夏なのでセミの話題でもしようかと思います。
セミかよ~、興味ね~よ~、勘弁してくれよ~、怪物頼む怪物!という声が聞こえますが、今日はセミで行くと決めたのでセミで行きます。(笑)
今回は旧サイト (UMAファン) でも取り上げた13年ゼミと17年ゼミをアップデートしてお送りいたします。
北米にのみ生息する13年ゼミ (13-year cicada) と17年ゼミ (17-year cicada) のマジシカダ属 (Magicicada) はこの長いサイクル (周期) でしかお目にかかれないことから、種は異なりますが「周期ゼミ (Periodical cicadas)」と総称されます。
日本のセミは種類によってもちろん異なりますが、例えば2~5年ほどで成虫になるといわれていますが、もっとも一般的かつ見慣れたセミのひとつ、アブラゼミ (Graptopsaltria nigrofuscata) が例えば5年周期だったとします。
アブラゼミは5年に一度だけしかお目にかかれない、なんてことはありません、今年産んだ卵は5年後に生まれますし、来年生まれたアブラゼミはその5年後、という風に、毎年見られます。
ところが、その地域ごとに周期ゼミは13年ごと、17年ごとにしかお目にかかれません。
一斉に発生し、一斉に交尾し、一斉に卵を産み、そしてそれぞれ12年、16年間というなが~い沈黙に入ります。
周期ゼミのサイクルは13と17という素数 (注1参照。1を除いた、約数が自身と1のみの自然数) であることから、「素数ゼミ」とも呼ばれます。
(注1:素数。13だとすると1と自身の13でしか割り切れません。17も同様。では12だとしたら? 1と自身の12に加え、2、3、4、6でも割り切れるので素数でないことがわかります)
立証されているわけではないと思いますが、このサイクルが素数であることは偶然ではないという説があります。
(17年ゼミの2種 (Magicicada septendecim, Magicicada cassini) が同時に発生したら折り重なるように!)
(image credit by Wikicommons)
はるか昔、いろいろな周期のセミが存在したとします。
ここでは12年ゼミから1年単位で18年ゼミまで7種のマジシカダ属の周期ゼミがいたものと仮定します。
例えば、12年ゼミと15年ゼミだけをピックアップして、この異なるサイクルの2種が同時に発生した年、ペアにある組み合わせは3種類あります。
12年ゼミ同士のペア、15年ゼミ同士のペア、12年ゼミと15年ゼミのペア。
12年ゼミ同士、15年ゼミ同士のペアは問題ありませんが、12年ゼミと15年ゼミの交雑種ペアは異なるサイクルを持っているため、その子孫はサイクルがくるってしまう可能性が考えられます。
12年でも15年でもない13年や14年サイクルで生まれてしまった場合、本来のサイクルから外れてしまったがため、一斉にみなが出てくる1年後2年後、また1年前2年前に成虫になってしまい、ペアになる相手が少なく子孫を残せない可能性が高くなります。
そういうわけで、交雑を避けるため、異なるサイクルを持つセミ同士は同一の年に生まれるのは得策ではないように感じます。
そこで有利になるのが約数の少ない素数をサイクルに持つセミたちではないか?という説です。
上記で上げた、12年ゼミから18年ゼミが存在した場合、素数サイクルをもつのは13年ゼミと17年ゼミのみです。
話を単純化させるため、この7種のセミがある年に一斉に発生したとし、その後、それぞれのセミが何年後に同時に発生するかを見てみましょう。
それぞれのセミが次に同時に発生する最小周期は、それぞれの組み合わせの最小公倍数と一致するため、以下の通りとなります。
12年ゼミ+13年ゼミ 156年周期
12年ゼミ+14年ゼミ 84年周期
12年ゼミ+15年ゼミ 60年周期
12年ゼミ+16年ゼミ 48年周期
12年ゼミ+17年ゼミ 204年周期
12年ゼミ+18年ゼミ 36年周期
13年ゼミ+14年ゼミ 182年周期
13年ゼミ+15年ゼミ 195年周期
13年ゼミ+16年ゼミ 208年周期
13年ゼミ+17年ゼミ 221年周期
13年ゼミ+18年ゼミ 234年周期
14年ゼミ+15年ゼミ 210年周期
14年ゼミ+16年ゼミ 112年周期
14年ゼミ+17年ゼミ 238年周期
14年ゼミ+18年ゼミ 126年周期
15年ゼミ+16年ゼミ 240年周期
15年ゼミ+17年ゼミ 255年周期
15年ゼミ+18年ゼミ 90年周期
16年ゼミ+17年ゼミ 272年周期
16年ゼミ+18年ゼミ 144年周期
17年ゼミ+18年ゼミ 306年周期
これを周期の長い順に並べ替えてみます。
17年ゼミ+18年ゼミ 306年周期
16年ゼミ+17年ゼミ 272年周期
15年ゼミ+17年ゼミ 255年周期
15年ゼミ+16年ゼミ 240年周期
14年ゼミ+17年ゼミ 238年周期
13年ゼミ+18年ゼミ 234年周期
13年ゼミ+17年ゼミ 221年周期
14年ゼミ+15年ゼミ 210年周期
13年ゼミ+16年ゼミ 208年周期
12年ゼミ+17年ゼミ 204年周期
13年ゼミ+15年ゼミ 195年周期
13年ゼミ+14年ゼミ 182年周期
12年ゼミ+13年ゼミ 156年周期
16年ゼミ+18年ゼミ 144年周期
14年ゼミ+18年ゼミ 126年周期
14年ゼミ+16年ゼミ 112年周期
15年ゼミ+18年ゼミ 90年周期
12年ゼミ+14年ゼミ 84年周期
12年ゼミ+15年ゼミ 60年周期
12年ゼミ+16年ゼミ 48年周期
12年ゼミ+18年ゼミ 36年周期
組み合わせは21種類、13年ゼミと17年ゼミは周期の長いほうからベスト12にすべて収まります。
逆に言うと周期の短いほうから数えてワースト9には含まれません。
当然といえますが、約数の少ない素数のサイクルを持つセミのほうがはるかに交雑を避けるのに適していることがわかります。
13年ゼミは最低でも156年周期、17年ゼミに至っては最低で204年周期でしか他の周期のセミたちと同時に発生しません。
サイクルの短い交雑種は死に絶える可能性が高く、長い年月をかけて淘汰されてしまったのではないか、という説です。
参考までに12年ゼミ~18年ゼミが同時に発生した年から、次に奇跡の7種同時発生するのは100万年以上先の、1,113,840年後です。
ちなみに、12年~18年ゼミで都合よく検証していますが、その前後の11年と19年も素数であり、それはどうなのか?ということには一切お答えできません。(笑)
例えば17年以上のサイクルは幼虫期間として限界の長さであり天敵に食べられてしまうリスクの方が高い、逆に13年以下であれば他の毎年発生するセミたちのようなライフサイクルの方が生存に適している、とかなんとか、きっとなにかなにか理由があるんでしょう。(笑)
すみませんが、それについては分かりません。
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素数ゼミの考察は進化の本質に迫るようで面白いですよね。
返信削除諸説それぞれに、納得させられるのがまた面白い。