■黄金を掘り当てるアリは実在する ~ ゴールド・ディギング・アント
大抵の場合、UMAはとても体が大きく昆虫のような微小な生物がUMAとして報告されることは滅多にありません。
今回はそんな数少ない昆虫系UMA、インドに棲息するといわれるゴールド・ディギング・アント (Gold-digging ant) を紹介します。
直訳すれば「黄金を掘り当てる蟻」といった感じで、このアリが金 (砂金) を探り当てる能力を持つことからこの名を持ちます。
単純にゴールド・アント (Gold ant) とも呼ばれ、本ブログでは以下、こちらの名前で呼ぶことにします。
尚、ゴールド・アントはキツネと大差ないほどの巨躯 (きょく) を誇ることからジャイアント・アント (Giant ant) と呼ばれる場合もあります。
ここで既に「んっ?」と思うはずです。
キツネ大のアリ?
昆虫が、しかも昆虫の中でも決して体が大きくないアリがキツネほどもあるなんてバカげている!と一蹴されそうです。
確かに。
しかしまあまあそこはUMAということで、目をつむってください。
ゴールド・アントは中世の動物寓意譚 (どうぶつぐういたん) という書籍に登場します。
この本はキリスト教的道徳観や教訓を各々の動物たちに与えており、登場するその動物たちは実在するものからユニコーンやバシリスク、カラドリウス等、想像上の動物にまで及びます。
となるといよいよゴールド・アントの存在も怪しく感じることでしょう。
ですが、もともとこのゴールド・アントは古代ギリシャから伝わっており、その登場する著書のひとつにはヘロドトスの「歴史」も含まれます。
だからといって実在するとは言いませんが、ゴールド・アントにはいくつかの解釈あります。
ひとつはそもそも「アリではない」という説です。
ゴールド・アントの「皮」なるものが存在したといい、色はネコに似ていてその模様は豹のようだったといいます。
「猫の色」とはあまりに漠然とし過ぎて判断が難しいですが、ヒョウに似ていることから褐色なのでしょう。
斑紋もあることも示唆されますが、それは単に豹の毛皮だったのではという疑いもあります。
毛皮 (もしくは皮) がない以上、これについて議論のしようはありませんが、ヘロドトスがゴールデン・アントを「毛皮を纏ったキツネ大のアリ」と表現しているものが本当に「アリ」なのかどうかが論争の的となっています。
ヘロドトスによればゴールデン・アントの生息地はインドからヒマラヤにかけての山岳地帯で穴を掘って棲息し、その穴掘りの際に砂金を外へ運び出すといいます。
、、、なるほど、確かにこんなアリは存在しません、しかし、、、
これを「アリ」という「名前」を完全に無視してその生態だけに注目すると「砂金を運び出す」という点を除けばふつうの野生動物です。
そしてこれは決して昆虫ではなく、大型の齧歯類、マーモット (Marmota) を指しているのではないかといわれています。
(ヒマラヤマーモット (Himalayan marmot))
(image credit by Wikicommons)
生息域の一致、地中に巣穴をほって棲息する性質、体長は55センチほど、マーモットが「アリ」ではないことを除けば、そのステータスはヘロドトスの言葉にすべて合致します。
しかしヘロドトスがそれを「アリ」と表現している以上、やはりそれはアリではないのか?もしくはアリではないにしても昆虫なのではないか?そう思うはずです。
確かにその通り。
しかしこれにも説明がつくといいます。
現地ではマーモットを比喩的に「山岳地帯ののアリ」という呼び名で呼んでいたのです。
日本語で動物を漢字で書くとき、例えばフグを「河豚」、イルカを「海豚」、ナマコを「海鼠」というようにフグもイルカもブタではありませんし、ナマコもネズミではありません。
これと同じことが起きたと考えれば何ら不思議ではありません、あくまで比喩的な表現です。
現地の言葉で「山岳地帯のアリ」と呼ばれるものを自国の言葉に翻訳 (直訳) した結果、本物の昆虫の「アリ」として伝えられた可能性が高いのではないか?というわけです。
そしてもうひとつの説、実際にそれはアリ、もしくはアリと姿が大変似ているシロアリという説です。
アリもシロアリも決してキツネほどの大きさはありませんが、あるオーストラリアのシロアリの巨大なアリ塚の成分を調査したところ、一部地域では非常に砂金の含有量が多いことがわかりました。
その地域の砂をランダムに掘った砂金の含有量よりも、蟻塚に含まれる砂金の含有量が遥かに多いことから、意図的に砂金を集めている可能性が高いという研究結果が出ました。
(関連記事)
0 件のコメント:
コメントを投稿