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2022年7月19日火曜日

マールブルグ病のウイルス媒介者? ~ エジプトルーセットオオコウモリ

(エジプトルーセットオオコウモリ / image credit by Wikicommons)

■マールブルグ病のウイルス媒介者というのは本当か ~ エジプトルーセットオオコウモリ

最近、いくつかオオコウモリの話題をしたので、タイムリー的にエジプトルーセットオオコウモリを取り上げましょう。

英名はシンプルなエジプシャン・フルーツ・バット (Egyptian fruit bat / Rousettus aegyptiacus) とかエジプシャン・ルーセット・バット (Egyptian Rousette Bat) と呼ばれ、和名は後者から取られたようです。

さてこのエジプトルーセットオオコウモリ、オオコウモリ科 (Pteropodidae) ですが、それほど大きくはなく、UMAの誤認となるような生物ではありません。

(この上なくかわいいエジプトルーセットオオコウモリの赤ちゃん)
(image credit by Wikicommons)

体長は6インチ (約15センチ) 程度、翼開長も24インチ (約60センチ) とオオコウモリとしては中型~小型の部類です。

エジプトルーセットオオコウモリの特徴はなんといってもエコロケーション (反響定位) を使えることです。

エコロケーションは自ら発した超音波の反響を使って、障害物や獲物の位置を把握する能力で、コウモリの大きな特徴の一つといえます。

コウモリのエコロケーションなんて普通のことでは?

いえいえ、それはオオコウモリを除く小型コウモリの特徴で、オオコウモリは大きな目と発達した視力を持ち、エコロケーションに頼らず通常の哺乳類たち (一部のハクジラ類を除く) と同じ視覚に頼った生活様式です。

エジプトルーセットオオコウモリはオオコウモリの特徴である発達した視力に加え、臭覚も鋭く、さらにエコロケーションもできるという、ハイブリッドな能力を兼ね備えたオオコウモリ界の異端児とえいます。

コウモリというと、なにかと嫌われがちですが、やはりドラキュラとの関連性、吸血コウモリのイメージが強いからでしょう。

1400種以上存在するコウモリの中で吸血する種はナミチスイコウモリ (Desmodus rotundus)、ケアシチスイコウモリ (Diphylla ecaudata)、シロチスイコウモリ (Diaemus youngi) の小型コウモリのわずか3種のみ、オオコウモリ科は見た目こそ大柄で怖いですが血液を吸う種は存在しません。

1000種中たった3種、比率にしてわずか0.3%のチスイコウモリで、コウモリ全体が「吸血コウモリ」のイメージを持たれ忌み嫌われるのは気の毒な感じです。

但し、吸血コウモリは致死率100%の狂犬病の媒介者として知られているため、かれらの生息圏内に住む人々にとって危険な生物であることは確かです。

とはいえ、吸血コウモリは、歩いている人間を襲ってまで血を吸うような生物ではく、また日本には生息していないため、少なくとも日本においてすべてのコウモリは全く怖がられる存在ではありません。

それどころか、みなさんの大嫌いな蚊や蛾、ゴキブリといった昆虫を食べてくれるので、人間にとって完全に益獣な種がほとんどです。

(マールブルグ・ウイルス)
(image credit by Wikicommons)

さて、最近にわかに騒がれ始めている感染症、マールブルグ病

その名の通り、マールブルグ・ウイルス (Marburg virus) によって引き起こされる病気です。

マールブルグ・ウイルスはエボラ出血熱を引き起こすエボラウイルスと同じフィロウイルス科 (Filoviridae) のウイルスで人間が感染した時の症状も似ているといいます。

このウイルスは今から50年前以上の少なくとも1967年から知られていますが、いくつかの事例を除いてそれほど爆発的に感染が広まったことはなく、エボラ出血熱と比較すると、かなりマイナーな存在です。

但し、エボラ出血熱同様、致死率は50%ととんでもなく高いため、とても危険なウイルスです。

長らく感染経路は不明でしたが、どうもエジプトルーセットオオコウモリが媒介しているようです。

オオコウモリは人間を襲わないのでは?

確かに、しかし、襲わなくても感染はします。

感染したエジプトルーセットオオコウモリの群れが生息する洞窟等ではその糞等によりウイルスが蔓延し、長くその場に留まることによって感染するといわれているからです。(但し、この説も確実ではないとも)

(19世紀に描かれたデフォルメした吸血鬼のイラスト)
(image credit by Wikicommons)

当然、エジプトルーセットオオコウモリの生息域がマールブルグ病の危険地域となるはずです。

ということは、気を付ければいいのはエジプトだけ?

といいたいところですが、エジプトルーセットオオコウモリ、名前こそ「エジプト」とつくものの、エジプト以外の多くのアフリカ諸国、それどころか、中央アジアやアラビア半島の一部にも生息します。

まあ現時点ではマールブルグ病がパンデミックになるような兆候はありませんし、そもそも日本の動物園にもエジプトルーセットオオコウモリがたくさん見られますが、まったく問題ないことを付け加えておきましょう。

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