2023年4月13日木曜日

ボートに体当たり、犬を丸呑み、メンドータ湖の怪物 ~ ボジョ


■メンドータ湖の怪物 ~ ボジョ

アメリカ、ウィスコンシン州マディソンにあるメンドータ湖 (Lake Mendota) には19世紀半ばから目撃の続くレイク・サーペント、ボジョ (Bozho) がいます。

このボジョという名前はアメリカの先住民族アルゴンキン族 (Algonquin people) の言語ではウィネボジョ (Winnebozho)、ポタワトミ族 (Potawatomi) の言葉ではマナボジョ (Manabozho) と呼ばれる英雄神の名に由来します。

初めて目撃されたのは1860年代後半、カヌーを漕いでいた夫婦が誤ってオールを「丸太」にぶつけてしまったところ、その丸太と思っていた物体は小刻みに震えながら水中に没し、それが丸太ではなく生物であったことに気付きました。

「なんらかの怪物でしたね、疑いの余地はありません」

(ミズウミチョウザメ)
(image credit by Wikicommons)

特に反撃してくるということもなく、ボジョは巨大なレイク・モンスターにも関わらず比較的穏和でいたずら好き、人間に対しフレンドリーな存在といわれるのが分かります。

しかしこうはいかなかったものがあります。

1883年6月27日、ボートに乗って休日を楽しんでいたダン夫妻 (Dunn) は、突然25フィート (約7.5メートル) もある巨大なレイク・サーペント、ボジョに急襲されます。

ボジョの真上を通り過ぎるや怪物は夫妻のボートを追いかけはじめたのです。

怪物から逃れようと必死に漕ぐもボジョの遊泳速度ははるかに速くみるみる迫ってくるとボートに体当たりをしてきました。

その衝撃はすさまじく、夫妻は湖に放り出される寸前だったといいます。

このまま漕ぎ続けても到底逃げ切れないと判断したダン氏は漕ぐのをやめ、意を決しオールを武器として持ち替えて対峙する覚悟を決めました。

ダン氏はオールで怪物を何度も何度も繰り返し殴りましたが全く効果はなくボートへの体当たりをやめようとしません。

ダン氏はボートに手斧があることを思い出し、それを握りしめると怪物の頭部めがけて振り下ろしました。

(ウォールアイ)
(image credit by Wikicommons)

致命傷を与えることはできなかったようですが、ボジョはダン氏の思いがけない反撃にひるにだのでしょう、体当たりを中断しました。

夫妻はその隙を見逃さず急いでボートを漕いで岸に逃げ着いたといいます。

この時の「怪我」が影響したのかどうかそれを知る由はありませんが、ボジョはしばらくその姿を人前に見せることはありませんでした。

しかし1890年代に入ると古傷が癒えたのでしょうか、再び行動は活発になり立て続けに目撃されるようになります。

1892年、約10年ぶりにその姿を人々の前に表すと、1897年には遊泳中の犬が丸呑みされるのを目撃、1899年にはボートに乗った二人の女性がボジョを至近距離で目撃する事件が起きました。

ラシーヌ・デイリー・ジャーナル紙 (Racine Daily Journal) によれば、このとき水中から頭を出したボジョの頭部の幅は1フィート (約30センチ) で体長は6フィート (約1.8メートル)、ボジョを見て悲鳴を上げた女性の声にボジョも驚きそのまま水中に消えていきました。

20世紀に入ると19世紀ほどの衝撃的な目撃は減り、その凶暴性は鳴りを潜め、人の足に触れたり、人々の前に突然現れて驚かせたり、カヌーをひっくり返すということはあってもダン夫妻を追い詰めたような危険で極端な行動に走ることはなくなりました。

それって単純にそれぞれの目撃が異なる生物が起こした事件では?とも解釈できます。

一番いいのはもちろんダン夫妻が目撃した25フィートのレイク・サーペントがそのままの姿で存在すること、です。

そうした期待を持ちつつ、では既知種の魚類の誤認であるとしたら?

この栄養価に富み生息する魚種の豊富な湖ではたくさんの候補が挙げられます。

(ロングノーズガー)
(image credit by Wikicommons)

細長いシーサーペント系であれば、最大5フィート (約1.5メートル) 超のノーザンパイク (Esox lucius) やマスキーパイク (Esox masquinongy)、最大3フィート (約90センチ) 超に成長するウォールアイ (Sander vitreus)、最大10フィート (約3メートル) のミズウミチョウザメ (Acipenser fulvescens)、それに最大6フィート (約1.8メートル) 超のロングノーズガー (Lepisosteus osseus) 等でしょうか。

一方、1897年の犬の丸呑み、1899年の体長に比して異常なほど頭部の幅がある目撃はそのシルエットや習性から大ナマズであった可能性があります。

意外なことに北米には他地域のような2メートル、3メートル級の巨大ナマズは生息していませんが、最大65インチ (約1.65メートル)に成長するブルーキャットフィッシュ (Ictalurus furcatus)、最大50インチ (約1.27メートル) に達する アメリカナマズ (Ictalurus punctatus) なんかが候補でしょうか。

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