■脚の切断手術で仲間を助ける蟻 ~ フロリダオオアリ
奇妙な生態を持つアリは結構紹介していますが、このほどまた珍しい「手術」を行う生態が報告されました。
アリ自体は既存種のフロリダオオアリ (Camponotus floridanus) で、名前の通りフロリダを中心にアメリカに分布する大型のアリです。
ワーカー (働きアリ) の最大は13ミリとかなり大型になり、腹部だけが黒くその他は明るめの褐色のツートンカラーが特徴です。
アリは全般的に獰猛ですがフロリダオオアリはその中でもかなり獰猛で知られており、巣の防衛にはワーカーが団結して戦います。
体が大きく鋭い顎を持つことから戦闘にも有利ですが、繰り返される戦闘で全員が無傷で帰還できるわけもなく、実際はその都度、多くの戦死者や怪我人が発声します。
ここで以前に紹介したアフリカに棲息するメガポネラ・アナリス (Megaponera analis) ことマタベレアリ (Matabele ants) の話を挟みましょう。
マタベレアリは好戦的なアリで、シロアリのアリ塚への襲撃は1日平均3~5回ともいわれています。
マタベレアリはシロアリとの対戦で個と個の戦いでは圧倒できる戦闘能力を持つも、マタベレアリを大きく上回るシロアリたちの数による防御、大あごをもつ兵アリによる反撃により、戦争の終わったフィールド上にはシロアリほどではないにしろマタベレアリの死体や怪我人がごろごろと転がっています。
マタベレアリはその戦闘回数の多さから (自業自得とはいえ) そのまま放置すれば巣全体の数はもの凄いスピードで目減りする一方です。
そこで考え出したのが負傷兵の回収・治療です。
負傷し身動きが取れなくなったマタベレアリは救護SOSのフェロモンを分泌し助けを求め、巣へ運んでもらい治療を受ける (抗生物質を含む唾液で傷口を舐める) とそのほとんどは完治するのです。
それではフロリダオオアリの話に戻りましょう。
このアリもマタベレアリ同様に戦闘で怪我した仲間を救護することが研究の結果このほど判明したといいます。
人間の脚とアリの脚では全然構造が違いますが、一応直感的に分かり易く説明すると、人間の太ももの部分を「腿節 (たいせつ)」、膝から下、脛 (すね) の部分を「脛節 (けいせつ)」、踝 (くるぶし) から下の足の部分は「付節 (ふせつ)」に該当するといえます。
実際は脚の付け根に基節 (きせつ) と転節 (てんせつ) があり5つの節で脚は構成されているので厳密には上記の通りではありません、あくまで人間の脚に無理矢理当てはめた場合の話です。
さて、膝から下の方、脛節を怪我した場合はグルーミング (舐めて) で処置し、感染症を引き起こす病原菌を取り除くだけでなんとかなるようです。
しかしもっと付け根に近い部分、人間でいう腿、腿節に怪我を負っている場合はグルーミングだけでは対処できないようです。
そこでグルーミングに代わる手段として腿節に怪我を負ったワーカーたちの脚を他のワーカーたちは「食いちぎってあげる」というのです。
これは放置すると感染症に罹り死んでしまうリスクを大きく下げるといい、放置した場合の生存率は40%、脚を切断してもらったものは95%と倍以上に生存率が跳ね上がります。
自分で怪我した足を食いちぎることは困難なようでその外科手術には仲間の助けがいり、戦場に置き去りにされてしまったものは死んでしまう確率が高いようです。
このフロリダオオアリの「外科手術」はこのアリに限らず近縁種はもちろんのこと、他のアリたちでも行われている可能性があるといいます。
普段見慣れているアリ (特にオオアリ) たちに5本脚で歩いているものがいたら単に戦闘で脚を失っただけかもしれませんが、もしかすると外科手術した結果かもしれません。
暇なときに見慣れたアリたちを観察してみてはいかがでしょう?
(参照サイト)
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