シーモンキーの話題をしたので、シーモンキーことアルテミア (Artemia) のふるさと、グレート・ソルト湖 (Great Salt Lake) のUMAのお話をしましょう。
グレート・ソルト湖はアメリカのユタ州にある湖です。
平均水深は5メートル程度ですが、南北に細長く、なんとその長さ120キロにも及びます。
ソルト湖の名の通り塩湖です。
海水の塩分濃度は平均して3.4%程度ですが、グレート・ソルト湖の塩分濃度は海水よりはるかに高く、5~27%、上記の通り非常に浅い水深のため、旱魃 (かんばつ) 等による水量変化に伴い塩分濃度が大きく上下します。
さらに場所によっても大きく塩分濃度が異なるそうです。
時期によっては死海の塩分濃度 (34%) と大差なく、ほとんどの水生生物は生息できる環境にありませんが、これをものともしないのが前出のアルテミアです。
アルテミアはエビに似た1~2センチ程度の小さな甲殻類で、世界中の塩湖に生息しています。
アルテミアの塩分耐性は非常に優れており、海水の10倍 (34%) でもものともせず、50%ぐらいまでいけるともいわれています。
何を隠そうアルテミアの英名はブライン・シュリンプ (Brine shrimp)、直訳すると「塩水のエビ」なんです。
ほかに生息しているのはミギワバエの一種で、ミギワバエも英名はブライン・フライ (Brine fly)、つまり「塩水のハエ」という意味です。
まあミギワバエの幼虫は塩水湖どころか、原油の中、温泉、アルカリ湖等、種類によって信じられないような環境に生息しています。
そんなわけで、この湖では魚類や両生類、水生爬虫類等の生息が確認されただけでビッグニュースとなります。
ところが、彼ら全部すっ飛ばして、この湖には巨大な怪物の目撃談があります。
大別して2種類のUMAの目撃情報があり、ひとつは体がワニ、頭部がウマといういかにもUMAらしいハイブリッド・アニマルタイプ、そしてもうひとつがイルカのような姿をしたものです。
姿こそ全然違えど、グレート・ソルト湖で目撃されるUMAをひっくるめてノース・ショア・モンスター (North Shore Monster) と呼ばれます。(オールド・ブリニ― (Old Briney) という愛称もあります)
前者は、水浴びをしに来た野生動物でも見間違えたのだろうという大方の予想ですが、目撃者はバーンズ・アンド・カンパニー・ソルト・ワークス社 (the Barnes and Co. Salt Works) の従業員複数名によるもので、単独での目撃者ではないことから、なにかしら大型の生物を目撃したのでしょう。
一見面白みのない後者、イルカのような姿をしたUMAのほうが実は興味深いんです。
(まるで海岸のようなグレート・ソルト湖の湖畔)
(image credit by Wikicommons)
というのも、1890年代、イギリス人のジェームズ・ウィッカム (James Wickham) なる人物が、太平洋で捕獲された小さなクジラのオスとメス1頭ずつをグレイト・ソルト湖に連れてきたという「伝説」があるからです。
前述の通り、グレート・ソルト湖は場所によっても塩分濃度が異なりますが、連れてこられたクジラたちは比較的海の塩分濃度に近いグレート・ソルト湖北岸の浅瀬によって隔てられた場所に放たれました。
しかし、かれらはやすやすとラグーンから逃げ出し、グレート・ソルト湖を自由に泳ぎ回っていたといいます。
ラグーンからまんまと逃げ出したクジラのペアはその後何度も目撃され、やがて彼らの子供と一緒に泳いでいる姿まで目撃されるようになります。
え?目撃されたのはイルカっぽいやつでしょ?クジラじゃないのでは?
体長だいたい4~4.5メートル当たりを境に大きいものをクジラ、小さいものをイルカと呼んでいるだけでクジラとイルカの生物的な違いはありません。
しかしそんなことより、現実問題、塩湖にクジラが生息、そんなことが可能なのか?
いくら海と塩分濃度が近いところに放たれたといっても最低でも5%以上、それどころか実際はラグーンを離れ自由に動き回っていますから海よりもはるかに高い塩分濃度で生息していることになります。
また、イルカにしてもクジラにしても平均水深が5メートルに満たない圧倒的に浅い水深での暮らし。
そしてお次は食事の問題。
(これだけたくさんのアルテミアがいれば何とか)
(image credit by Wikicommons)
この湖、なーんも生息していないじゃん、、、と思いきや、ヒゲクジラ類であればプランクトンが主食、好都合なことにアルテミアがたくさん生息しているので、それでなんとか。
ジェームズ・ウィッカム氏のクジラを放った話 (伝説) は正直なところどこまでが本当の話なのか (そもそもウィッカム氏が実在するのか?) は分かりません、が、伝説のクジラのペア、浅瀬もご飯も塩分濃度もクリアできていれば、、、
もしかするといまでもどこかでひっそり、その子孫が暮らしているかもしれないんです。
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