■魚を意のままに操る寄生虫 ~ ディプロストムム
寄生した生物 (宿主) を意のままに操るのは、寄生虫の最も得意とする分野ですが、吸虫ディプロストムム・プセウドスパサケウム (Diplostomum pseudospathaceum) もまた宿主を操り人形のようにもてあそびます。
ディプロストムムは3つの生物間を巡ります。
ディプロストムムの卵を大量に含む鳥の糞がスタート地点です。
まずこの卵入りの糞が水中に落下されるのが第1の難関で、陸上に落下した糞に含まれるディプロストムムの卵はまずは脱落です。
無事に水中に落下したものはそこで卵から孵り、ミラシジウムという形態になりファースト・ステージの淡水性巻貝を探して泳ぎ回ります。
ミラシジウムの寿命はおそらく半日程度だと思われるので、このタイムリミット内に巻貝を見つけられなかったり、落ちた水中に巻貝自体が生息していなければゲームオーバーです。
巻貝に到達できたものだけが次のステージに進む権利が与えられます。
巻貝に到達したミラシジウムはスポロシストという形態に変身し、巻貝の体をクローン工場として無性生殖により爆発的に増殖します。
十分に成長したスポロシストは、今度は遊泳力に優れるセルカリアへと変身し、次のステージ、魚を目指して巻貝から旅立ちます。
遊泳力の高い魚への移動は困難を極めるため巻貝から放たれるセルカリアの数は膨大です。
運よく魚に到着できたものは魚の皮膚を破り、魚たちの免疫系で保護される眼球の水晶体内に移動します。
さあ長い旅路もあと一息、このセルカリア入りの魚が鳥に食べられればゲームクリアです。
水中生物から陸上生物、しかも空中を舞う鳥への移動は非常に困難なため、ここで伝家の宝刀、宿主のコントロールに入ります。
魚に寄生した後も成長する必要があるため、未成熟の状態で鳥に食べられては今までの苦労が水の泡です。
そこで鳥に見つかりにくいよう、遊泳力を落とし目立たないようにして鳥に食べられにくくします。
そして自らが十分成長し鳥へ移動する準備が整うと、寄生されていない魚よりも活発に動きまた水面近くに留まる等、鳥に食べられやすくします。
意中の鳥に食べられたディプロストムムは鳥の体内で卵を産み、鳥の糞に卵を紛れ込ませます。
(参照サイト)
NEW SCIENTIST
(参考書籍)
パラサイト・レックス / カール・ジンマー著
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