■長崎に現れる七本腕のタコ ~ 蛇タコ (ヘビタコ、ヘビダコ)
長崎には陸上ではヘビ、海に入るとタコになる生物、「蛇タコ (Snake-octopus / Hebi-tako)」の伝承があるといいます。
タコに変身 (というか本来の姿がヘビ・タコどちらなのか不明ですが) した時の体長は30センチほどと小柄、特徴的なのは腕 (足) が7本というところ。
山口敏太郎さんの著書「本当にいる 日本の未知生物案内」によれば、この蛇タコの伝承により「地元の人は7本足のタコが獲れても絶対に食べない」とのこと。
この「地元」が長崎県以外に手掛かりがなくどこなのか分からなかったのですが、「千々石(ちぢわ)deその日暮らし~長崎県雲仙市千々石町」さんによれば、この伝承があるのは対馬、平戸、五島 (ごとう) のようです。
ちなみに、どう転んでも蛇タコの正体には見えませんが、7本腕 (足) のタコは実在します。
もちろん腕を失って7本なのではなく、生まれつき7本腕のタコで、和名をカンテンダコ (Haliphron atlanticus) といい、英名はその特徴的な腕の数そのままにセブン・アーム・オクトパス (Seven-arm octopus) です。
(カンテンダコ)
(image credit: Wikicommons)
腕の数が奇数だなんて信じ難いですが、実際は通常のタコと同じ8本腕で1本が右目下の袋の中に隠れており目立たないため7本に見えます。
体長1メートル以上に育つ大型のタコで、タコの最大種であるミズダコ (Enteroctopus dofleini) と同等の最大3.5メートルの個体が発見されたことがあります。
さて、蛇タコに話を戻しましょう。
ヘビからタコに、タコからヘビに自在に変身できる、なんて生物は到底実在しそうにもありませんが、メスのムラサキダコ (Tremoctopus violaceus) はその正体として幾ばくかの可能性はあるかもしれません。
(ムラサキダコ)
(image credit: YouTube/Joseph Elayani)
英名でブランケット・オクトパス (Blanket Octopus) と呼ばれるこのタコは、メスのみ最大3メートルの長大なブランケット (被膜) を腕の間に張り、その特異なシルエットは奇妙なヘビの伝説を生んだかもしれません。
また、生息域から考えて可能性は限りなく低いですがミミックオクトパス (Thaumoctopus mimicus) も一応候補に入れておきましょうか。
ミミックオクトパスはインドネシア周辺にのみ棲息する実在するタコで、その名 (「擬態するタコ」) の通り、タコの中でも最も擬態に優れた種です。
ミミックオクトパスの擬態の特徴は、他のタコが岩や海底の砂等、環境に擬態するのではなく他の生物に擬態することです。
(アオマダラウミヘビに擬態したミミックオクトパス)
(image credit: YouTube/National Geographic)
しかも、その擬態できる種類は豊富でヒラメ (シマウシノシタ) やカレイ、ミノカサゴ、エイ、クラゲ、カニ、シャコ、イソギンチャク、ホヤ、ヒトデ、サンゴ、チューブワーム等々、そして今回話題にしたウミヘビ (特にアオマダラウミヘビ / Laticauda colubrina) にも擬態します。
この数々の擬態はディフェンス、オフェンス共に有効で (多くはディフェンス) 、有毒腫に擬態することにより天敵を遠ざけることから、他の生物の仲間に擬態し油断させて近づき捕食する等、目的に合わせその優れた擬態能力をいかんなく発揮します。
(参考文献)
「本当にいる 日本の未知生物案内」 (山口敏太郎著)
(参照サイト)
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