■槍のように人を突き刺すヘビ ~ ファンドレフィアラ
マダガスカルの森を歩いていて、風もないのに (枯葉でもない) 木の葉が落ちてきたら、、、それも3枚次々と、、、あなはた足を止めて頭上を見上げない方がいいかもしれません。
アフリカ大陸北東に浮かぶ不思議の島、マダガスカル島。
島国であることから動物相もそして民間伝承も独特のものがあります。
今回はその中からマダガスカルの民間伝承に出てくるファンドレフィアラ (Fandrefiala) です。
ファンドレフィアラは樹上性のヘビで、それほど大きな種ではありません。
毒もなく、獲物 (人間) を狩るのは待ち伏せ型、ただひたすら人間が自分の下を通りかかるのを待ちます。
ファンドレフィアラは樹上から通りかかるであろう人物を注意深く観察します。
そしてその間もなく「犠牲者」になるであろう人間が木の下を通りかかるとき、ファンドレフィアラは確実に仕留めるため、葉を落とします。
1枚、2枚、そして3枚。
風のない日に緑の葉が立て続けに3枚も。
そのまま速足で通り過ぎれば何も起こりません、しかし人間は合理的に考える動物。
「風もない日になぜ3枚もの葉っぱが立て続けに落ちてきたのだろう?」
その理由を探るべく頭上を見上げた時、それがあなたがこの世で見た最期の光景となるでしょう。
ファンドレフィアラは体を硬直させ、真っすぐの一本の槍となり、頭上から勢いよく獲物に向かって飛び降ります。
その鋭利で固い頭部は人間の骨をも粉砕し体を貫通するといいます。
しかし時にこの狩猟はファンドレフィアラ自身も命を失うといわれています。
と、これがファンドレフィアラの伝説です。
実はこのヘビ、実在しています、というと誤解を招きますが、マダガスカル語でファンドレフィアラと呼ばれるヘビが実在する、という意味です
(イティシフス・ミニアトゥス)
(image credit by Wikicommons)
それはマダガスカル固有の毒ヘビ、イティシフス・ミニアトゥス (Ithycyphus miniatus) です。
それなりの毒を持ちますが、穏和な性格で人間を咬むことはあまりないといわれ、万一、咬まれた場合でも基本的に命には関わらないものと考えられています。
個体差はありますが、不明瞭な頭部にアルファベットのブイ (V) もしくは三角形 (▽) の模様があることで知られ、この模様を槍と見立てて伝説が生まれた可能性は考えられます。
そしてもうひとつのファンドレフィアラの元になった可能性のある蛇、テングキノボリヘビ (Langaha madagascariensis) も紹介しましょう。
名前の通り樹上性の細いヘビで体長は最大でも1メートルほど、極端な性的二形でオスの頭部は和名の「天狗」さながら吻が長くせり出し尖っています。
狩りの方法は伝説のファンドレフィアラを彷彿させる待ち伏せ型で、木の枝からまっすぐにぶら下がり、植物の蔦 (つた) のように (擬態?) ブラブラと風に揺れているといいます。
無毒で人間は襲わず、カエルやトカゲといった小さな両生類・爬虫類が主食。
最低でもこのふたつのヘビはいずれも「槍」を彷彿させることから、ファンドレフィアラの原型となった可能性はあるかもしれません。
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