■人の真似をする謎の犬は実在したか!? ~ ミミック・ドッグ (ゲトゥリアン・ドッグ)
今回はミミック・ドッグ (Mimic dog)。
RPGに出てきそうな名前でいかにもUMA的ですが実はかの著名なスイスの博物学者コンラート・ゲスナー (Conrad Gesner) の「動物誌 (Historia animalium)」に登場する動物です。
ミミック・ドッグの元の名はゲトゥリアン・ドッグ (Getulian dog) といいますが、それはこの犬がミミックする (模倣する・真似る) 脳力に非常に長けていること由来します。
ミミック・ドッグはグレイハウンドやスパニエル、ブラッドハウンドといった、現在でも知られる犬種と同列に紹介されていることからも、決して幻獣として紹介されたものでないことが分かります。
まずこのゲトゥリアン・ドッグという名ですが、これは「ゲトゥリアの犬」という意であり、ゲトゥリアとはアフリカの北方、エジプトを指していると考えられています。
つまり北アフリカの動物であることがわかります。
どんな犬なのか?
ゲスナーによればその犬は猫背で全身毛むくじゃら、長い脚に短い尾、そしてハリネズミのように尖った黒い顔をしているといいます。
見たものを何でも真似ることができ、それは仕草や鳴き声ばかりか訓練されたミミック・ドッグであれば人間と共に芝居までやってのけてしまうといいます。
ゲスナーの「動物誌」の出版 (1551年) から100年余り経った1658年、イギリス人で聖職者で作家のエドワード・トプセル (Edward Topsell) の「四足獣と蛇と昆虫の歴史 (The History of Four-Footed Beasts and Serpents)」が出版されます。
実はこれはトプセルの死後に発表されたもので、彼の存命時に出版されていた「四足獣の歴史 (The History of Four-footed Beasts)」(1607年) と「ヘビの歴史 (The History of Serpents)」(1608年) をウィリアム・ジャガード (William Jaggard) により編集されたものです。
トプセルはゲスナーほどの高い動物学の知識はなかったため、この「四足獣と蛇と昆虫の歴史」はゲスナーの「動物学」をはじめ先人の文献を踏襲されたものでした。
この本にはミミック・ドッグが登場し、そしてトプセルは実際にその動物を目にしているというのです。
少なくとも17世紀初頭までは「実在」していたようです。
一体この犬の正体はなんなのか?どんな犬だったのか?
今現在この犬は存在していないようです。
世界各地から報告される犬の中にもこのような犬の報告はありません。
ふつうに考えれば「絶滅」してしまったということでしょう。
そうだとしたらとても残念なことです、是非そんな犬を見てみたかったとみなが思うはずですから。
しかしこの犬を実在すると主張した人物がいます、イギリスの作家ジョン・アシュトン (John Ashton) です。
彼は著書「動物学の奇妙な生き物 (Curious Creatures in Zoology)」(1890年) において、ミミック・ドッグの正体をプードルと提案しました。
毛がもこもこして足が長い犬、、、確かにそこら辺は合っているかも、、、
しかしあまり賛同を得られることはなかったようです。
ミミック・ドッグの最も顕著な特徴はミミックすることだからです。
ゲスナーが通常の犬種として紹介し、トプセルも見たと証言する犬。
決して幻獣ではないはず。
ミミック・ドッグは絶滅したのではなく、そもそも犬を指していないのではないか?と考えられるようになりました。
(バーバリーマカク)
(image credit: Wikicommons)
そこで白羽の矢が立ったのが霊長類です。
「猿真似 (さるまね)」という言葉がありますが実際に猿は人間の行動を真似します。
英語でも "Monkey see, monkey do" とほぼ同じ言葉が存在します。
訓練された霊長類は多芸を披露してくれます。
(アヌビスヒヒ)
(image credit: Wikicommons)
そう、やはり霊長類に違いありません。
現在ではミミック・ドッグの正体として特にバーバリーマカク (Macaca sylvanus) とアヌビスヒヒ (Papio anubis) が有力とされています。
といっても、もちろんあくまで有力というに過ぎません。
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あれ、0時にも更新されてる?!
返信削除時間間違えて予約投稿してしまいましたw
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