2019年9月27日金曜日

アリをイチゴに変え死を招く寄生虫 ~ ミルメコネマ


■アリの来世はイチゴ (クランベリー) に ~ 寄生虫ミルメコネマ

来世が自分の好きな食べ物に限定されたらなにになりたいですか?

自分はウニが好きですが、来世がウニなんてとんでもない話です。

ですがもしあなたが死ぬほどイチゴ好きなら、イチゴなんていかがでしょう?

今回は、来世がイチゴ (クランベリー) を約束されたアリのはなしです。

いや、来世ではなく、生きながら既にイチゴと化するのですが。

そのアリとはナベフタアリの一種、セファロテス・アトラトゥス (Cephalotes atratus) です。

もちろんアリが植物に変化するわけもなく、当然ながら寄生虫の仕業によるものです。

アリをイチゴ化するのは、ミルメコネマ・ネオトロピキュム (Myrmeconema neotropicum) という人間の目では確認できない小さな小さなセンチュウの一種です。

ミルメコネマのライフサイクルのスタートはナベフタアリの体内です。

ミルメコネマの卵入りの食物を体内に取り込んでしまったアリの腹部は、成長と共に丸く膨らでいき、真っ黒だった体色もその膨らんだ腹部のみ真っ赤になっていきます。

(image by LISTVERSE)

とある昆虫学者は寄生されて腹部がクランベリー化したナベブタアリを新種のナベブタアリと勘違いしたほどです

その姿は熟したイチゴ (クランベリー) そのものですが、このころになると、この偽のクランベリーの内部は果実の替わりにミルメコネマの卵でぎっしりです

苦い蟻酸 (ぎさん) を持つアリは、もともと鳥たちに決して人気のある食材とはいえません。

しかし、もはやクランベリーに擬態化したといっても過言ではないこの姿ならどうでしょう?

真っ赤に熟したクランベリーのような姿はきっと鳥たちの食欲をそそるはずです。

しかも寄生されたナベフタアリは動きが緩慢になっており、クランベリーの中に混じって歩いていてもアリとは気付かれない可能性があります。

さらに鳥にとって都合がいいことに、クランベリー化した腹部は繋目が脆 (もろ) く体から簡単に切り離せるといいます。

また、クランベリーの中に紛れなくても鳥の注目を浴びるよう、ミルメコネマに感染していないアリたちと異なり、お尻を突き上げ、より目立つ行動を取るようです。

つまりは寄生虫お得意の洗脳もしっかり行っているようです。

いくら見た目がクランベリーそっくりでも不味くて吐き出されたら元も子もないので、このナベフタアリが元々蟻酸を持たない種なのか、それとも蟻酸の分泌をミルメコネマが抑制しているのかもしれません。

さて、鳥に食べられたことでミルメコネマの卵は鳥の体内に侵入成功です。

あとは排泄物と一緒にミルメコネマの卵が外部へ排出されるだけです。

そしてナベフタアリはそのミルメコネマの卵入り排泄物を食べ、体内にミルメコネマの卵を取り込み、、、、

ただし、ミルメコネマライフサイクルはいまだにはっきりと解明されているわけではなく、鳥ではなく、オマキザルの仲間を利用している可能性もあるかもしれません。

いずれにしろ、イチゴ化したナベフタアリは地獄でしかありません。

(参照サイト)
Weird Science

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