「1メートルの毛むくじゃらのモグラみたいなのを見たんだ」
「その怪物はキーキー鳴いて威嚇してきた、おそらくそのモグラは1.5メートルはあったと思う」
「そいつは満月の夜だけ地上に出てくる、とにかく化け物みたいなモグラだ!」
「信じられないぐらい鼻が長かった、体長の半分はあったと思う。死肉を喰うと聞いたことがあるよ」
(キューバソレノドン)
というのも伝えられるものはあまりに大き過ぎるからです。
UMAの目撃は夜間であることも多く、それ故、既知生物を未知生物と誤認している可能性が高く、また夜間に加え未知の生物ということが恐怖を増長させている可能性も考えられます。
都市伝説化することにより、もはや目撃証言になかった特徴なども付け加えられ、最初の目撃とは別物に変貌してしまうこともあります。
さて冒頭の目撃証言はフィクションですが、今回紹介する生物がUMA化した場合、おそらくそんな風に伝えられるだろうと推測されます。
今回はコメント欄で最近話題にしたソレノドン (Solenodontidae) です。
旧サイトの時と分類されている目 (もく) が変わっているため、アップデートしながらみていきましょう。
ソレノドンはイスパニョーラ島とキューバにのみ生息する掛け値なしに激レアな生物です。
「〇〇ドン」という名前は恐竜をはじめとする古生物や日本では怪獣を想起させます。
有名どころだけでもイグアノドン (Iguanodon) やプテラノドン (Pteranodon)、バシロサウルスことゼウグロドン (Zeuglodon)、マストドン (Mastodon)、メガロドン (Megalodon)、ときりがありません。
恐竜はもとより、翼竜、海生哺乳類、陸生哺乳類、魚類、なんでもあれ。
この「ドン (don)」はギリシア語の「odoús」から来ており「歯」という意味です。
ソレノドンは「溝のある歯」という意味になります。
かつて食虫目 (モグラ目) に分類されていたソレノドンですが現在は真無盲腸目 (しんむもうちょうもく) に分類し直されています。
巨大なモグラのようにも見えますがモグラの仲間ではありません。
(キューバソレノドン)
どちらも希少ですが特にキューバソレノドンは19世紀末から1970年代まで80年間目撃がなく絶滅したのでは?と考えられていたほどの「幻」級のレアリティです。
モグラに似ているといっても、実際のところはなかなか形容しづらい独特のシルエットで特に鼻づら (吻) が長いのが特徴、トガリネズミやテンレックにも似ています。
といっても体はバカでかく、最大22インチ (約55センチ) もあります。
ソレノドンが絶滅の危機に瀕しているのは森林伐採等の環境破壊、人為的に持ち込んだ外来種、特にマングースとの生存競争に敗れたからと考えられています。
(テングハネジネズミ の新種(rhynchocyon udzungwensis))
それほど長い期間目撃されなければ地元住民にも馴染みなく、おそらく目撃した際には冒頭のようなUMAレベルの誇張された証言になってしまいそうです。
哺乳類としては珍しく毒を持ち、ミミズのような無脊椎動物を主食とするものお、小柄であればトカゲ等の脊椎動物も食べるとか。
体に対して驚くほど目が小さいですが、臭覚に優れ、またクリック音を発しイルカ (クジラ) やコウモリのようにエコロケーション (反響定位) で自分の位置を確認したり獲物をつかまえることができるといわれています。
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ひで です。
返信削除ナムさん、いつもお健やかに過ごされていることと願っております。
ソレノドンについての詳細なご紹介、誠にありがとうございました。
ナムさんの記事はその読み易さと豊富な専門知識が魅力で勉強になります。
深い洞察力と語り口が楽しくいつも楽しみにしております。
そしてこれからもナムさん、ならではの面白い生物の紹介を心よりお待ち申し上げております。
どうぞお体を大切に、お元気でお過ごしくださいませ。
何卒よろしくお願い申し上げます。
ひでさん、お久しぶりです & コメントありがとうございます。
返信削除ちょっと忙しくしているので休止していましたが、そろそろ再開予定です。
これからもよろしくお願いいたします!