■KFCの都市伝説 ~ ミュータント・チキン
ファストフード系の大手チェーンは都市伝説の温床です。
まあ実際はどうか別にして「ファストフード = 健康」といったイメージを持つ人はおそらく少なく、元からネガティブな印象が植え付けられているためによく考えればあり得ないような都市伝説にもそれなりの信憑性を感じてしまうのでしょう。
日本のファストフードといえる回転寿司にも都市伝説がありました。
(ウミヘビの握り?)
「書いてイン寿司のアナゴの握りにはウミヘビが使われていているので食べるのは危険!」
アナゴに魚類のウミヘビ科 (Ophichthidae) の代用魚が使われているのを、爬虫類のウミヘビ科 (Hydrophiidae) が使われているとおそらく混同し、それをサイトで流布したのが広まったのでしょう。
他にもマグロ ⇒ アカマンボウ、マダイ ⇒ ティラピア、サケ ⇒ サーモン等々、最後のサケとサーモンに至っては代用魚ではなく、サケ (シロザケ) はアニサキスがいて生で食べられないので、サケの代用がサーモンではなく、元からサーモンはサーモン (トラウトサーモン等) です。
大手チェーンが代用魚を使う場合、かなりの量を安定して継続的に各店舗に供給する必要があり、アカマンボウを揃えるよりマグロの方が圧倒的に楽ですし、マダイは養殖により今では安価で手に入るためティラピアで代用する意味はありません (マダイが高価な頃はあったかも?)。
この都市伝説はそれなりに市民権を得て、おそらく今でも若干名はそのまま信じたままかもしれません、都市伝説の楽しいところです。
さてケンタッキー・フライド・チキンの都市伝説に入りましょう。
ひとつはネズミの丸揚げ (Kentucky Fried Chicken Rat Tail)。
チキンテンダーを3ピース買ったデヴォライズ・ディクソン (Devorise Dixon) なる男性が、食べたところゴムみたいな食感で、チキンテンダー全体をよく見てみると、自分が食べたのはネズミの尻尾部分であることに気付きました。
そこで証拠写真付きで以下のようにフェイスブックに投稿。
(image credit by Devorise Dixon)
「ファストフードは絶対に食べるな!!!
昨日KFCでチキンテンダーを3ピース買ってきたんだ、んで齧ってみたら固いしゴムみたいな食感なんだ。
今口に運んだチキンテンダーをよく見てみると、それは尾のついたネズミと気付いて、全身に鳥肌がったよ。
それ以来ずっと気分が悪いんだ、買ったのはカリフォルニア州コンプトンのウィルミントン120番地。
こんなチキンは見たことがないし、ああキモい!!!」
証拠の写真と店舗名までさらしたものだから、KFCは (おそらく仕方なく) 第三者機関の研究所にこのサンプルを送り、たまたまネズミに似た形状に揚がったチキンテンダーであることを証明しています。
まあそれでも陰謀論者は第三者機関もグルでウソをついているに違いない、と信用しないでしょうが。
実際、ディクソン氏もこの結果をもってしても謝罪しませんでした。
この騒動には実は下地があり、元から「ケンタッキーでネズミの丸揚げが提供されたことがある」という都市伝説が広く知られているため、そういった先入観から本物のネズミと思い込んだのでしょう。
そしてもうひとつがミュータント・チキン説。
これはマクドナルドの肉がミミズの肉やミュータント肉を使っている、という都市伝説のケンタッキーバージョンといえますね。
ケンタッキーが会社として求める理想のニワトリは美味しくかつ可食部の多い品種、そこで遺伝子操作により羽毛も頭部もない肉塊のようなミュータント・チキンを創ることに成功したというのです。
頭部がないのにどうやって給餌 (きゅうじ) するのか?それは点滴さながらミュータント・チキンの体 (胃部) に直接チューブを差し込み解決しました。
人気部位であるモモ肉やチキンウイングは脚を2本ではなく4~5本生えるように、羽も1対ではなくそれ以上生えるよう遺伝子操作されているため、今までより効率よく人気部位を得ることができます。
この話は意外と手が込んでおり、ケンタッキーの正式な会社の名称は現在KFCコーポレーション (KFC Corporation) ですが、1991年まではケンタッキー・フライド・チキンでした。
ミュータント・チキンは遺伝子操作されており政府より「チキン」の名を使うのを禁じられ (圧力をかけられ) て名称変更した、という情報も付加させることにより、より信憑性を増させることに成功。
元々ミュータント・チキン使用の都市伝説はありましたが、中国の企業3社がこれは都市伝説ではなく事実であるとSNSに投稿したことで裁判にまで発展しました。
KFCはニワトリの仕入れ先であるタイソン社 (Tyson) やピリグリム・プライド社 (Pilgrim’s Pride) 等を公表することで対抗し、全面勝訴、中国企業3社には賠償命令が下りました。
UMAファンにとっては幸か不幸かミュータント・チキンは存在しないことが証明されてしまいました。
いやいやそうじゃない、政府とのやり取り・裁判を含めこれらも市民を欺くための茶番だと陰謀論を推すのもまた良き。
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そういえば食肉用の品種として代表的なブロイラーは長年にわたる選別交配、品種改良の結果として凄まじい成長スピード、肉量を得ているのもこの都市伝説に関係しているかもしれないですね。
返信削除資料によっては44年間で1800gのブロイラーを生産するための期間と飼料量がおおよそ1/3に減少した、とされています。