20年以上も前の話ですが、カザフスタンが謎のクモに脅かされているといったニュースがプラウダ (ロシアのニュースサイト) に掲載されました。
プラウダは基本的にはふつうのニュースサイトではありますが、たまに突拍子もないパラノーマルネタも掲載されることもあり、なかなか面白いサイトです。
とはいえ、現在のウクライナへの軍事侵攻によりそれどころではないようですが。
政治的な話は取り敢えず置いておいて、このクモの話もパラノーマル系のそっちのお話かと思っていましたがどうやら違うようです。
2001年6月ごろ、カザフスタンののカラガンダ (Қарағанды) で地元の住民が謎のクモに咬まれ入院したことのがことの発端、治療した医師はカラクルト・スパイダーに咬まれたものと判断しました。
カラクルト・スパイダー (Karakurt spider) と聞くと「?」となってしまいますが、ゴケグモ属 (Latrodectus) を指す英名のひとつで、一般的にはクロゴケグモ (Latrodectus mactans) やジュウサンボシゴケグモ (Latrodectus tredecimguttatus) を指します。
「カラクルト」という単語はトルコ語に由来し、英語では一般的に「黒いオオカミ」や「黒いワーム」と訳されますが、単純に「黒いクモ」という意味ではないかともいわれています。
クロゴケグモは大きくても体長は1.2センチ程度、足が長いので全長は4センチ弱にもなります。
つやのある真っ黒なボディに腹部の赤の砂時計マークがよく映えます。
(ジュウサンボシゴケグモ)
猛毒殺人クモとして一時日本中を席巻したセアカゴケグモ (Latrodectus hasseltii)、名前で想像がつくとは思いますが同じ仲間です。
クロゴケグモやジュウサンボシゴケグモはセアカゴケグモの比にならないほど毒性が強く、血清がなく適切な処置が難しかった過去にはかなりの死者 (致死率約5%) を出しました。
現在でも時折ラクダのような大きな生物すら殺すこともあるといわれています。
何度も紹介していますが、このゴケグモの「ゴケ」は「後家」のこと、つまり旦那さんに先立だれてしまった女性「未亡人」を指す言葉です。
一般的に「後家」や「未亡人」という単語は差別用語・不適切用語と考えられており、そのため現在では耳にする機会のない言葉であり、このクモの名前を聞いてもピンとこない人が多いことでしょう。
ゴケグモの仲間は交尾後にオスを食べてしまうことに由来します。
自分で食べておいて後家もへったくれもないですが、実はいうほどオスが食べられる率は高くないと言われており (といってもやはりたまに食べる)、一種の都市伝説といえます。
(クロゴケグモ。背中 (腹部) の真っ赤な砂時計がトレードマーク)
(original image credit by Wikicommons)
さて、カザフスタンのカラクルト・スパイダーことクロゴケグモに話を戻しますが、医師がクロゴケグモと結論付けたにもかかわらず、そうではないのでは?と怪しまれている理由のひとつにクロゴケグモがカラガンダ地方にに生息していないことが挙げられます。
といっても、日本に生息していないかつ輸入した記録もないのにヒアリやセアカゴケグモ、それにクロゴケグモだって日本に入ってきています。
だからそんなの全然あり得るんじゃないの?と思うのですが、カラガンダの気候はクロゴケグモにとってあまり適切ではなく定住しにくいというのです。
さらに咬傷による症状も時間の経過とともにクロゴケグモによるものから逸脱したものが見られたというのです、具体的には発熱、腰の麻痺、腎臓の損傷等です。
立て続けに咬傷事故も相次いだことから標本のサンプルを収集したところ、このクモはクロゴケグモに似ているものの一回り大きいというのです。
そういうわけでこのカラガンダの謎のクモは、カラガンダの気候に適応しようとして進化した (突然変異した) 生物、つまりクロゴケグモのミュータントであると結論付けられました。
しかし、その後、一切の続報を見たことがないことからも、この考えは誤っていたのではないかと思われます。
ちなみにミュータント・カラガンダ・クロゴケグモにも通常のクロゴケグモの結成が効くそうです。
(参照サイト)
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