■競売にかけられた氷漬けの猿人 ~ ミネソタ・アイスマン
見世物になっていたUMAの死骸があります。
興行師フランク・ハンセン (Frank Hansen) なる人物が1960~1970年代に北米のカーニバルに持ち歩いた氷漬けの猿人、ミネソタ・アイスマン (Minnesota Iceman) です。
シベリアの永久凍土で発見され、実際の所有権は匿名の珍品コレクターの大金持ちであり、ハンセン氏は管理を任されているだけということでした。
しかしハンセン氏の言動はあまり当てにならず、アイスマンはとあるミネソタの山間部で友人と狩りをしていた時にたまたま遭遇し射殺したものとか、氷漬けのまま海に浮いているのを発見したとか、ころころバックグラウンドが変わります。
尚、ハンセン氏の主張によればアイスマンは、ネアンデルタール人と現生人類を繋ぐミッシングリンクという触れ込みでした。
(ミネソタ・アイスマン)
(image credit by Wikicommons/Public Domain)
これはかつてネアンデルタール人が進化し現生人類となった、という当時の進化論に基づいており、実際はネアンデルタール人と現生人類は同時代に共存していました。
アイスマンは氷塊に閉じ込められており、カーニバル等で展示の際は「この標本はオスで人間に似ており、身長は6フィート (約1.8メートル)、非常に毛深い。手と足は大きく、濃褐色の頭髪は長さ3~4インチ (約7.5~10センチ)、鼻は平たい」と記載されていました。
これに興味を持ったのが未確認動物学者のアイヴァン・T・サンダーソン (Ivan T. Sanderson) 氏、ベルナール・ユーヴェルマンス (Bernard Heuvelmans) 氏です。
ハンセン氏に頼み込み、絶対に触れない、という条件でこのアイスマンの調査を許可をもらいます。
分厚い氷塊に閉じ込められているので氷越しでの調査ということになりますが、至近距離での3日間の調査で大きな収穫を得ました。
アイスマンはおそらく後ろから頭部を撃ち抜かれたことで眼球のひとつは無くなっており、また片腕は骨折しているようでした。
毛深い以外は極めて人間的であり、溶け出た氷を通し明らかに生物の腐臭がしました。
これをもって二人は間違いなくアイスマンは本物の猿人であると断定しました。
サンダーソン氏はこの猿人はベトナム戦争中、ベトナムの森林で射殺されアメリカに運びもたれたものと大胆な推測をたて調査を終了します。
二人の調査発表により、カーニバルの余興程度だったミネソタ・アイスマンの存在は全米に知れ渡ることになりました。
実はとんでもない価値があるものでは?
多くの意見が飛び交い、ゴム製の人形にすぎないといったものからクロザルの一種である、さらには本物の人間の遺体を細工した可能性がある、といったものまでありました。
確かに1.8メートルもあるサルは知られておらず、腐臭がした、ということからもハンセン氏に殺人疑惑まで浮上しましたがFBIはばかばかしいと一蹴し取り合わなかったようです。
サンダーソン氏はイギリスの霊長類学者ジョン・ネイピア氏にアイスマンを調査することを勧めます。
FBIのように一蹴するかと思いきや、著名な霊長類学者ですがビッグフット研究の第一人者でもありアイスマンの調査には前向きでした。
しかし調査を頑なに拒むハンセン氏を怪しく思い、彼の経歴を辿ったところ、どうやらアイスマンの作成を依頼した形跡があることがわかります。
ネイピア氏はアイスマンの調査をすることなく
「アイスマンはゴム製の人形」と結論付け、アイスマンとは訣別します。
しかしアイスマンの氷を溶かして調べない限りそれは確実ではありません。
その願い叶わず、ハンセン氏はアイスマンともども表舞台から消えてしまいます。
それから長い年月が経ち、人々の心からもすっかり忘れ去られた2013年、ミネソタ・アイスマンは突如姿を現します。
しかもそれは思いがけないところでした。
なんと世界最大のオークションサイトebay (イーベイ) で競売にかけられていたのです。
それはミネソタ・アイスマンを似せたフェイク品ではなく正真正銘、ハンセン氏が持ち歩いたあの伝説のミネソタ・アイスマンでした。
それはもちろん (?) 本物の人間の遺体を細工したものではなく、作成されたものでした。
残念ながら製氷機能は故障しており氷付けのアイスマンは表現できず、人形と製氷機能の壊れた器での出品でした。
それにしても氷漬けとはいえ多くの人が見ただけでは人形と断定できないほど精巧な造りをしていたのは驚きです。
なにせハンセン氏に殺人の疑いすらかけられたほどですから。
しかしそれもそのはず、ミネソタ・アイスマンは映画 (ディズニー関連とも) の小道具を作成するプロの造形師によって作成されたものだったようです。
で、オークションの行方は?
最低落札価格2万ドル (約220~300万円) には届かなかったものの、ミュージアム・オブ・ザ・ウィアード (Museum of the Weird) のオーナーにによって落札されました。
ミュージアム・オブ・ザ・ウィアードとはその名の通り未確認動物のミイラや小道具をはじめ奇妙 (ウィアード) なものを展示している博物館 (ミュージアム) です。
現在この博物館を訪れればいつでもあの伝説のミネソタ・アイスマンに会うことができます。
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アイスマンの存在は知ってたけど
返信削除オークションに出たのは初耳でした
最近更新が毎日あってねるま
返信削除最近更新が毎日あって寝る前に読めるので嬉しいです。
返信削除UMAファン時代から読んでいます
いつもありがとうございます。