2019年9月29日日曜日

ゴキブリを意のままに操る ~ エメラルドゴキブリバチ


■ゴキブリをゾンビ化 ~ エメラルドゴキブリバチ

東南アジアやアフリカなど、熱帯地域に生息するジガバチ (セナガアナバチの一種) の仲間に、エメラルドゴキブリバチ (Emerald cockroach wasp, Ampulex compressa) というハチがいます。

その名にエメラルドを冠している通り、グリーンを基調とした金属光沢が美しく、英語圏ではジュエル・ワスプ (jewel wasp, 「宝石蜂」) なる別称も持ちます。

エメラルドゴキブリバチは狩りを得意とするジガバチのグループに所属し、また、その名前の一部に「ゴキブリ」を冠していることから想像できる通りゴキブリを狩るハチです。

ジガバチの仲間は狩った獲物を地中の巣穴に運び、卵を産みつけ生まれてくる子供たちの食料とします。

即ち、エメラルドゴキブリバチはゴキブリを狩り、このゴキブリを子供たちの食料源とするのです。

ただし少々問題があります。

エメラルドゴキブリバチは22ミリほどの大きさですが、狩りの対象であるゴキブリが自らよりもからだの大きいワモンゴキブリ (Periplaneta americana) だからです。

しかも殺してしまってはいけません。

生まれてくる子供たちのために、生かさず殺さず、仮死状態の新鮮なゴキブリを巣穴まで運ぶ必要があります。

どうやって運びましょう?

そこで考えついたのが「脳外科手術」です


エメラルドゴキブリバチは対象のワモンゴキブリを見つけると、その大きなアゴでゴキブリの身動き取れないようにし、まずは1度目の注射を打ち込みます、麻酔です。

患者が暴れていては手術は出来ません。

この麻酔により患者を大人しくさせ、ゆっくりと脳外科手術に取り掛かるのです。

2度目の注射はゴキブリの頭部めがけてですが、非常に繊細なものとなります。

というのも頭部に差し込んだ針で、ゴキブリの脳内の「逃避反射」を司る神経細胞を破壊すべく、その部位を探し当て、そこに2度目の毒液を注入する必要があるからです。

術後、麻酔のせいもありぐったりとしていたゴキブリですが、しばらくすると元気を取り戻します。

術後のゴキブリはすばしこかった動きが緩慢となり、そもそも自らの意志で動き回らなります。

どうやら手術は成功したようです。

手術の成功を見るや、術後、離れて様子を見ていたエメラルドゴキブリバチはゴキブリの元へ戻ってきます。

すっかり穏和になったゴキブリは、エメラルドゴキブリバチを見ても逃げようとも格闘しようともしません。「逃避反射」が破壊されているからです。

ゴキブリは自分の判断でうまく行動できなくなっており、エメラルドゴキブリバチはそんな不憫なゴキブリに手を差し伸べます。

その光景は、まるで怪我をさせておきながら一度は現場を去り、介抱のために犯行現場に戻ってきた、自作自演の犯罪者のようです。

しかしゴキブリにとってそんなことはどうでもいいようです。

ゾンビ化」されたゴキブリは、まるで生まれたてのひな鳥が母親にそうするように、エメラルドゴキブリバチに手を引かれ (触角を引っ張られ)、「母」の促すままにある場所へと導かれます。

もちろんそれはエメラルドゴキブリバチの母親が、自分の子供のために用意しておいた地中の巣穴です。

面倒くさい一連の手術は、重くて巣穴まで運ぶことのできないゴキブリを、「ゾンビ化」させることによってゴキブリ自らの足で巣穴まで歩かせるためのものだったのです。

なんの疑いも持たずゴキブリは巣穴の奥深くへと連れてこられると、腹部に卵を産み付けられます。

この瞬間こそゴキブリが逃げる最後のチャンスです。

しかしゴキブリは逃げようと思えば逃げられるのにやはりそうはしません。

まるで母親から次の指示を待っているかのように大人しくそして従順だからです。

エメラルドゴキブリバチは卵を産み付けると自分だけ地中からはい出て、巣穴の入り口を砂で覆ってしまいます。

これでもうゴキブリは2度と日の光を見ることはありません。

エメラルドゴキブリバチにぐずぐずしている暇はありません、次なる犠牲者 (ワモンゴキブリ) を探しに行かなければならないからです。

1匹のエメラルドゴキブリバチの母親は、一生の間、およそ1ダースものゴキブリに卵を産み付ける必要があるからです。

卵を産み付けられて3日後、エメラルドゴキブリバチの幼虫が卵から孵ると、母親が用意してくれたゴキブリの外骨格に穴を開けゴキブリの体内に侵入します。

ゴキブリは生きているにも関わらず、そして自由に動き回る能力を持っているにも関わらず、なんの抵抗も示しません。

ただ黙ってエメラルドゴキブリバチの幼虫に自分の体を提供し続けます。

生まれながらに最善の食べ方を知っている幼虫は、ゴキブリを絶命させることなく、毎日毎日生きたままの新鮮なゴキブリの内臓を食べ続けることが出来ます。

生きたゴキブリを食べ続けて8日後、エメラルドゴキブリバチの幼虫はゴキブリの体内でサナギになります。

そしてこのころ、時を同じくして1週間以上もの間、生きたまま食べ続けられるという過酷な使命を終えたゾンビゴキブリは静かに息を引き取ります。

ゴキブリが死して4週間後、エメラルドゴキブリバチはまるでゴキブリの生まれ変わりのように、ゴキブリの体を乱暴に突き破ると、その美しいエメラルド色の姿を現します。

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