2020年7月26日日曜日

HMSダイダロスが見たシーサーペント


■HMSダイダロスのシーサーペント

軍艦の乗組員によって目撃されるUMAも少なくありませんが、今回はHMSダイダロス (HMS Daedalus) の乗組員が見たシーサーペントです。

HMSダイダロスは19世紀初頭、1822年に建造された英国海軍の軍艦です。

息の長い軍艦で売却される1911年まで90年もの間現役でした。

この船の船長マックウェー (McQuhae) および数名の乗組員によってシーサーペントが目撃されたのは1848年8月6日17時頃、喜望峰からセントヘレナ島へ向かう途中のことでした。

マックウェー船長はシーサーペントを以下のように描写しています。

「我々がその物体に気付き注意を向けると、それはとてつもなく巨大な蛇だということが分かりました。

頭部と肩を常に約4フィート (約1.2メートル) ほど水面より上に持ち上げており、この高さはメイン・トップスルと比較して割り出しました。

体長は最低でも60フィート (約18メートル)、頭部より後方の体の直径は15~16インチ (約40センチ前後) ほどでした。

泳ぐ速度は時速12~15マイル (約19~24キロ)、およそ20分間に渡り観察しました。

体色は濃い茶色、喉の周辺は黄色味がかった白、ヒレはありませんでしたが馬のタテガミのようなものが背中にそって確認できました」

この怪物の正体として数多くの候補が挙げられています。

シーサーペントの正体として定番のリュウグウノツカイにはじまり、ゾウアザラシ巨大イカといった既知生物から、リバー・モンスターの定番、プレシオサウルス、未知の細長いサメ、未知の細長いクジラ、未知の首の長いアザラシ等々、、、

60フィートという大きさから、既知の生物であればマックスレベルのジンベエザメ (Rhincodon typus) かクジラをおいてありません。

7名の目撃者のうち、ひとりだけがトカゲに似ていたとの証言から、ワニの可能性も考えられます。

(image credit by Quora)
(海で目撃されるイリエワニはシーサーペントの正体の一つです)

しかし海水に極めて耐性のあるイリエワニ (Crocodylus porosus) はアフリカには生息しておらず、かといってナイルワニ (Crocodylus niloticus) がセントヘレナ島付近まで泳いでいくとは考えられないためワニの可能性は低いでしょう。

そんな中、生物学者ゲイリー・ジョン・ガルブレス (Gary John Galbreath) 教授は、彼ら乗組員の見た生物はイワシクジラ (Balaenoptera borealis) であったと断定しています。

(イワシクジラの親子)
(image credit by Christin Khan)

イワシクジラはヒゲクジラの仲間で体長は16~18メートル、背中側から見下ろした場合、他のヒゲクジラ類と比して細身のシルエットが特徴です。

しかしいくらクジラとしては細身のイワシクジラといえ、巨大なウナギのような体型のシーサーペントと誤認するものでしょうか?

ガルブレス教授の説明によれば、マックウェー船長らがシーサーペントの頭部だと思い込んでいたのはイワシクジラの上顎の一部であるとのこと。

(これはザトウクジラが水面に頭を上げたところ。この状態を保ったまま泳いだ場合、目撃スケッチと非常に似通った構図になると思われます)
(image credit by Henrik Dreisler)

マックウェー船長の証言によりいくつかのイラストが描かれていますが、巨大なウナギのような生物が頭部を水面から出して泳いでいるシルエットは確かにイワシクジラが頭部の一部を水面上に出して泳いでいる姿と似ています。

この姿はイワシクジラに限ったことではありませんが、イワシクジラは世界中至るところに生息するクジラであり目撃地点・体長・細長い体型 (シーサーペントに見える) は目撃証言との矛盾も少なくそれ故、候補となり得ます。

(もうひとつの目撃スケッチ)

しかもイラストではウナギのような丸みを帯びた頭部として描かれていますが、後にマックウェー船長は頭部は平らだったと付け加えており、よりイワシクジラ説を補強するものとなっています。

HMSダイダロスのシーサーペントの正体が、水面に顔を出したイワシクジラと断定はできませんが、既知のクジラをシーサーペントと誤認する際の重要な考え方といえます。

(参照サイト)
Skeptircal Inquirer

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2 件のコメント:

  1. タテガミはヒゲの見間違いですかねえ?

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  2. 海藻の塊みたいなタテガミ、という表現もあったので実際に海藻などが引っかかっていた可能性も考えられますね。

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