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2019年10月22日火曜日

魚を意のままに操る寄生虫 ~ ディプロストムム


■魚を意のままに操る寄生虫 ~ ディプロストムム

寄生した生物 (宿主) を意のままに操るのは、寄生虫の最も得意とする分野ですが、吸虫ディプロストムム・プセウドスパサケウム (Diplostomum pseudospathaceum) もまた宿主を操り人形のようにもてあそびます。

ディプロストムムは3つの生物間を巡ります。

まずはディプロストムムの卵を大量に含まれた鳥の糞の中からスタートです。

次のステージで卵から孵った子供たちが水棲の巻貝に寄生するのが必須であるため、是が非でもこの卵入りの糞が水中に落下されなければいけません。

これが第1の難関で、全くの運任せ、この糞が陸上に落下した時点で中に含まれていた卵たちは全滅、早々と脱落です。

無事に水中に落下したものだけが次のステージに進む権利が与えられます。

水中で卵から孵るとミラシジウムという泳ぐのに適した形態となり、最初の寄生先である淡水棲巻貝を求め泳ぎ回ります。

正確な時間は分かりませんが、おそらくミラシジウム単体での寿命はせいぜい半日程度と推測されるため、このタイムリミット内に巻貝を見つけられなかったり、そもそもその落ちた水中に巻貝自体が生息していなければゲームオーバーです。

巻貝に到達できたものだけが次のステージに進む権利が与えられます。

巻貝に到達したミラシジウムはスポロシストという形態に変身し、巻貝の体をクローン工場として利用し、無性生殖により爆発的に増殖します。

ここで膨大な数に自らをクローン化しないと次のステージで確実に躓いてしまうからです。

十分に成長したスポロシストは、今度は遊泳力に優れるセルカリアへと変態し、次のステージ、魚を目指して巻貝から旅立ちます。

巻貝と違い圧倒的なな遊泳力を誇る魚への寄生は困難を極めるため、巻貝から放たれるセルカリアの数が膨大なのです。

運よく魚に到着できたものは魚の皮膚を破り、魚たちの免疫系で保護される眼球の水晶体内へと移動します。

さあ運任せの長い旅路もあと一息、ディプロストムムの最終宿主、あとは鳥の意の中に移動するだけです。

え!?鳥?

そう、水中から空中へ移動するというとてつもない試練が待ち構えています。

このセルカリア入りの魚は鳥に食べられる必要があるのです。

水中生物から陸上生物、しかも空中を舞う鳥への移動は今まで以上の困難であるため、ここで多くの寄生虫が得意とする伝家の宝刀、宿主のマインドコントロールを使います。

まずは魚に寄生した後も自らが成長する必要があるため、未成熟の状態で鳥に食べられては今までの苦労が水の泡です。

そこでセルカリアは魚に寄生直後は鳥に見つかりにくいよう、遊泳力を落とし目立たないようにして鳥に食べられにくくします。

そして自らが十分成長し鳥へ移動する準備が整うと、寄生されていない魚よりも活発に動き、また水面近くに留まる等、鳥の気を引くためにあの手この手を使います。

警戒心を失った魚は鳥以外にも食べられやすくなりますから、ここでも多くのセルカリアは脱落することでしょう。

しかし意中の鳥に食べられたセルカリアはやっとこの運任せのゲームをコンプリートすることができます。

鳥の体内に入り無事成体へと変態したディプロストムムは生きている間卵を産み続け、鳥の糞に卵を紛れ込ませ次世代へ夢を託します。

(参照サイト)
NEW SCIENTIST

(参考書籍)
パラサイト・レックス / カール・ジンマー著

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