■スコットランドの巨大なイモムシか? ~ ベヒル (ベーヒアル)
スコットランドの民間伝承にベヒル (ベーヒアル, Beithir) という生物がいます。
ゲール語に由来するこの単語自体、ヘビ (毒蛇) やクマ、野獣といった生物や、落雷、稲妻といった自然現象に由来するといわれ、単語だけでは全貌が掴みづらい生物です。
一般的にはヘビやイモムシといった細長い生物、いわゆるワーム状の生物と捉えられています。
先に書いた通り、もともとは民間伝承上の生物であり、その姿は「毒針を持つ大蛇」です。
ベヒルは夏の落雷があった日に姿を現すといいます。
致死性の毒を持っており、ベヒルの毒針に刺された場合、刺された場所から最も近い川や湖といった水域 (ベヒルの棲む水域という説もあります) にベヒルよりも速く到達すれば命は助かり、そうでなければ命を落とすという言い伝えがあります。
いかにも民間伝承上の生物といった特性で、この生物の起源は中世まで遡ります。
しかしこのベヒルは単に民間伝承上の架空の生物といった存在だけではなく、実在するともいわれています。
1930年代以降、ベヒルの目撃が相次いだのです。
1930年代、スコットランドのグレン・ストラスファラー近郊のア・ミューリ湖 (Loch a'Mhuillidh) 湖畔で陸上を移動するベヒルの姿が目撃されたのが初めてといわれています。
これを皮切りにベヒルは実在するUMAとして目撃されるようになります。
その姿はワーム状でヘビもしくはウナギを彷彿させ、しかし動きはイモムシに似ているといったものもあります。
もっともはっきりと目撃されたのは1975年のものです。
1975年初頭、インヴァネス (Inverness) 近郊の漁師5人がキルモラック (Kilmorack) 上流の滝の浅瀬でベヒルがとぐろを巻いているのを目撃しました。
体長は10フィート (約3メートル) ほどありました。
ベヒルは漁師たちに気付くとのたうち回り、ビューフォート城 (Beaufort Castle) 近くの渓谷沿いに向かって泳ぎ去っていったといいます。
スコットランドではネッシーブームにあやかり、ベヒルブームも続くかと思われましたがこの1975年の目撃を境にベヒルの目撃はぱったりとやんでしまいました。
さて、この生物は一体何だったのでしょう?
これは一説によるとスコットランドでは1930年代にウナギやヘビが過剰に繁殖した時期があり、それが影響している可能性が論じられています。
数が多ければ突然変異的に大きく育つ個体が出る確率も増えますからあり得ない話ではないでしょう。
また、目撃証言からくるベヒル像は巨大なヘビと巨大なウナギのそれぞれの目撃がひとつの生物としてハイブリッド化した可能性もあります。
その正体として最大個体が7フィート (2.1メートル) 近くに達するヨーロッパヤマカガシ (Natrix natrix) の亜種 (Natrix helvetica) や巨大化したヨーロッパウナギ (Anguilla anguilla) 等が挙げられます。
大きさ的にはヨーロッパヤマカガシの方が確率は高そうですが、ウナギも陸上をかなりの長距離移動できますからいずれの可能性もありそうです。
水陸両用のようではあるものの陸上での動きがぎこちないものが多く、個人的には陸に上がった巨大ウナギの可能性が高そうな気がします。
但し、ヨーロッパウナギは通常大きな個体でも4フィート (約1.2メートル) ほどというのが玉に瑕です。
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