アメリカ中がトーマスを知ることになると、トーマスの見物料や出演料も跳ね上がり、短期間でシェルトン家には現在の貨幣価値では1万6千ドル (約230万円) 以上の大金が舞い込んできました。
順風満帆のシェルトン家でしたが好事魔多し、ケチが付きます。
トーマスの本当の飼い主と名乗る人物が現れたのです、チャールズ・ヒックス (Charles Hicks) 夫人です。
夫人はトーマスの本当の名はミッチ (Mitzi) で年齢は5歳、点耳薬を刺した際に驚いて家から逃げたもので、ダグラス少年が森で捕まえたのはその4日後のことと主張しました。
確かにトーマスは野良猫とは思えないほど人懐こくおとなしい猫だったといいます。
そもそも野良猫であれば初対面の人間に簡単に捕まるとは思えません。
そういったことからもヒックス夫人の発言にはある程度の妥当性はあるように思えます。
「トラブルなんて起こしたくないの。ただ自分の猫を取り戻したいだけ」
夫人はシェルトン家に無条件でトーマスを自分に引き渡すよう要請します。
しかし今やドル箱スターとなったトーマスを簡単に引き渡す気は毛頭なく、どちらが本当の所有者であるかを裁判で決めることになりました。
おそらく誰かに飼われていた可能性は高いと思われますが、ヒックス家で飼われていた猫である決定的な証拠もありません。
1959年10月5日裁判当日、ダグラス少年は片手にトーマスを、そしてもう片方の手で箱を抱え裁判所に入ってきました。
法廷内にざわめきが起きました。
これがあの有名なトーマスか、、、聴衆はそんな有名な猫を目の当たりにし興奮したからではありません。
トーマスの背中にはあのトレードマークの翼がなかったからです。
それを見るやヒックス夫人は激怒し「その猫はミッチじゃないわ!」と裁判官とダグラス少年にそう吐き捨てると裁判所をあとにしました。
「7月に翼は取れてしまったんです」
そう言って少年はもう片方の腕に抱えていた箱を開けました。
そこには抜け落ちてしまった一対の翼が入っていました。
※注:トーマスが実在したのは確かで写真も存在していますが、詳細な点については諸説あり、裁判内容を含めいくつかのバージョンが存在します。
(参照サイト)
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