■とんでもない遺体安置所の番人 ~ エウデルス・セト
エジプトの破壊神セト (Set) を種小名にもつ寄生蜂、エウデルス・セト (Euderus set)。
通称、クリプト・キーパー (crypt-keeper wasp)、「穴蔵の番人」とか「埋葬地 (遺体安置所) の番人」とかそういった意味です。
クリプト・キーパーは体長数ミリのとても小さいハチですが、かれらの宿主に対するマインド・コントロール、即ちゾンビ化は独特で凄まじいものがあります。
クリプト・キーパーが寄生するのは、なんと相手も寄生蜂で、知られているだけで6種類のタマバチの仲間に寄生することが知られています。
(image credit by News Network)
タマバチの幼虫が作った樫の木の「虫こぶ (植物の一部が昆虫の寄生によりコブ状に発達する突起)」に、クリプト・キーパーは卵を産み付けます。
虫こぶの中で孵化した幼虫は、タマバチに寄生し体をのっとります。
のっとられたタマバチは成長が早まり、通常よりも早く成虫となり、「虫こぶ」の内部から穴を開けて外界へ飛び立とうとします。
そう、飛び立とうとするのですが、、、あと少しのところで飛び立つことが出来ません。
このとき自分で掘り進んだにもかかわらず、この脱出用の穴は自分のサイズよりも一回り小さいものなのです。
その結果どうなるか?
頭部が出口付近でひっかかり前にも後ろにも進めなくなってしまいます。
あわれタマバチは生きたまま後方からクリプト・キーパーに体を食べられ、最後は出口付近で引っかかっていた頭部を食い破られクリプト・キーパーの成虫が飛び出してきます。
この頭部が引っかかる絶妙の「小さな穴」を開けさせるメカニズムは解明されていませんが、少なくとも2つの利点があるようです。
ひとつは身動きできなくさせることにより自由かつ安全にタマバチを食べられること、そしてもうひとつは固い樫の木に穴を開ける手間が省けること。
タマバチの体のほうが樫の木よりはるかに柔らかく、もしタマバチが穴を開ける前に死んでしまった場合、多くのクリプト・キーパーはこの虫こぶ内に閉じ込められそのまま死んでしまうということです。
樫の木を食い破れる強靭な体に進化させるよりも、はるかに面倒そうなマインドコントロールの進化を選択しているのが不思議なところです。
(参照サイト)
NEWS NETWORK
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