■第2代内閣総理大臣が飼っていたUMA ~ 鹿犬
今回は鹿犬 (deer-dog / Shika-inu)。
自由党の党機関紙「絵入自由新聞 (えいりじゆうしんぶん)」の1886年 (明治19年) 10月31日号に掲載されたという謎の生物です。
新聞には「鹿と狗 (いぬ) の合いの子」という記載がありますが、生物学的に鹿と犬は交配不可であるため、あくまで鹿と犬の特徴を併せ持った生物といったところでしょう。
この謎の生物は道で迷っているところを近隣住民に保護されたといい、犬のように見えるものの、決してふだん見慣れているような犬のようではなかったといいます。
この謎の生物、同新聞にて
「威 (い) あつて猛 (たけ) からず勇 (ゆう) にして優 (やさ) しを云 (い) ふ」
と表現され、捕獲されても、気品があり堂々とした振る舞いであったことが記されています。
そして調べていたところ、この鹿犬、後の第2代内閣総理大臣 (在任1888年4月~1889年10月)、黒田清隆 (黑田淸隆) 氏が前年にイタリアから寄贈されたものであったことが判明します。
とても可愛がられていたものの (「深く愛し飼れしも」)、黒田氏が海外へ渡っている間、知人に預けていたものが逃げ出したというのが真相だったようです。
(イタリアン・グレイハウンド)
(image credit: Wikicommons)
さてこの生物は一体何だったのか?
前述の通り、犬と鹿のハイブリッドは不可であり、夢はありませんが時代背景からもUMAやミュータント (突然変異体) ではなく、単に当時日本ではあまりなじみのなかったエキゾチック・アニマル (異国の動物) に違いありません。
「鹿に似た犬」か「犬に似た鹿」か、それともいずれでもないかもしれませんが、警戒心低く人懐こいところから前者であった可能性が高いと思われます。
具体的にどういう部分 (大きさ、体色、その他特徴) が鹿的だったかは不明なため、その犬種は特定するのは困難です。
ただ、体の線が細く、鼻先が長くて相対的に耳が大きい犬は一般的に「鹿的」に見えるのでそういったものだったのではないでしょうか。
「鹿頭のチワワ」を意味する「ディアーヘッドチワワ (Deer Head Chihuahua)」も存在しますが、体長はせいぜい30センチ程度、当時の日本において小型犬が「威あつて」と表現されるとは考えにくく、中型~大型犬であったように感じます。
その正体は意外とシンプルにグレイハウンド (もしくはそれに近い犬種) であったかもしれません。
グレイハウンドは全般的に鹿的ではありますが、黒田氏がイタリアから譲り受けたことからイタリアに起源を持つイタリアン・グレイハウンド (Italian Greyhound) を候補のひとつに挙げておきましょうか。
(参考文献)
「本当にいる日本・世界の未知生物案内」(山口敏太郎著)
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イタグレも小さいのでイメージと合わないかも…
返信削除でも初めて見た人はびっくりするでしょうね
枝みたいな足してますもん