■人も操るマインドコントローラー寄生虫 ~ ギニアワーム (メジナ虫)
宿主 (寄生された側) をマインドコントロールする寄生虫たちを見ているとつくずつ人間でよかった、なんて思います。
しかし悲しきかな人間に寄生する生物は意外とたくさん存在します。
顔ダニのように寄生されてもそれほど害のないものから生命に危険を及ぼすものまで様々でその数200種以上。
そして人間を疑似的ではあるもののマインドコントロールすらするものもいます。
今回はその中からマインドコントローラー、ギニア・ワーム (ギニア虫, Dracunculus medinensis) の紹介です。
メジナ虫とも呼ばれますが、怪物感のあるギニア・ワーム (Guinea worm) と呼びましょう。
ギニア・ワームは線虫 (線形動物) の仲間で他の線虫と同様、その体は半透明で非常に細長くまるで透明の糸のような生物です。
ギニア・ワームはメスが人間に寄生し、ギニア虫症 (Guinea Worm Disease / GWD) を発症させます。
体長は極端な性的二形でメスが最大120センチ (平均80センチ前後) にも成長するのに対しオスは最大4センチほど、そしてこの病気を引き起こすメスがより細長く成長すること自体がこの寄生虫の厄介なところで、それは後述します。
それではギニア・ワームのライフサイクルを見ていきましょう。
まずギニア・ワームの卵が孵化できるのは淡水で、陸上であったり海水の場合、卵は孵化できず孵化しても子供は生きていけません。
孵化したばかりの顕微鏡サイズの微小なギニア・ワームはまずこれまた微小な生物、カイアシ類のケンミジンコに「食べられる」ことで寄生をスタートします。
ケンミジンコは1ミリ前後の甲殻類です。
これにてギニア・ワームは成長をはじめることができます。
あくまでケンミジンコは中間宿主であり、最終宿主の哺乳類に寄生先を移動することが子孫を残すマスト条件となります。
人間に寄生する場合、このギニア・ワーム入りのケンミジンコを飲料水として飲んでもらうことです。
人間がこの水を飲むと胃部へ移動したカイアシ類は胃酸で溶かされてしまうことによってギニア・ワームは人体内に解き放たれます。
胃酸耐性のあるギニア・ワームの腸管に穴をあけ腹腔内に侵入し成長を開始し成虫となります。
成虫になったギニア・ワームの雌雄はそこで交尾しオスは用済みなので速攻死にますが、メスは成長を続け前述の通り最大120センチにまで成長します。
十分に成長するとギニア・ワームは人体内で移動をはじめ、基本的には下肢を目指します、誤って腕や陰嚢に移動するものもいるといい、想像するだけでもゾッとします。
下肢に移動したギニアワームはそこで大量の卵を産み孵化させ足に水膨れを引き起こします。
ところでギニア虫はときにファイアリー・サーペント (fiery serpent) なる異名を持ちます。
まるでUMAか架空の生物を彷彿させるカッコいい名前で、直訳すれば「燃え上がる蛇」といったところでしょう。
しかしこれはこの病気のステージで足にできた水ぶくれが強烈な痛みを引き起こすことに由来し「灼熱地獄のような熱い痛みを引き起こす蛇」の意味です。
この「熱さを伴う激痛」こそが疑似マインドコントロールです。
ギニア・ワームのライフサイクルが淡水であったことを思い出してください。
ギニア・ワームは人間の体内でライフサイクルを全うできず、必ずケンミジンコに寄生しないと成長できません。
そう、マインドコントロールで水辺へと人間を連れ出さないといけないのです。
これはハリガネムシ (Gordioidea Rauther) がカマキリやコオロギを入水自殺させるのに近いコントロールです。
ギニア・ワームは人間の脳を乗っ取ることはできませんが、この下肢の水膨れの痛みは「熱さを伴う激痛」であり、宿主 (人間) が自分の患部を川や沼といった「水で冷やしたい」と思わせる効果があり、まんまと水辺へと誘 (いざな) うのです。
足を水中につけるや皮膚をぶち破って何千匹と溜め込んだギニア・ワームの幼生を水中へとぶちまけます。
この時、患部からギニアワームを「取り出す」ことで治療ができます。
木の棒等にギニアワームをゆっくりゆっくりと巻き付けていくという原始的な方法ですが最大120センチまで成長する「糸のような」ギニアワームは切れやすく、巻いている途中で切れてしまうことも多く、そうすると体内でまた成長し元に戻ってしまいかなり厄介です。
おお、恐ろしい。
しかしご安心を、浄化した水を飲めばギニア・ワームに感染することは絶対になく、日本で感染することはありません。
また、本家アフリカでも根絶はしていないものの、1980年代に300万人以上の寄生が確認されていたギニアワームも現在ではほとんど数えるほどまで減ってきているそうです。
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